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読書・鑑賞記録&日記

海外ミステリー「わらの女」カトリーヌ・アルレー1956年仏

2012年03月29日 | 海外小説ア行


カトリーヌ・アルレー(ウィキ)

内容(アマゾン)
翻訳の仕事をする知的で打算的なドイツ人女性ヒルデガルデ、34歳独身。彼女が見つけた新聞の求縁広告は“莫大ナ資産アリ。ナルベクはんぶるく出身ノ未婚ノ方、家族係累ナク…”というものだった。こうしてすべてが始まった。そして彼女は億万長者の妻の座に。しかしそこには思いも寄らぬ罠が待ち受けていた。精確無比に組み立てられた完全犯罪。ミステリ史上に燦然と輝く傑作。

登場人物
ヒルデガルデ・マエナー:ハンブルグ生まれの女性
カール・リッチモンド:ドイツ系アメリカ人の大富豪
アントン・コルフ:リッチモンドの秘書
マーティン・ローマー:アメリカ人の警部
スターリング・ケイン:ニューヨーク市警の警視

ちょいコメ
戦争に遇い家族を失い、貧乏で夢も希望もないアラサーのヒルデガルデがヒロイン。
そのヒルデガルデと大富豪の秘書アントンは、大富豪の老人リッチモンドの遺産を相続しようと計画する。
どのように話を進めるのか、わくわくしながら読んだ。

以下ネタバレ





















2人とも大富豪の遺産を狙う悪人とはわかっていたが、読んでいる途中あたりから、私はヒルデガルドに感情移入してしまった。
アントンは、最初の結婚相手募集の新聞広告を出したときから、完全犯罪の計画をしており、駒として、
ヒルデガルドを利用しただけなのだ。
殺人容疑で苦しんだヒルデガルドはその後、容疑をはらし、彼女を陥れたアントンに復讐するのかと思ったら、
予想に反し、獄中で自殺してしまう。そしてそのまま、アントンが遺産を手にしたところで物語は終わる。

私としては、ヒルデガルドのその後の復讐劇が見たかったけど、ここで終わったことでびっくりで印象に残ったし、
計画を進行してるときのスリルが楽しかったので、まあ満足かな。
さすがに名作といわれるだけある。

海外ミステリ「幻の女」ウィリアム・アイリッシュ1942年米

2012年03月25日 | 海外小説ア行


ウィリアム・アイリッシュ(ウィキ

内容
ヘンダースンは、妻殺しの罪で死刑の宣告を受ける・・・

登場人物
スコット・ヘンダースン:株式ブローカー
マーセラ・ヘンダースンスコットの妻
キャロル・リッチマン:スコットの若い愛人
ジャック・ロンバード:スコットの親友
バージェス:分署の刑事
幻の女:?

ちょいコメ
とても有名な作品。
目次を開く。「死刑執行前百五十日」から始まり、段々日にちが縮まっていく。
どんな内容かなと読んだ最初の行。これが、有名な文だ。

「夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」

最初から最期まではらはらしながら読んだ。
一体、誰が犯人を殺したのだろう?

以下ネタバレになるかも。。





















最期の刑事バージェスの謎ときまで、全然わからなくてびっくり。
古さを感じさせない物語だった。
大変面白かった。

海外ミステリー「愛おしい骨」キャロル・オコンネル2010年米

2012年03月19日 | 海外小説ア行


内容(アマゾンより)
十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、時が止まったかのように保たれた家。誰かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつずつ置いてゆく。何が起きているのか。次第に明らかになる、町の人々の秘められた顔。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。『クリスマスに少女は還る』の著者渾身の大作。

登場人物
オーレン・ホッブス:主人公。元合衆国陸軍犯罪捜査部下級准将。
ハンナ・ライス:ホッブス家の家政婦。
ヘンリー・ホッブス:オーレンの父。元判事。
ジョシュア・ホッブス:15歳で死んだオーレンの弟。
ケイブル・バビット、デイブ・ハーディ:保安官。
メイビス・ハーディ:デイブ母。
イブリン・ストラウブ、ミラード・ストラウブ:夫婦
イザベル・ウィンストン:鳥類学者。アディソン・ウィンストン:イザベルの義理父、弁護士。セアラ・ウィンストン:母
ウィリアム・スワン:大学の客員講師。元警官。
フェリス・モンティ:ゴシップライター

