白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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ポカ(昨日の対局)

2016年12月16日 23時59分59秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は、昨日の水間俊文七段との対局を振り返ります。





1図(テーマ図)
私の白番で、一時は絶望的な形勢でした。
しかし相手にも大きなミスが出て、なんとか持ち直した場面です。

黒△のハネに白Aと受ければ、左辺から中央にかけての黒模様を戸締まりする予定でしょう。
その前に侵入したいと考えました。





2図(正解)
白1を利かしてから白3と、堅実に侵入するべきでした。
一見姑息なようですが、意外と黒は止め方が難しいです。





3図(実戦)
しかし、実戦は白1とハサミツケを打ってしまいました。
白AとBを見合いにした意味で、これも手堅く行ったつもりでした。





4図(実戦)
ところが、黒1、3と遮られて愕然!
当然のこの手が、全く読みに入っていませんでした。
見合いの片方を打たれた以上、次に白Aと打てなければおかしいのですが・・・。





5図(変化図その1)
白1、3と打つと、黒4の渡りで当たりになります。
白Aと繋ぐしかありませんが、黒Bと守られては何もやっていません。





6図(変化図その2)
白1、3なら、コウに持ち込む事はできますが・・・。





7図(続・変化図その2)
このコウに負けると、白△まで持っていかれてしまいます。
白2、4の連打では、到底勝負になりません。
黒5では左辺を囲う方が良いかもしれませんが、いずれにしても黒勝ちです。





8図(実戦)
プロとしては考えられないようなポカで、パニックに陥りました。
しかも既に秒読みに入っており、60秒以内に打たなければいけません。

実戦、コウを放棄して白3と切って行ったのが必死の勝負手です。
黒6、8を先手で打たれて、次が黒番ではいかにも苦しいですが、白AやBの分断を狙って、何とか中で凌ぐ作戦です。
正しく対応されれば、恐らく白がダメだったでしょう。
しかし、相手にとっても私のポカは想定外で、この状況への準備は無かったでしょう。
残り時間も少なく、必然的にミスも生まれます。





9図(実戦)
闇試合の中、黒△まで一応振り替わりの形になりました。
左側の白は死にましたが、右側の白は生きてヨセ勝負です。
この後も難解でしたが、最終的に白に残ったのは幸運でした。


人間が碁を打つ以上、ポカは付き物です。
とはいえ、私は多すぎますね。
今までどれだけ、ポカで負けて来た事か・・・。
一流棋士の10分の1ぐらいは、慎重でありたいものです。