5月30日朝日新聞社説の主張は、暴力団対策として不十分 効果ある対策を着実に進めよう(羽黒蛇)
木瀬親方が暴力団員に維持員席を仲介した疑いに関して、新聞報道では、(1)相撲協会は暴力団との縁を切るべき(2)厳しい処分が必要 という論調である。
私の意見は、(1)については賛成。(2)については、是々非々が必要。そして、効果が出る対策を打つ必要がある。
事例として、5月30日朝日新聞社説を引用する。要約・部分引用、後の論評のために、段落に筆者(羽黒蛇)が番号をふっている。
ここで、クイズ。
引用した 10の段落の一つには、朝日新聞が、事実関係を誤認していると思われる箇所である。どの箇所か、筆者の見解は、引用後に解説する。
Quote
タイトル:相撲協会 これで「公益法人」とは
内容:
(1) どこまで自覚のない人たちなのか。またまた角界で不祥事である。
(2) 昨年の名古屋場所で、暴力団関係者が特別席で観戦、席の手配に親方2人が関与していたことが、愛知県警の調べで分かった。
(3) 日本相撲協会は税制面で優遇を受ける公益法人であるが、こんな有様では公益法人の適格性を疑わざるをえない。
(4) 親方2人は県警に対し、暴力団関係者に渡るとは知らずに仲介したと弁明し、直接の関与は否定している。
(5) だが、維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。親方がそれを知らないはずがない。その席を不適切な方法で手配すれば、問題のある者に回りかねない。
(6) そんなことを認識していなかったとすれば、協会運営を担う責任のある立場として、あまりにも情けない。
(7) 協会は親方2人の事情を聴いた上で、降格などの処分を下した。当然である。
(8) 同じような問題が、名古屋場所以外で広がっている疑いもぬぐえない。不正な入場券の流通がないかどうか、徹底した調査を行うべきだ。
(9) それにしても、協会は問題の深刻さを本当に分かっているのだろうか。
(10) 暴力団に甘い体質が以前根深いとしか思えない。
(11) 協会の目的は、「相撲道の維持発展と国民の心身の向上」への寄与と、規約に相当する文書に記載されている。だが、まず自らを律するのが先だろう。
Unquote
相撲のことを十分にはよく知らない人の書いた文章だという感想を持った。
相撲のことを十分にはよく知らなくても、言っていることは正しい。相撲協会は、暴力団との関係を断ち切るべきである という主張はその通り。これに反対する人はいないだろう。
関係を断ち切るのが目的でありこれは動かない。考えなくてはいけないのは、目的を実現するために、どのような手段を、どのような手順でとっていくのかという対策である。
社説段落(8)にある、維持員席が不正に流通していないかの調査は、暴力団との手を切るのに役に立つのであろうか。私は疑問に感じる。
社説段落(5)の、「維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。」とは、事実なのだろうか。私は、全く逆の認識をしていた。
私の認識は、「維持員席は、維持員が15日間毎日相撲観戦するのは、現実的には無理なので、維持員が観戦できない日は、維持員本人か、相撲サービス会社に委託して、第三者に販売することが許されている。」である。私の認識は、社説と、全く反対であるが、どちらが事実かによって、対策が変わってくる。
社説の認識が正しければ、維持員席は、維持員のみが観戦し、維持員が観戦できない日は、空席となることを徹底すれば、暴力団にわたることはありえないので、それが有効な対策となる。
私の認識が正しければ、仲介者となる維持員と相撲サービス会社に、しっかりと協力を要請し、かつ教育をする。特に、仲介者から、その先に暴力団にわたることがないように、本人確認を行い、本人でない者の入場を拒否することが対策となる。
本人確認とは、例えば、次のような手順である。
ステップ1:切符の所有者(維持員)が、切符の販売を相撲サービス会社に委託。
↓
ステップ2:仲介者・販売者として、相撲サービス会社は、営業する。(ここまでは今までと同じ。)
↓
ステップ3:販売先・購入者(観戦する人)が決定したら、相撲サービス会社は、本名、住所、年令、性別を登録する。
購入者が家族・友人にプレゼントする場合は、複数登録を可とし、観戦可能性のある人間の個人データを全員登録する。
↓
以上は、販売までの手順、次に入場時のプロセス
↓