ちょいコメ
「クリスマス~」が大変面白かったので、期待した作品。
たくさんの登場人物それぞれの「愛」が描かれている。
少女漫画好きな私にとっては、その色々な愛の物語に一喜一憂した。
また、相変わらず、登場してくる女性がすごい人ばかり。
謎解きのタイミングはちょっとずれた感じ。じらされすぎた。
多くの物語を詰め込みすぎたせいかな。
自分の問題だが、以前読んだ「ラスト・チャイルド」に設定が似て、つい比べてしまった。
読み終えてしまうと、まぁ面白かったかなという感じ。

以下ネタバレ




















私の頭の中の、ジョシュを殺害した犯人の推理。
物語の順番で、セアラ?
いやいや、この夫婦は壊れてるからアディスン?
え、そんな嫉妬で、やめて~。死んじゃうよ~
あああ、3人とも死んでしまったよ~
で、犯人は一体誰なの?

など読んでる私は頭の中がとても忙しかった。
最期まで犯人がわからず、物語いよいよ後半はイッキ読み。

犯人自白の拷問シーン、うう凄すぎる。
読んでも読んでもなかなかたどりつけなかったけど、やっとわかった。
こいつか~その理由は、、、なんだ、そんな理由で殺人。悲しすぎる。

オーレンとイザベル、激しいカップルになりそう。
ハンナ、癌だったのか。合掌。

海外小説「エアーズ家の没落」下 サラ・ウォーターズ 2010年

2012年02月14日 | 海外小説ア行


内容(アマゾンより)
相次ぐ不幸な出来事の結果、ハンドレッズ領主館はますます寂れていた。一家を案じるファラデー医師は、館への訪問回数を増やし、やがて医師と令嬢キャロラインは、互いを慕う感情を育んでいく。しかし、ふたりの恋が不器用に進行する間も、屋敷では悲劇の連鎖が止まることはなかった…

ちょいコメ(ネタバレになるかも)
この物語を昨日読み終えた。すっきりしない。
上下館の表紙を並べて、ハンドレッズ領主館の全貌も見た。まさに幽霊がいても不思議でない屋敷。
ファラデー医師の思い出、ロデリック、エアーズ夫人、そしてキャロラインに起こった出来事も考えた。
なぜ作者は原題を「The Little Stranger」にしたのか。
ずっと思ってた「物語のオチ」・・・
そうか~わかった・・・ような気がする。

ファラデー医師とキャロラインの破談の会話以降を再読。
なぜキャロラインが急に態度を変えたのか。
が、急にではなかったかもしれない。彼女は不器用だが、聡明だった。
「ベティが来てからの謎の出来事」続きで、エアーズ家の人々は狂っていったのだ。
とても怖い、とても悲しい物語だった。

が、とても引き込まれる物語ではあったので(私のツボ)
解説にあったスティーブン・キング作品、
ゴシック・ロマンス作品のエミリー・ブロンテ「嵐が丘」
シャーロット・ブロンテ「ジェーン・エア」
ヘンリー・ジェイムス「ねじの回転」ダフネ・デュ・モーリア「レベッカ」
古典のディケンズ、ウィルキー・コリンズ
など今後ぼちぼち読んでいきたいと思った。

海外小説「エアーズ家の没落」上  サラ・ウォーターズ 2010年

2012年02月12日 | 海外小説ア行


本が好き

内容(アマゾンより)
かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな“異変”が、館を不穏な空気で満たしていき…。

登場人物
ファラデー:医師・語り手
ロデリック・エアーズ:ハンドレッズ領主館主
キャロライン・エアーズ:その姉
エアーズ夫人:姉弟の母

ちょいコメ(ネタバレになるかも)
ケイト・モートン「忘れられた花園」がとてもツボだったので、
ゴシック・ホラー古いお屋敷作品を探して見つけた作品のひとつ。

物語はじめから、ファラデー医師の
「かつて隆盛をきわめた」ハンドレッズ領主館の語りが想像力をかりたててくれる。
子供の頃来た時の思い出、エアーズ夫人たちの装い、パーティの風景などなど。
そして、イメージができあがった所でのベイカー・ハイド事件。
怖い!この事件は謎だし、ロデリックの話している出来事も謎だ。
本当にファラデー医師が言うように、ロデリックの
「なんらかの原因で精神を病んでいる」せいで起こった事件なのかな?
続きが気になる。

