一晩寝て、グランドキャニオンのことを再び考えている。
一体 何を見てきたのだろう。
何が訪れた人を魅了するのだろう。
あの断層
”こっち” から”あっち”まで
かつてはつながった大地だったのだ。
消えた地層のかわりの空間を 空気が満たす。
長い長い 光の直進が山肌を照らし、
そこでは 見えないはずの空気を
知らないうちに 見せてもらっているのだ。
聞こえるのは 無音という音
普段の生活では テレビに映る大自然の風景には
静かなシンセサイザーの音がかぶさってくる。
実際の大自然は 無音だ。
小さな野の花は ひっそりと静かに咲く。
と思ったら、
ひゅんひゅんひゅん とう音が近づいてきた。
ふい、ふい、ふい、 というほうが本物に近いかもしれない。
空という幕に2つの黒いV字のカギザキ
空気をあおってこちらに飛んできて
頭上 ほんの2メートルくらいのところを過ぎ去っていった。
そしてふたたび無音に戻る。
時々ハイキングをする人の話し声や足音が耳に入るのだが、
これを音としてお互いに認識しない という
そこには お互いに暗黙の了解があった。
無音という音
サウンドオブサイレンスは存在するのだ