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「植物が独自のエストロゲンを持っていることを知って 私たちは大変驚いた。
『植物性エストロゲン(ファイトエストロゲン)』と呼ばれるものだ。
それは日常ごく普通に食物としている植物に極めて広範囲に存在する。
実際に 私たちはかなりの量を食べている」とシャープは説明する。
ごく日常的に植物によって産生されるこれらの成分が
人間に現れている変化に何らかの形でかかわっているかも知れない
彼らはそう疑い始めた。
植物性エストロゲン
植物が持つエストロゲン様物質の研究は
はやくも1940年代にオーストラリアで始まった。
古くから牧羊地と知られたパース近郊で 羊たちが深刻な生殖障害に見舞われた。
さまざまな症状が突如として 群れの多くの羊を襲った。
月満ちた胎児が子宮内で突然死亡し死産で生まれてくる異常分娩が相次いだ。
若い処女羊を含む多くのメスが子宮脱にかかった。
予定日が来ても産気づかず 母子もろとも死亡する羊もいた。
妊娠しないメスも多かった。
奇妙なことに まだ繁殖計画の対象でもない若いメスたちの乳房が腫れ 乳を出した。
これらの広範囲にわたる生殖異常の原因解明のため政府から専門家が派遣された。
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青々と茂るクローバーは およそ犯人に似つかわしくなかった。
しかし 問題を起こしたのは 地中海地方から導入されて日も浅い
トリフォリウム・サブテラネウムという種類のクローバーだった。
その葉から有効成分が抽出された。
分析によって その成分は弱いエストロゲン様作用を持つトリヒドロキシイソブラボンと判明した。
まもなく エストロゲン様物質を含んでいるのはクローバーだけではないことが判明した。
羊の繁殖問題に活躍した 西オーストラリア大学のブラッドベリ教授は
その後も植物に含まれるエストロゲンの研究をつづけた。
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今日では 多くの植物にエストロゲン様作用を持つ成分が含まれていることが分かっている。
それには複数の異なる化学物質がある。
第一のグループ イソフラボン類は最も一般的だ。
自然界におよそ70種類が存在するが すべてがエストロゲン様作用を持つわけではない。
クローバーの葉の部分の濃度は 5%程度にもなる。
第二のグループのクメスタン類は ヒマワリの種や油 アルファルファ 大豆 サヤインゲン
アズキ グリーンピース ホウレンソウ 数種のクローバーなどに含まれている。
このエストロゲン様作用は イソフラボンの30~50倍も強力だ。
それどころか クメストロールのエストロゲン活性は内因性の17βーエストラジオールの
10~20分の1もの効力があると信じられている。
第三のグループはある種の酸性ラクトン類に由来するもので
トウモロコシやコムギに見られる。
植物性エストロゲンが動物の生殖に害を及ぼしうるならば
人間にも同様の害をもたらす可能性があるといえる。
だが またしても その答えは単純ではなかった。
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