「国境」黒川博行
2001年11月出版
内容(アマゾンより)
国境てなもんは、地形や民族で決まるもんやない。その時々の喧嘩の強さで、右にも左にもずれるんや。金を持ち逃げした詐欺師を追って、北朝鮮へ飛んだ建設コンサルタント二宮とヤクザ桑原。二人を待ち受けていたのは、未知なる国家の底知れぬ闇―。二回の北朝鮮潜入取材を敢行、中朝国境の現実を描きつくした、渾身の長編ノワール大作。
登場人物
二宮(主人公):建設コンサルタント。亡き父がヤクザ。
桑原:ヤクザ。二宮と共に北朝鮮へ趙を捜す。喧嘩が強い。
柳井:二宮の親戚。二宮・桑原と共に北朝鮮に行く。
李:北朝鮮での案内人。
趙:詐欺師。二宮・桑原が北朝鮮で追う。
ちょいコメ
知人のお勧め。前半は北朝鮮や中国の国境が背景。後半は日本。
北朝鮮の人名や地名が沢山出てくる。ルビのある漢字が多い(趙成根:チョウソングンなど)。
最初は読みづらいが慣れる。この時代の北朝鮮の事情が少しわかる。
登場人物が面白く、中盤あたりからどんどん面白くなる。
極道の桑原がとても良い。主人公の二宮と絶妙のコンビだ。
この二人の会話には何度も笑わせてもらった。
桑原は二宮が絶体絶命の時は必ず現れる。
印象に残った言葉は、北朝鮮・中国の国境の川(豆満江)を、二宮・桑原・李の3人で越えようとした時。
国境警備隊が追う。李が怪我して動けない。その時の桑原。
桑原「行け、わしがやられたら、お前はひとりで逃げんかい」
李「ハンさん(桑原のこと)ぼくはいいですよ、この脚では川は泳げません」
桑原「やかましい。わしは極道やぞ。人生、意地で生き遁のじゃ」
李「分かった。やりましょ。おれにも多少の意地はある」
国境警備隊に追われる。銃声。二宮は2人とはぐれてしまう。
人の心の中に「国境」があるのだなと考えさせられる作品。
黒川博行さんの賞歴(ウィキより)
1984年『二度のお別れ』サントリーミステリー大賞佳作。
1986年『キャッツアイころがった』第4回サントリーミステリー大賞。
1996年『カウント・プラン』第49回日本推理作家協会賞(短編部門)。
直木賞候補『カウント・プラン』『疫病神』『文福茶釜』『国境』『悪果』。
黒川博行さん人物
2011年11月週刊現代の連載記事でグリコ・森永事件の真犯人として扱われ、講談社と週刊現代編集長、および筆者のジャーナリスト岩瀬達哉に損害賠償などを求め、東京地裁に提訴した。
2011年12月、愛知県警の捜査員らの住民票や戸籍謄本が、東京都内の司法書士らのグループによって不正取得される事件があったが、その際、黒川の住民票も不正取得されていた疑いが強まっている。黒川は前述の週刊現代の記事の中で居住地などを詳細に記載されていたことから不審に感じたという。黒川は、不正取得事件を捜査中の愛知県警に刑事告訴することも検討している。
話題多い作家さんだなぁ。
この本を紹介してくれた知人の言葉{あまり書かれない話題の作品が多い、面白い、読みやすい」。