白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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謹賀新年

2023年01月01日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年は本を1冊出すことができましたが、それ以外は何もない1年でした。
ただ、複数のお客様がそれぞれの目標を達成することができたので、それは素直に嬉しいですね。
私も今年はしっかりと目標を設定して頑張りたいと思います。

さて、それでは毎年恒例の棋譜紹介をしていきましょう。
本因坊秀栄と村瀬秀甫の十番碁第6局です。
実は他に予定していた碁があったのですが、書き進めているうちに違和感があり・・・。
もしやと思って調べたところ、昨年にご紹介していました
新年早々に大ポカをやらかすところでしたね。

1図(実戦黒1~白20)
手合は秀栄の定先です。
白2の星打ちは現代人からすれば何でもない手ですが、かつては小目ばかりでした。
初めて星を多用したのは秀栄だと思いますが、実は同門の先輩である秀甫や秀策も時々打っていて、さらにその大本は彼らの師匠の秀和です。
秀和は非常に工夫が多く、毎回違う碁を打つのですが、そこから学ぶものは多かったことでしょう。
秀甫の「打ちたいように打つ」精神は、秀和から受け継がれた部分も大きいような気がします。

さて、その打ちたい手第一弾が白20です。
この手では白Aと打ち、左下白2子を強化するのが自然でしょう。
あるいは、左上白Bと滑って、黒2子の攻めを狙うのも魅力的です。
しかし実戦の白20は、黒Aと進出されると左右の白が薄くなってしまいます。
皆様の中にも、違和感を覚える方は多いのではないでしょうか。



2図(実戦黒21~白42)
案の丈、黒13から頭を出されました。
しかし、白18まで下辺を目一杯に頑張り、左辺は白22まで形を作れば大丈夫と主張しています。
皆様は真似をしない方が良いでしょうが、秀甫は打ちたいように打っていますね。
それで一局をまとめられる自信もあるのでしょう。



3図(実戦黒43~白50)
この碁を並べて衝撃を受けたのが、黒5に対して白6とかわした手です。
この手では、白7と出て分断するのが普通の発想で、多くのプロはノータイムで打つのではないでしょうか。
しかし、秀甫としては打ちたい手があったので、そのためにここを早く切り上げたかったのでしょう。

その打ちたい手第二弾が白8の肩ツキです。
黒Aと受ければ、白B、黒C、白D、黒E、白Fと進み、白は素晴らしい外勢を得ることができます。



4図(実戦黒51~白76)
そこで、黒1と押して反発しましたが、白2のコスミ込み!
強引に黒を分断していきました。
白16のアテコミも鋭い手で、21と23の断点を強調しながら眼を奪う狙いです。
結果白26まで、右上黒一団に対する攻めの態勢が確立されました。

いかがでしたか。
「良くないかもしれないが、これで一局打ってみよう!」といった考え方は、勝ち負けに関しては損になることもあります。
ですが、対局を魅力的なものにしてくれることも確かだと思います。



永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。2020年7月から共同経営者になりました。

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