白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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一力七段、勝利!

2016年09月07日 22時19分58秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は三星火災杯の32強戦第2局が行われました。
勝った一力遼七段と負けた伊田篤史八段は、共に1勝1敗となって明日の3局目に16強入りをかけることになりました。
2連敗となった趙治勲九段は無念の敗退です。

一力七段が勝った相手は李欽誠九段です。
3日前までは二段だったのですが・・・
テレビアジア選手権を制した李九段は大変な実力者です。
世界戦は専門外ですが、素晴らしい碁だったのでご紹介してみましょう。



白△と迫った場面です。
白Aを狙う急所ですが・・・





ここで黒1、3は安全第一ですが、ただ逃げるだけです。
プロがこういう打ち方をする事は滅多にありません。





このように攻められながらも反撃を狙うのがプロの碁です。
上下の白にも弱点があるぞと言っています。





隅の黒は生きましたが、戦いはまだ続いています。
黒1とノゾいてAと繋がせようとしましたが、白2と反発してややこしい事になりました。
ここから黒Aを巡っての駆け引きが始まります。





黒石が弱いからといって、黒1と逃げ出せば白も2と開いて安定します。
続いて封鎖されないよう黒3も必要ですが、白4となって黒△が飲み込まれそうです。
こうなっては黒Aの狙いが消滅してしまいます。





実戦は黒1と上辺の白に迫りました。
しかし白4となって一見黒バラバラ、大丈夫でしょうか?





案の定白8までと3子を取られました。
黒大失敗?





実は上辺黒の動きは囮作戦でした。
3子を取られる間に中央黒の頭を出せたので、黒1から5の切断に回る事が出来ました。
戦いに持ち込めば黒△の外勢が働く事は当然計算に入っています。
全局を見た大作戦でした。





しかしその後白△に回られ、明らかに白地が多い状況になっています。
攻めが空振りして形勢は黒苦しそう、というのが私の印象でした。
ところが・・・





黒1と打ち込み、さらに黒5の急所から中央の白に迫りました!
黒9まで進み、よく見ると白が弱い石だらけになっています。





攻めながら白△を取り、黒Aの切りも残して黒が着々と利益を挙げています。
さらにここで黒が強烈な一撃を放ちます。





黒1のハサミツケ!
これが攻めの急所で白は参りました。
白2に黒3と閉じ込め、一気に白の息が詰まりました。





白が生きる間に黒Aの3子取りが残り、さらに黒△で5子取っては黒優勢が明らかになりました。
この後は隙の無いヨセで、逆転のチャンスを与えず勝ち切りました。
一力七段の攻めの名局だったと思います。


明日は三星杯もありますが、木曜日なので国内も対局日です。
高尾紳路九段余正麒七段の王座戦挑戦者決定戦が注目の1局ですね。
好調の高尾九段が今年3つ目の挑戦手合出場か、余七段が挑戦手合初出場を果たすか!?
世代間対決の様相も帯びた熱い戦いとなりそうです。

なお明日は三谷哲也七段芝野虎丸二段
の本因坊リーグ入りをかけた対局もあり、そちらも非常に注目されています。
ネット中継が無いようなので現場に行きたいのですが、本の執筆を急がないと・・・
結果を楽しみに待ちたいと思います。