3月7日の午後,移動中の車の中でNHK-FMをつけたところ,途中からだったが,『ニュルンベルクのマイスタージンガー 第1幕への前奏曲』がかかった。同乗者がいたため大きな音で聴くことは出来なかったが,ヴィルトォーゾオーケストラ,しかもとびきりのそれであることは管理人にも直ぐにわかった。
メリハリの効いた見通しの良い演奏だったので,何となく,「指揮者はドイツ・オーストリア系ではないのでは」と思ったのだが,演奏後の唐沢美智子さんの紹介には思わず仰け反ってしまった。曰く,「ただ今の演奏は,ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるワーグナーの・・・」。
件の録音,番組表で1974年のEMI盤であることを確認し,さっそく購入。聴き直してみた。この演奏は凄い。予備知識なしに聴くことができたおかげで,あらためて,この組み合わせがいかに凄かったかを確認できた。
この演奏で特に感じるのは,ホルンをはじめとする管楽器群の素晴らしさ。EMIも明らかにそれを意識した録り方をしている。
ご存じのとおり,この録音の4年前,カラヤンは,同じEMIに,ドレスデン・シュターツカペレとマイスタージンガーの全曲録音をおこなっている。この時,ドレスデン側がいかに用意周到に録音に臨んだかについては,リチャード・オズボーン著『ヘルベルト・フォン・カラヤン(下)』(白水社)にも記述がある。あの全曲盤の前奏曲も素晴らしかった。しかし,このベルリン・フィルとの録音,その上をいっているような気がする。
ところで,この録音,各パートの分離のし具合いがちょっと異様である。異様というのは言葉が過ぎるのかもしれないが,ギュンター・ヘルマンスら,DGのカラヤン御用達チームなら,まずこのような録り方はしない,そんな録音である。
メリハリの効いた見通しの良い演奏→指揮者は非ドイツ・オーストリア系,はいかにも短絡だが,思い違いの一因はEMIの録音にもある。いずれにしても,EMIの録り方は独特だ。
因みに,ドレスデンとの録音は,EMIとドイチェ・シャルプラッテンとの共同企画。前記リチャード・オズボーンの著作には,この時リーダーシップをとったのはドイチェ・シャルプラッテンの方だったとある。一口に「EMI製作」と言っても,ベルリン・フィル盤とドレスデン盤とでは録り方が違うはずだ。
最後になったが,EMIとDGの録音方針(録音哲学)の違いについては,グールドも「レコーディングの将来」の中で触れている(ティム・ペイジ編『グレン・グールド著作集2』(みすず書房)所収)。これに関しては,NHK教育『私のこだわり人物伝』のテキストにも一部言及がある(「カラヤン 第1回複製芸術の扉をひらく」)。
メリハリの効いた見通しの良い演奏だったので,何となく,「指揮者はドイツ・オーストリア系ではないのでは」と思ったのだが,演奏後の唐沢美智子さんの紹介には思わず仰け反ってしまった。曰く,「ただ今の演奏は,ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるワーグナーの・・・」。
件の録音,番組表で1974年のEMI盤であることを確認し,さっそく購入。聴き直してみた。この演奏は凄い。予備知識なしに聴くことができたおかげで,あらためて,この組み合わせがいかに凄かったかを確認できた。
この演奏で特に感じるのは,ホルンをはじめとする管楽器群の素晴らしさ。EMIも明らかにそれを意識した録り方をしている。
ご存じのとおり,この録音の4年前,カラヤンは,同じEMIに,ドレスデン・シュターツカペレとマイスタージンガーの全曲録音をおこなっている。この時,ドレスデン側がいかに用意周到に録音に臨んだかについては,リチャード・オズボーン著『ヘルベルト・フォン・カラヤン(下)』(白水社)にも記述がある。あの全曲盤の前奏曲も素晴らしかった。しかし,このベルリン・フィルとの録音,その上をいっているような気がする。
ところで,この録音,各パートの分離のし具合いがちょっと異様である。異様というのは言葉が過ぎるのかもしれないが,ギュンター・ヘルマンスら,DGのカラヤン御用達チームなら,まずこのような録り方はしない,そんな録音である。
メリハリの効いた見通しの良い演奏→指揮者は非ドイツ・オーストリア系,はいかにも短絡だが,思い違いの一因はEMIの録音にもある。いずれにしても,EMIの録り方は独特だ。
因みに,ドレスデンとの録音は,EMIとドイチェ・シャルプラッテンとの共同企画。前記リチャード・オズボーンの著作には,この時リーダーシップをとったのはドイチェ・シャルプラッテンの方だったとある。一口に「EMI製作」と言っても,ベルリン・フィル盤とドレスデン盤とでは録り方が違うはずだ。
最後になったが,EMIとDGの録音方針(録音哲学)の違いについては,グールドも「レコーディングの将来」の中で触れている(ティム・ペイジ編『グレン・グールド著作集2』(みすず書房)所収)。これに関しては,NHK教育『私のこだわり人物伝』のテキストにも一部言及がある(「カラヤン 第1回複製芸術の扉をひらく」)。
![]() | ワーグナー:管弦楽曲集第2集ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 カラヤン(ヘルベルト・フォン)EMIミュージック・ジャパンこのアイテムの詳細を見る |
![]() | 私のこだわり人物伝 2008年4-5月 (2008) ヘルベルト・フォン・カラヤン 時代のトリックスター/グレン・グールド 鍵盤のエクスタシー (NHK知るを楽しむ/火) |
クリエーター情報なし | |
NHK出版 |