私の住んでる県には有名な佐久間駿氏の店がある。私は行ったことはないが、知人のうち三人(いずれも県外)が彼の店に行った。三人のうち良い音で鳴っていたと言った人はいない。うち一人は音は兎も角として性格は良い人みたいだ、という話だった。
いわゆる技術雑誌(いわゆると言ったのはもはやそうは呼べないと思うからだ)を読まなくなって随分経つ。昔は武末氏が書いておられた号のラジオ技術はだいたい買った。無線と実験は森川さんや浅野さん伊藤さんが書かれたときは殆ど買った。佐久間駿氏の記事が出る頃から買わなくなった。佐久間氏が書いたから買わないのではなく、正確に言えば、彼の製作記事が載るようでは技術雑誌とは呼べないと思ったからだ。技術雑誌と言うのはそれによって教えられるメリットが有ってはじめて買う気になる。何も学ぶことが無いのだったら買う意味が無い。
佐久間氏の記事で一番面食らったのはトランスの使い方だった。多数のトランスを使う目的や意図が分らなかった。数学や物理とは無縁の世界でそこにあるのはただ文学的表現のみだった。
佐久間駿氏の記事が出るから買わないという人はいないだろう。いたとしても多分ごく少数で、実際は出るから買わない人より、出るから買う人のほうが多いと思う。
オーディオという趣味はこのようにして理論無視が幅を利かす世界になってしまった。佐久間氏がもたらしたものではない。その大分前からそうなっていた。
オーディオ・アンプ製作において測定器を持ってると言うのは、或る特定の興味の方向、例えば超三結が好き、小出力アンプが好き、ディジタルアンプに凝るといった類のことでしかない。必ずしも必要な道具とは見做されていない。
まぁいい、こんなことはどうでもよくなってしまった。
黒川さんの記事は読みたいが、書いておられないようだ。今はこういう雑誌は本屋においてないし、定期購読などとてもする気にならない