ステップ4:相撲サービス会社は、切符を持ってきたお客さんに、運転免許証等の提示を求め、購入者自身または観戦者として登録された人物であるかを、事前登録済の個人データと照合して確認する。
↓
ステップ5:確認がとれれば、座席に案内する。確認がとれなければ、お帰りいただく。
ステップ3で、切符の販売者である相撲サービス会社は、購入者が暴力団員でないことを確認する。その際は警察の協力が必要であろう。暴力団員が切符を買う時に、自分が暴力団員であるとは名乗らないだろうから、警察よりブラックリストを受け取り、照合する作業が発生する。
切符を購入した人が、急用で見に行けなくなった場合に、
ステップ3で、切符を譲る可能性のある人の個人情報を登録しておけば、譲ることができるが、登録していないと、譲ることはできなくなり、切符は無駄になる。
ただし、この面倒で、複雑な仕組みを入れたとしても、完全には暴力団員の維持員席での観戦は防げない。
例えば、次のような手法がある。
暴力団員が、知り合いの一般人に、維持員席を入手してもらう。
当日、暴力団員は、椅子席を購入して、会場の中に入る。
維持員席を持っている一般人と、椅子席を持っている暴力団員が、切符を交換する。
私は、どんなに複雑な対策をとっても、暴力団員の手に切符が渡るのを、完全に防ぐことは難しいと思う。
維持員席の販売に制限をかけ、対策をうつより、もっと有効な方法があるのではないか。仮に、何らかの手法を使って切符を入手した暴力団員が会場に現れたら、警察の手で退去させるような、別の手段をとった方が効果的だと思う。(これが可能なのかは、分からないが、一例としてあげた。)
さらに、維持員席が暴力団員の手に渡らないようにすることだけに力を注ぐことより、大事なことがある。
暴力団員が、力士・相撲部屋・相撲協会関係者に近づいてきた時の対応・警察への通報の仕方、
何をしなくてはいけないか、何をしてはいけないか
このような、具体的なノウハウの習得と、相撲界全体への浸透をはかる必要がある。
まずは、勉強して、これから一つ一つ改善して行けばよいのである。
朝日新聞だけでなく、マスコミは、相撲協会を批判し叩くが、それに反発する必要も、怯む必要もないし、嘆く必要もない。
相撲協会は、自分たちの将来のために、何をすべきかを考え、専門家の指導を受け、将来のために、着実に改善を重ねていけばよい。
今回の維持員席問題は、そのスタートだと、前向きに考えよう。
羽黒蛇
木瀬親方が暴力団員に維持員席を仲介した疑いに関して、新聞報道では、(1)相撲協会は暴力団との縁を切るべき(2)厳しい処分が必要 という論調である。
私の意見は、(1)については賛成。(2)については、是々非々が必要。そして、効果が出る対策を打つ必要がある。
事例として、5月30日朝日新聞社説を引用する。要約・部分引用、後の論評のために、段落に筆者(羽黒蛇)が番号をふっている。
ここで、クイズ。
引用した 10の段落の一つには、朝日新聞が、事実関係を誤認していると思われる箇所である。どの箇所か、筆者の見解は、引用後に解説する。
Quote
タイトル:相撲協会 これで「公益法人」とは
内容:
(1) どこまで自覚のない人たちなのか。またまた角界で不祥事である。
(2) 昨年の名古屋場所で、暴力団関係者が特別席で観戦、席の手配に親方2人が関与していたことが、愛知県警の調べで分かった。
(3) 日本相撲協会は税制面で優遇を受ける公益法人であるが、こんな有様では公益法人の適格性を疑わざるをえない。
(4) 親方2人は県警に対し、暴力団関係者に渡るとは知らずに仲介したと弁明し、直接の関与は否定している。
(5) だが、維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。親方がそれを知らないはずがない。その席を不適切な方法で手配すれば、問題のある者に回りかねない。
(6) そんなことを認識していなかったとすれば、協会運営を担う責任のある立場として、あまりにも情けない。
(7) 協会は親方2人の事情を聴いた上で、降格などの処分を下した。当然である。
(8) 同じような問題が、名古屋場所以外で広がっている疑いもぬぐえない。不正な入場券の流通がないかどうか、徹底した調査を行うべきだ。
(9) それにしても、協会は問題の深刻さを本当に分かっているのだろうか。
(10) 暴力団に甘い体質が以前根深いとしか思えない。
