昭和・私の記憶

途切れることのない吾想い 吾昭和の記憶を物語る
 

大戦艦陸奥の進水式

2012年09月08日 10時38分37秒 | 9 昭和の聖代


                                 進水式・イメージ・・陸奥ではない
進水式

今日を晴と滿艦飾をほどこされたる三萬四千噸の大戰艦陸奥は、
海を後にして悠然と横たはれり。
果もなくすみ渡りたる大空、
はなやかに流るゝ日の光、
場に滿ちたる十幾萬の拜觀者の胸には、
まさに始らんとする進水式の壯快なる光景を豫想して、
唯をどりにをどる。
折しも起る「君が代」の奏樂。
皇后陛下の臨御と共に、式は始りぬ。
海軍大臣の命令書朗讀、
工廠長の進水命令、
續いて造船部長の指揮につれて吹く進水主任の號笛を合圖に、
着々と進み行く進水作業。
やがて工廠長のふりかざしたる金色の槌は、
二年間の苦心を此の一揮にこめて、
切斷臺上せつだんたいじょうの繫索けんさくをはつしと切る。
拜觀者の目は、一せいに艦にそゝがれぬ。
一秒又一秒、
七百尺に近き大船體は、寸、尺、間と音もなくすべり出づ。
艦首につるしたるくす玉ぱつとわれて、
紅白の紙片花ふゞきの如くに散る中を、羽音高く舞上る數羽の鳩。
拍手かつさい、
天地をとどろかす萬歳の叫、
勇壯なる軍樂の調、
工場といふ工場、
船といふ船の汽笛が一せいにあぐる歡呼の聲。
見る見る艦は速力を増して、白波高く海にをどり入る。
あゝ、海の戰士の勇ましき誕生。

・・・国語読本 巻十 第二十六課  (五年生)
 戦艦陸奥


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