白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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書評・第20回 一手ずつ解説! 碁の感覚がわかる 棋譜並べ上達法

2019年01月25日 23時59分59秒 | 書評

<本日の一言>
来月、SENKO CUPワールド碁女流最強戦2019が開催されます。
韓国の崔精九段、中国の於之瑩九段という世界最強を争う2人も参加します。
日本の女流棋士たちがどこまで戦えるのか、楽しみですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は本をご紹介したいと思います。
大橋成哉七段の「一手ずつ解説! 碁の感覚がわかる 棋譜並べ上達法」です。

棋譜並べは、碁の練習法として代表的なものの1つですね。
これを勧める指導者は少なくありません。
しかし、正しい方法で棋譜並べをしている方は少ない気がします。

私は子供の頃から棋譜並べに取り組んできました。
教室にプロの棋譜が置いてあり、それを並べるのが課題になっていたのです。
ただ、やってみたことのある方はお分かりかと思いますが、200手や300手ある総譜を並べるのは非常に大変です。
「数字探し」の時間が大部分を占めてしまうのですね。
当時の私は、その無駄を悟りながらも多くの棋譜を並べていましたが・・・。
今思えば、勿体ない時間の使い方をしたものだと思います。

そんな経験もあり、「高段者になるまで棋譜並べは必要ない」と考えていた時期もありました。
しかし、アマの皆様に指導をする機会が増えるにつれ、考え方が変わってきました。
やり方が間違っていただけで、棋譜並べそのものは有効な勉強方法だと思います。
棋譜というものはお手本であり、棋譜並べはお手本を見ながら字を書くようなものです。
最初は見よう見真似であっても、練習を繰り返していくうちに正しい形やバランスが身に付いていくのです。

しかし、碁は非常に奥の深いゲームであり、打つ度に違う展開になります。
いくら良い形を打ったとしても、周囲の状況によって上手くいかなくなることはよくありますし、未知の形ができた時にどうすれば良いか分からなくなってしまうこともあるでしょう。
そうならないためにも、「正しい考え方」を身に付けることを意識しながら棋譜並べに取り組む必要があるでしょう。
手順だけ書いてある棋譜をひたすら並べるという勉強法は、天才にしか通用しないと思います。

その点、本書は1手ずつ解説という画期的な内容になっています。
185手の棋譜なら、185のコメントが付いているのです。
そこまでやるか? と思うぐらいですね(笑)。
また、1譜に付き5手しか表示されていないので、数字探しに時間を取られることがありません。
これも非常に大切なことで、勉強には非効率な作業やストレスは不要です。

昔の勉強法は根性論的なところがあり、棋譜並べも「最初は時間がかかっても、早く並べられるようになるまで慣れれば良い」といった意識があったように思います。
確かに、慣れれば当初の数倍のスピードで並べられるようにはなりますが、数分の一になったとしても無駄な作業が発生することには変わりないのです。
もちろん、ただ早く並べれば良いというものではなく、対局者がどこに打ったかを予想しながら並べることも大切です。
しかし、ごちゃごちゃした棋譜の中から目をこらしながら着手を探す作業は、ただの徒労でしかありません。


今までに棋譜解説の本は沢山出ていますが、棋譜並べと上達法をしっかり結び付けた本は少なかったと思います。
ならば私が書こうと言っていたのですが、モタモタしているうちに先を越されました(笑)。
私の本が出るまでにはまだ時間がかかりますから、まずはこちらをご覧頂ければと思います。
最近は若い棋士の本が多く出るようになりましたね。
出版事情がだいぶ変わってきたかもしれません。