レ・ミゼラブル(9)
————————————【9】————————————————
En 1804, M. Myriel était curé de Brignolles*. Il était
déjà vieux, et vivait dans une retraite profonde.
Vers l'époque du couronnement, une petite affaire de
sa cure, on ne sait plus trop quoi, l'amena à Paris.
Entre autres personnes puissantes, il alla solliciter pour
ses paroissiens M. le cardinal Fesch.
———————————《仏文試訳》——————————————
1804年はミリエル氏はブリニョルの司祭だった.氏はすでに
老齢で、すっかり隠遁した生活であった.
戴冠式のあった頃、司祭館のある小さな用向きでミリエル氏
はパリに行くことになった.かの地の有力者たちのうち、氏は
自身の教区民たちのため、フェッシュ枢機卿に懇願に行ったのだっ
た.
———————————《仏語語句》————————————————
retraite (f) ❶退職、退役、❷年金、❸引退、隠遁、隠居
couronnement [クロンヌマン](m) ❶戴冠式、冠をかぶせること
❷(建物、家具などの)上部の飾り
❸完成、最後を飾るもの
époque (f) ❶(歴史上の)時代、 ❷(個人・社会の)時期、頃
à l'époque des vendanges / ぶどうの収穫の頃に
cure (f) ❶治療、療法、湯治、❷(教区の) 主任司祭の職、司祭館
trop 否定文の中で「あまり~(ない)」
plus trop 「もうあまり~ない」
quoi 何
solliciter (他) 懇願する、要請する、頼む
solliciter son congé / 休暇を願い出る
solliciter qn de + 不定詞 / (人)に~するよう頼む
On l'a sollicité d'accepter la proposition.
人々は彼に是非この提案を受諾してくれるよう頼んだ.
———————————≪解釈要点≫————————————————
Vers l'époque du couronnement, une petite affaire de
sa cure, on ne sait plus trop quoi, l'amena à Paris.
これは「挿入」という文構造になっています.挿入されている
文は、on ne sait plus trop quoi です.本当はこれにquoi のための
c'était も挿入してもいいのですが、入れすぎるとこんがらがるので
遠慮してquoi だけになっているのでしょう.
「もうそれは何(の用向き)だったのかはよくわからないのだが」
これを無視すると、Vers l'époque du couronnement, une petite affaire de
sa cure l'amena à Paris. 戴冠式の頃、司祭館でのある用事で彼は
パリに出向いた.
ですからこの文の骨格は『ある用事が(主語)彼を(直接目的補語)
パリに連れ出した』≪S+V+O+状況補語≫
これにon ne sait plus trop quoi という別の文の異物混入をしています.
なので、1つの文の中に活用動詞が複数あるように見えて、解釈に
戸惑いますが、別文挿入の例は多いので慣れましょう.
———————————〘ひとこと〙————————————————
Brignollesは辞書不掲載.プロヴァンス地方の Brignole のことと思いますが
確認が取れません.
ネット検索でもhttps://fr.wikipedia.org/wiki/Brignoles
Brignole の綴りでしかヒットしませんでした.とりあえず、Brignole の
こととしておきましょう.
———————————≪対応英文≫————————————————
本日も仏文が難しいので、英文訳を参考にしながら
学習をしていきました.
In 1804, M. Myriel was curé of Brignolles. He was
already an old man and living in deep seclusion.
About the time of Napoleon's coronation, some trifling
business of his parish—no one remembers precisely what
it was —took him to Paris. Among other influential
people, he went to see Cardinal Fesch on behalf of
his parishioners.
———————————《英語訳》————————————————
1804年、ミリエル氏はブリニョルの司祭だった.彼は
すでに老人で世捨て人のように暮らしていた.
ナポレオンの戴冠式のあった頃、教区のちょっとした用向
きで、——もうそれは誰もそれが何の用事だったのかの仔細
は誰にも分からない——氏はパリに出かけた.教区の信者たち
の便宜を図ってもらうべく、パリの有力者たちの中でも、特に
フェッシュ枢機卿に謁見したのだった.
———————————《英語語句》————————————————
Cardinal [カトリック] 枢機卿
Fesch (人名)
parishioner 小教区民