白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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王座戦第3局感想

2017年11月20日 22時31分30秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨日の日記を投稿した後、多くの方からアドバイスを頂きました。
ありがとうございます。
同じ悩みをお持ちの方は多いようですね。


それから、AlphaGo Zeroについての記述に誤りがありました。
1手0.4秒で打たれたのは練習用の対局で、公開された対局は持ち時間2時間で打たれたそうです。
ずっと勘違いしていまして、誤った情報を流してしまったことをお詫びいたします。

昨日の日記は何だったのかということになりますが・・・。
つまり、MasterとZeroの間には私が考えていたほどの実力差は無いということですね。
勝率89%というのは圧倒的な差に思えますが、人外のレベルでは少しの差でもそうなってしまうのかもしれません。
人間の世界でも、棋力が高いほど番狂わせは起こり難くなりますからね。


また、本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。
対局の手順自体は忘れてしまう方も多いかと思いますが、心に残るようなアドバイスを差し上げるように心がけています。
上達のお役に立てば幸いです。


さて、本日は第65期王座戦第3局が行われました。
前局に引き続き、物凄い戦いの碁でしたね。



1図(実戦)
井山王座が白△と打った場面です。
黒×と黒〇のど真ん中を白×の一団に突っ切られていますね。
これはいわゆる裂かれ形で、碁で最も避けるべき形の1つです。

ですが、一方では白×と白〇も、黒〇によって裂かれ形にされていますね。
つまり双方とも悪い形ができたことになります。

お互いに良い形を作っていくと、隙が生まれないので戦いは起こり難くなります。
逆に、お互いに悪い形が沢山あると、仕掛ける場所が多いので戦いが起こりやすくなります。
本局などは後者の最たるものでしょう。

自分にプラスをもたらすことを優先するか、相手にマイナスを与えることを優先するか・・・。
碁の永遠のテーマであり、各棋士の個性が表れるところですね。





2図(実戦)
一力挑戦者が黒1~5と正面から戦っていったのもまた凄いですね。
私なら、かわして打つことを考えたかもしれません。
と言うのは・・・。





3図(実戦)
黒△まで進むことが目に見えていますからね。
黒石が9子も密集しており、プロの碁にはあまり現れないような団子石です。

しかし、形が悪くても白△と白×を狙っていこうというのですね。
例え無理だとしても、戦わなければ勝機が無いとみたものでしょう。
一力挑戦者の形勢判断は正確です。





4図(実戦)
黒△と打った局面です。
白△は動きづらく、白×も脱出できません。
こうなってみると、黒にも弱みが多いとはいえ、紛れてきたようにも見えます。

しかし、どうやら両者は白の優位が分かっていた節がありますね。
碁界でも1、2を争うほど手の読める両者ですから、時間が無くても相当先まで見えていたのだと思います。


王座戦はこれで終わってしまいましたが、両者の対決はまだまだこれからです。
全ての結末は、どんな形で迎えるでしょうか?