白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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三星火災杯

2016年09月06日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日第21回三星火災杯世界囲碁マスターズの本戦が開幕しました。
日本からは趙治勲九段(世界戦では段位以外の肩書が取れます)、一力遼七段伊田篤史八段が出場しています。
第1戦は趙九段と一力七段が敗れ、伊田八段が勝ちました。
普段世界戦の碁はあまり取り上げないのですが、伊田八段の勝ち方が素晴らしかったので皆様にもご紹介しましょう。



伊田八段の白番です。
白△の仕掛けから碁が動きました。
これは常套手段で、黒Aと遮ってくれば白B、なおも黒Cには白Dとなって捕まりません。
逆に黒がばらばらになってしまいます。
実戦は黒が上下を繋がり、白は全体を攻める展開になりました。





白1でAと繋ぎたくなる方がいらっしゃるかもしれませんが、絶対にいけません
自分のダメが詰まるだけで百害あって一利無しです(例えば黒Bが先手になります)。
さて、黒2の打ち込みに対して白はどうしたでしょうか?





一間飛びは素直な手ですが、左右の黒が繋がって強い石になってしまいます。
左辺の黒を狙っていた白としては不満です。





そこで実戦は白1の肩ツキ!
格好良い手ですね。
これはモタレ攻めで、左辺の黒一団の進路を塞ぐ目的です。
続いて白3のボウシと攻めの態勢を築いています。





黒△と当てた場面です。
当たりだからといって逃げたくなる方が多いのではないでしょうか?





白1と逃げると白7まで、黒2子を取って成功・・・ではなく大失敗です
頭を出されて攻めが終わってしまい、逆に中央の白が弱くなってしまいました。
今後下辺や右辺で起こる戦いも白不利になるでしょう。
黒2子を取っただけの利益では全く割に合いません。





白1で欠け目にしておいて白3と閉じ込めました。
前の図とは外の景色が全く違っていますね。
攻める時に大事なのは地を取る事ではなく、自分の石を弱くしない事なのです。





攻めるといっても取る事は出来ません。
黒1から5となんとか生きました。
しかしその間に外側の白がすっかり固まっています。
白6と下辺に戻り、いつの間にか黒2子が風前の灯火です。





止むを得ず黒1と捨てましたが、白2、4と大きく飲み込んでは明らかに白優勢です。





黒1に対して白2と強気に反撃出来るのも中央を手厚く打っておいた効果ですね。





タイミング良く右下を動き出したのが決め手です。
白9まで隅を荒らし、白の勝ちがはっきりしました。

伊田八段、攻めのお手本のような内容で完勝しましたね。
次以降の対局も期待出来そうです。
趙九段と一力七段もこれから2連勝すれば2回戦に進めるので、頑張って欲しいですね!
明日も午前11時から対局があり、幽玄の間で中継されます。
ぜひご覧ください。