酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『瀬戸内少年野球団』(1984・日)

2009年08月28日 15時57分25秒 | TV鑑賞作品
名キャメラマン宮川一夫、没後10周年ということで
今週BS2で特集が組まれた一本を昨夜の放送でみました。

一昨年惜しくもなくなった作詞家、阿久悠の自伝的小説が原作です。
現在角川映画に吸収された日本ヘラルドの製作。
同社の名プロデューサー原正人の名前とともに
“YOUの会”と称して阿久悠(ゆう)はじめとする著名人が製作に名を連ねます。

監督は篠田正浩。

敗戦を迎えたばかりの淡路島。
島民の生活の変化を原作者であろう少年の目をとおして描きます。

なんといっても駒子先生を演じる夏目雅子の魅力がきわだつ映画。

しかし、作品全体としては原作に忠実ということなのでしょうが
エピソードが多すぎてちょっと散漫な群像劇という印象。

なにもかも盛り込もうとせず少々整理が欲しかった。
たとえば島田伸介演じる不良の兄姉や床屋の未亡人と旅芸人の顛末あたりは大胆にけずり
かわりに思春期の切ない想いやタイトルの“野球”をもう少し丹念に撮るとか。

さて、肝心のカメラ。
77歳の巨匠が自ら編み出したそのカラーは
フィルムの発色部分の銀を残すことで淡い色調を出す
“銀残し”という手法によるものとか。
つねに道を究めようとするその姿勢と工夫に敬服せざるをえません。

黒澤の『羅生門』(1950)はじめあまた映画史に残る撮影をのこした宮川一夫。
好きな一本を選べと言われたら戦前の『無法松の一生』(1943)。
有名な多重露光による苦心の撮影など斬新で大胆な映像のなかに独特な繊細さが同居し
やはり白眉です。

☆☆★


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