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小国寡民・人々の無事を守る政治

2016年04月01日 | 心に残る言葉
東京新聞「時代を読む」内山節氏のコラム・・・私にとっては、いわゆる「読むサプリ」みたいです。

3月27日の「人々の無事を守る政治」も共感しきり。

そういえば、昨年来より、スポーツの世界から、「ルーティーン」という言葉を知りました。
イチロー選手の日常や五郎丸選手のあのポーズのように、「日常的に繰り返される生活様式」「一定の手順で行われる仕事」を意味するそうです。
なるほどなあと思います。
彼らの偉大な仕事の裏にあるもの・・それは、突拍子もない変化や、瞬間的な爆発ではなく、静かに当たり前に淡々と繰り返す日常や、身体の準備、それがあるからこそのものなのですね。
駅員さんの指差し安全確認、職人さんたちの道具の手入れと管理、1年間の農作業。みんな淡々と繰り返される日常のルーティーン。

自然界も同じで、春夏秋冬が滞りなく繰り返されるから、動植物は、その流れに沿って、次の世代をつなげていくことができる。
そして、「淡々と繰り返す自然と人々の日常を守ること」それこそが、政治の役割であり、それらをないがしろにした平和などありえないのだ・・・と、内山氏のコラムを読みながら、改めて思いました。




春、カエデの葉の芽吹き



人々の無事を守る政治
内山 節    

 私の山里がある群馬県上野村では、山の落葉広葉樹の木々が赤みを帯びはじめると、村人は春が近づいてきたと感じる。2月半ばから、木は大地から水をくみ上げ、その水のなかに糖分をためて、芽吹きの準備に入る。次第に冬芽がふくらみ、赤みをましてくる。イタヤカエデがくみ上げた水をもらい煮詰めたものが、メープルシロップである。

 上野村では桜が咲くのは4月20日ごろ。3月中はまだ梅の季節である。
 そんな自然の様子を見ていると、今年も無事に春を迎えてほしいという気持ちになってくる。自然にとっては、無事であることが最良だ。無事に春をむかえ、無事に夏や秋、冬を迎える。それができれば、去年と同じように、10年前とも100年前とも同じように、自然はその生命の世界を守り続けるだろう。自然は平和を求めている。

 それは人間でも同じことだ。無事に仕事をし、無事に暮らすことが、社会の基盤でなければならないのである。
 もちろん一人一人は、色々な生き方をしてもかまわない。あえて無事な生き方を捨てることも、人間にとっては一つの選択である。だが、社会全体の役割も、社会を守るための政治の役割もそこにはない。政治は一人一人の行動に対応するのではなく、誰もが無事に生きる社会をつくり、守ることにある。平和を守るといってもよい。

 自然の無事がこれからも続くようにするのと同じように、人間社会の無事を守るのが、政治の役割だ。
 政治の目的は、国を守ることでも、日本の国内総生産を増やすことでもないのである。国の政治では、国民の無事を守ること、地方や地域の政治では底に暮らす人々の無事を守ること。それが目的でなければならない。国の防衛やGDPの増加は、その結果でしかない。

 なぜこのような言い方をするのかといえば、国の防衛や経済発展は、しばしば私たちの生きる世界の無事と一致しないからである。
 たとえば第二次世界大戦をみても、国を守るための戦争が戦場や空襲による多くの死者を出し、国民の無事を破壊してしまった。さらに今では多くの人たちが気づいているように、経済成長だけを目的とした社会は、格差社会やつながりのない、幸せ感の薄い社会をつくり出してしまった。

 国家の防衛や経済成長は目的ではないのである。目的は人びとが無事に働き、無事に暮らす社会を作りつづけることの方にある。そのことを見誤ると、人間が国家や経済の道具として使われるという転倒がおこってしまう。
 そしてそれは、偏狭なナショナリズムと、とげとげしい国家間対立のなかに引きずり込んでいきかねない。実際、偉大な米国の復活とか、強大な中国の建設などというスローガンが叫ばれ、日本もまたその一角に食い込もうとする対立の構図のなかに、今世界は向かいつつあるかのようである。  

 自然は無事に生きられる世界の持続を求めている。春にはカエルたちが冬眠から覚め、水辺で卵を産む。それが永遠に続けられるような無事な世界の持続を。
 人間社会の原点もそれと変わらないはずだ。みんなが無事に生きていける社会。政治は為政者のゲームではないのである。
(哲学者) 



老子の言葉「小国寡民」を思い出しました。
老子は解釈する人によって違った印象を受けますが、私にとっては、内山節氏のコラムこそが、老子の言葉の意味と重なってくるように感じます。


★内山節氏の「時代を読む」

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