この前の日記に対して、井口さんからいただいたコメントの中に、
アインシュタインが今の時代にもし生きていたらどんなことを研究していただろうか、という部分がとても気になっていたら、
研究室の本棚に雑誌「現代思想」(1994年5月号)の中に、
アインシュタインについての金子務さんの連載があって、
とてもおもしろかったので、何箇所か引用してみます。
エルサレムのアインシュタイン資料を過去五回にわたって調査したさい、私にとって最大の驚きは、アインシュタインが晩年にいたるまで複数企業から少額とはいえ特許権料を得ていたことであった(注)。あのついに不毛の内に終わってしまった統一場理論への傾注を知るものには、まったく無関係なかずかずの技術的領域においてアイデアを惜しみなく注ぐ情熱を一生持ち続けたということが驚異ですらあった。(14ページ)
(注)たとえばオランダの特許事務所GIROから1927年に27ドル、1937年には324ドル等が振り込まれている。
アインシュタイン自身の言葉も紹介されていた。
物理学の最初の授業は実験ができて、見て面白いことだけにすべきです。よい実験は、本質的にしばしば、私たちの頭から絞り出された20の公式よりも価値があるものです。物理現象の世界にこれから道を見出していかねばならない若い精神は、数式などに決して近づけないことが特に大切です。彼が物理学を学ぶとき、数式は世界史の日付の数字とまったく同じく、不気味で恐ろしい役割を演じます。
(アインシュタイン自身の言葉、17ページ)
アインシュタインが特許局で働いていたことは知っていたけど、
僕は、アインシュタインがてっきり空想・想像の達人というか、
実験的なこととは無縁の人だと思っていたので、
こんなにも実験に興味を持っていたことに、すごくびっくりした。
そういえば、1905年に発表された特殊相対性理論の論文は、
電磁誘導の話から始まっていたような・・・。
実験的なことからアインシュタイン思考は深められていったの
かもしれない。
僕にはもうひとつ想像できないことがある。
アインシュタインがもし今の時代に生きていたら、
バリバリにコンピュータを使って研究していただろうか。
紙と鉛筆で計算していたり、椅子に座ってパイプをくゆらせながら
考えたりしている姿は思い浮かぶけれど、
ノートPCを持って歩き回っている姿を、うまく思い浮かべることができない。
でも金子さんの文章を読んだら、アインシュタインの先端技術に対する興味は
そんじょそこらのものではないことが分かったので、
僕の想像とは裏腹に、コンピュータを駆使して研究をしている姿が、
アインシュタインの本当の姿なのかもしれない・・・。
***
アインシュタインの人柄などが分かるような本でおもしろかったものは、
アバウトアインシュタイン
―アインシュタインをめぐる70のミステリー (単行本)
(竹内薫)
アインシュタイン自身の言葉が、英語と日本語で紹介されていて、
とてもお得な本です。