「本が好き」(上記)には
論点のポイントは、「オチが分かるかどうか」にある
と書いてるが、上を読み終えた今では、まだまだわからない。
わかればいいな~

海外小説「祈りの海」グレッグ・イーガン 2000年

2012年02月04日 | 海外小説ア行


グレッグ・イーガン - Wikipedia

内容(アマゾンより)
二万年前に惑星コブナントに移住し、聖ベアトリスを信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは?ヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した表題作、バックアップ用の宝石を頭のなかに持った人類の姿を描いた「ぼくになることを」ほか、遙かな未来世界や、仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短篇集。

2001年に『祈りの海』、2002年に『しあわせの理由』、2003年に『ルミナス』、2010年に『暗黒整数』で星雲賞海外短編部門を、2005年に『万物理論』、2006年に『ディアスポラ』で星雲賞海外長編部門を受賞

グレッグ・イーガン - Wikipediaより
「貸し金庫」The Safe-Deposit Box (1990)
「キューティ」The Cutie (1989)
「ぼくになることを」Learning to Be Me (1990)
「繭」Cocoon (1994)
「百光年ダイアリー」The Hundred Light-Year Diary (1992)
「誘拐」A Kidnapping (1995)
「放浪者の軌道」Unstable Orbits in the Space of Lies (1992)
「ミトコンドリア・イヴ」Mitochondrial Eve (1995)
「無限の暗殺者」The Infinite Assassin (1991)
「イェユーカ」Yeyuka (1997)
「祈りの海」Oceanic (1998)

ちょいコメ(ネタバレあるかも)
SF初心者の私には難易度高い作品。
が、何度も繰り返し読むうちに、作者の言わんとするところがおぼろげに見えて・・ような気が。。。?

まず「貸金庫」
数週間のサイクルで、全く違う人間に生まれる男の物語。
私だったら、宿主は今までの人生があるから真似して暮らすと思うが? やはりずっとは続かないだろうな。

「ぼくになること」
脳のコピー機械「宝石」を幼い時に頭に組み込み、脳の働きが衰退した30代に本物の脳を捨て、「宝石」を使う物語。
コピー脳にするのは複雑だが、脳の退化がないのは素晴らしい。

「キューティ」
四歳で死亡するように設定された人工の赤ん坊を妊娠出産し育てる男の物語。
未来のない赤ちゃんを育てるのはつらいだろうな。しかも4歳!なんでそんな選択を?

「繭」
胎児をくるんで、現代社会のあらゆる毒から保護する繭の研究の物語。
主人公が怯えるのにはちょっと笑った。繭があれば、私はもっとまともに育ったかも。
また世の中のあらゆる問題が改善されるかな。ひょっとしたら人類滅亡するかも?

「百光年ダイアリー」
時間逆転した検知器で、人類はみな未来から送られた自分の日記を見れるという物語。
不変の未来を経験前に知るのは、成功ならいいけど、わかっている失敗を2度繰り返すことかな。なんかいやだなぁ。

「誘拐」
最愛の妻ロレインが誘拐された。実際の妻ではなく、PC上の妻。身代金は払うべきか?という物語。
この主人公の男性はロマンチストなんだな~

「放浪者の軌道」
互いの価値観や思考・信念が共有される、どのアトラクタにも影響されずに彷徨う人々の物語。
どこの団体にも属さない信念の人達。ということは、その反面もあるということ?

「ミトコンドリア・イヴ」
EPR分析法によるより厳密なDNA分析器を開発した男の物語。
ややこしい。わかる様なわからんような。。。そんでもって笑えた。

「無限の暗殺者」
ミュータント化したS常用者が現実をシャッフルし始めた時、事態を正常に復すため、パラレルワールド世界で「渦」に送り込まれる男の物語。
パラレルワールドなので、暗殺者の行動は様々あるのだな。

「イェユーカ」
常に体調を監視調節してくれる指輪をはめて、アフリカで治療する医者の物語。

「祈りの海」
マーティンは海で儀式をした時、聖ベアトリスの愛を受けた。なぐさめ、信念を授けられた。
この物語には驚いた。ラストのやりとりが印象的。

「神ってのはなかなかいい思いつきだが・・まるで意味をなさん」
「では、生きることがつらすぎはしませんか?」
「四六時中ってわけじゃないさ」
男は・・・・教会にむかってころがしていった。
ぼくは階段に腰かけたまま、夜明けを待った。

このページがわかりやすく参考になりました。面白く読ませてもらい、感謝です!

グレッグ・イーガン氏ブックレビュー

東北大学SF研wiki 祈りの海