白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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謹賀新年

2021年01月01日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年も昔の対局をご紹介します。
1926年の院社対抗戦、雁金準一七段(47)-本因坊秀哉名人(53)戦です。
雁金七段は棋正社を、秀哉名人は日本棋院を背負っての対決でした。

1図(黒1~黒25)
雁金七段の先(コミ無し)です。
現代とは布石の雰囲気が大分違いますね。
のんびりした印象も受けますが、しかし・・・。



2図(白26~白50)
白1~5と強引に中央を止め、さらに白11、13と下辺を目一杯に広げました。
当然黒は侵入してきますが、それを誘って猛攻をかけようというのですね。
秀哉名人らしい、力勝負の構えです。



3図(黒51~黒75) ※白10はAの所
白は下辺黒を本気で取りにいきました。
しかし、外側の白も傷だらけなので、下手をすると逆に取られます。
両者必死の読み合いに突入しました。



4図(白76~白100) ※黒2は11の所、黒4は9の所
下辺黒は眼を作れません。
しかし、隅と中の白もまた生きていません。
難解な攻め合いです。



5図(黒101~黒125) ※黒1、13、19は24の所、白16は22の所、白20はAの所
黒1から全力でダメを詰めました。
以下、コウの絡んだややこしい攻め合いですが、どうやら白の優位が見えてきました。



6図(白126~白150) ※白1はAの所
白9はちょっとした手筋です。
結果として、下辺は黒B以下黒の不利な1手寄せコウになる形で、取られに近いです。
そして白はそれに満足せず、中央を動いてこちらの黒も攻める態勢です。
こうなっては実質勝負は付いたと言えるでしょう。

コミ無しの碁で、序盤早々ここまでの戦いになることは滅多にありません。
持ち時間は各16時間ですが、最後は黒の時間が切れて決着しました。
両者がどれだけ必死に打ったかが伝わってきますね。
この碁は何も考えずに並べて、戦いの迫力を味わうと良いでしょう。

雁金七段と秀哉名人の対局は30局以上残っているようですが、明らかに秀哉名人が力量で上回っていたと思います。
しかし、先代名人・本因坊の秀栄は秀哉名人を後継者にすることを嫌がったようです。
結局、後継者を指名しないまま亡くなったため、必然的に後継者争いが勃発・・・
打碁の素晴らしさはもちろん、人格も高潔と言われる秀栄名人ですが、家や組織の長としての資質は無かったと思います

秀栄の没後、秀哉名人と対等に打てる棋士はほとんどいませんでした。
長年に渡って碁会の頂点に君臨した実力は、もっと称えられて良いと思います。
ただ、現代では秀哉の碁は人気が無く、私自身もほとんど並べたことがありません。
強引な仕掛けが多く、碁の内容を参考にし難い、という面も確かにあるでしょう。
しかし、なんといっても盤外で低く評価されがちで、そこで割を食ってしまっているように思います。
見方によっては、棋譜並べというものが、単なる練習だけに留まらないことの証左にもなるでしょうか。



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