白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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ゆうちょ杯

2016年08月09日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日はゆうちょ杯が行われました。
1回戦は上野愛咲美初段余正麒七段、上野初段が実績十分の余正麒七段をあと一歩の所まで追い詰めるも、惜しくも半目負けでした。
上野初段はまだ14歳、今後の活躍に期待出来ますね。
2回戦は余正麒七段と同じく1回戦を突破した芝野虎丸二段が激突、注目の一番でした。
それでは振り返って行きましょう。



白△とぼんやり消した場面です。
左下の定石からの流れもあり、黒Aと受けておく手も十分考えられる所です。





しかし芝野二段は黒1と反発して、さらに黒3と迫って行きました。
白4と打たれて支離滅裂のようですが、Aの切断を狙っています。
もちろん白2子の攻めも見ていて、あちこちに狙いを持っているのが芝野二段の碁です。





黒1では大抵のプロはAに向かうのではないでしょうか?
この手は白地を気にした手ではありません。
黒5とセットの構想で、遠く中央白へ狙いを付けているのです。
中央白にはまだゆとりがあり、攻めが成功する保証は全くありません。
しかし空振りを恐れないのが芝野二段です。





という事で白1には当然黒2から切って行きました。
中央の白には絶対に楽をさせません。



下辺の戦いは一段落、そこで黒1と手厚く備えた手には狙いがありました。
当然白2と入って行きたくなりますが・・・





黒1からごりごり切断!
こういう切り方は普通のプロは躊躇します。
切った手自体に得が無く、それどころか切った石が負担になりかねないからです。
しかしそんな怖い手を平然と打てるのが芝野流・・・





切った瞬間は悪そうに見えましたが、黒1が先手になると話は変わって来ます。
黒3、5とダメを詰めながら白に迫り、なにやら白は急に息苦しくなって来ました。





白1とハネたいのですが、黒2がダメ詰まりを衝く手筋になります。
黒8となって白Aと生きるのではつらい限りです。
あるいは芝野二段の事ですから、黒8でAの眼取りを考えているかも・・・





実戦を止むを得ず白1の曲がりでしたが、黒2が急所です。
白3から逃げる間に4子をもぎ取ってしまいました。
白はまだ全体が不安定で、どうやら黒のパンチが入ったようです。

芝野二段、大敵を倒して準決勝に進出しました。
芝野二段の碁は常識では測りにくく、見るたびに驚かされます。
まだ16歳、今後どう変化していくかも楽しみですね。