白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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申眞諝-崔精(三星火災杯決勝第2局)

2022年11月08日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

皆様こんばんは。
女流名人戦本戦では、上野愛咲美四段と上野梨紗二段の姉妹対決がありましたね!
ひたすら戦いが続き、全てが見所といった一局でした。
梨紗二段にも十分チャンスはあったと思います。
youtubeの日本棋院囲碁チャンネルで中継されましたので、ぜひご覧ください。


そして、三星火災杯本戦で崔精九段が決勝に進みましたね!
女性棋士初の国際棋戦決勝進出は歴史的な快挙です。
名実共に、史上最強の女性棋士になったと言えるでしょう。

そんな崔九段を迎え撃つ相手は、同じく韓国の申眞諝九段です。
トップ棋士の層の厚さでは中国が圧倒していますが、世界最強の申九段の存在によってバランスが保たれているのが現在の世界戦だと思います。
第1局は崔九段が申九段の研究を外すようにトリッキーに立ち回ったものの、あまり上手くいかなかったというのが私の見立てです。
それでは、第2局の模様をご紹介したいと思います。

1図(実戦)
崔精九段の黒番です。
黒3、5と頭を出していきましたが、黒A、白B、黒Cとつながっていれば無難でした。
実戦は白6と打たれて、黒大石が1眼も無くなっています。
もちろん、黒は承知のうえで打っているわけですが、現実問題として白10、12と動かれて黒が苦しくなりました。



2図(変化図)
黒1と打てば取れますが、白8までを先手で利かされてしまいます。
それから白10と襲いかかれば、黒大石はかなり苦しいです。
死にはしないでしょうが、勝ち目は薄そうです。




3図(実戦)
そこで、実戦は黒1と変化しましたが、白6まで要石を救出されてやはり苦しいです。
白10まで、黒は左右に弱い石を抱えることになりました。
無理やり右辺白大石を封鎖したとしても、白Aが先手なのでいつでも白Bと打って生きられます。
この後は黒のチャンスは無かったと思います。



4図(実戦)
私が思うに、本局のターニングポイントはこの場面だったのではないでしょうか。
白△のツケに対して実戦は黒Aでしたが、これは先述した黒B、白C、黒Dの渡りという保険を残した堅実な攻め方です。
AIの評価も悪くありません。
しかし、あくまでとは保険とは言え、崔九段は守りだけの手は打ちたくないタイプだと思います。
実際、実戦は渡りを打ちませんでした。

そう考えると、ここは攻撃重視で黒1と中央を止めた方が良かったのではないでしょうか。
積極的に攻撃に出た方が、崔九段の力を発揮しやすかったと思います

これまでも積極的な打ち回しで勝ち上がってきました。
もっとも、これは対局が終わってからの感想なので、結果論かもしれませんが。

いずれにしても、素晴らしい快挙でした。
世界中の女性の励みにもなるでしょう。



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