(11) 協会の目的は、「相撲道の維持発展と国民の心身の向上」への寄与と、規約に相当する文書に記載されている。だが、まず自らを律するのが先だろう。
Unquote
相撲のことを十分にはよく知らない人の書いた文章だという感想を持った。
相撲のことを十分にはよく知らなくても、言っていることは正しい。相撲協会は、暴力団との関係を断ち切るべきである という主張はその通り。これに反対する人はいないだろう。
関係を断ち切るのが目的でありこれは動かない。考えなくてはいけないのは、目的を実現するために、どのような手段を、どのような手順でとっていくのかという対策である。
社説段落(8)にある、維持員席が不正に流通していないかの調査は、暴力団との手を切るのに役に立つのであろうか。私は疑問に感じる。
社説段落(5)の、「維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。」とは、事実なのだろうか。私は、全く逆の認識をしていた。
私の認識は、「維持員席は、維持員が15日間毎日相撲観戦するのは、現実的には無理なので、維持員が観戦できない日は、維持員本人か、相撲サービス会社に委託して、第三者に販売することが許されている。」である。私の認識は、社説と、全く反対であるが、どちらが事実かによって、対策が変わってくる。
社説の認識が正しければ、維持員席は、維持員のみが観戦し、維持員が観戦できない日は、空席となることを徹底すれば、暴力団にわたることはありえないので、それが有効な対策となる。
私の認識が正しければ、仲介者となる維持員と相撲サービス会社に、しっかりと協力を要請し、かつ教育をする。特に、仲介者から、その先に暴力団にわたることがないように、本人確認を行い、本人でない者の入場を拒否することが対策となる。
本人確認とは、例えば、次のような手順である。
ステップ1:切符の所有者(維持員)が、切符の販売を相撲サービス会社に委託。
↓
ステップ2:仲介者・販売者として、相撲サービス会社は、営業する。(ここまでは今までと同じ。)
↓
ステップ3:販売先・購入者(観戦する人)が決定したら、相撲サービス会社は、本名、住所、年令、性別を登録する。
購入者が家族・友人にプレゼントする場合は、複数登録を可とし、観戦可能性のある人間の個人データを全員登録する。
↓
以上は、販売までの手順、次に入場時のプロセス
↓
ステップ4:相撲サービス会社は、切符を持ってきたお客さんに、運転免許証等の提示を求め、購入者自身または観戦者として登録された人物であるかを、事前登録済の個人データと照合して確認する。
↓
ステップ5:確認がとれれば、座席に案内する。確認がとれなければ、お帰りいただく。
ステップ3で、切符の販売者である相撲サービス会社は、購入者が暴力団員でないことを確認する。その際は警察の協力が必要であろう。暴力団員が切符を買う時に、自分が暴力団員であるとは名乗らないだろうから、警察よりブラックリストを受け取り、照合する作業が発生する。
切符を購入した人が、急用で見に行けなくなった場合に、
ステップ3で、切符を譲る可能性のある人の個人情報を登録しておけば、譲ることができるが、登録していないと、譲ることはできなくなり、切符は無駄になる。
ただし、この面倒で、複雑な仕組みを入れたとしても、完全には暴力団員の維持員席での観戦は防げない。
例えば、次のような手法がある。
暴力団員が、知り合いの一般人に、維持員席を入手してもらう。
当日、暴力団員は、椅子席を購入して、会場の中に入る。
維持員席を持っている一般人と、椅子席を持っている暴力団員が、切符を交換する。
私は、どんなに複雑な対策をとっても、暴力団員の手に切符が渡るのを、完全に防ぐことは難しいと思う。
維持員席の販売に制限をかけ、対策をうつより、もっと有効な方法があるのではないか。仮に、何らかの手法を使って切符を入手した暴力団員が会場に現れたら、警察の手で退去させるような、別の手段をとった方が効果的だと思う。(これが可能なのかは、分からないが、一例としてあげた。)
さらに、維持員席が暴力団員の手に渡らないようにすることだけに力を注ぐことより、大事なことがある。
暴力団員が、力士・相撲部屋・相撲協会関係者に近づいてきた時の対応・警察への通報の仕方、
何をしなくてはいけないか、何をしてはいけないか
このような、具体的なノウハウの習得と、相撲界全体への浸透をはかる必要がある。
まずは、勉強して、これから一つ一つ改善して行けばよいのである。
朝日新聞だけでなく、マスコミは、相撲協会を批判し叩くが、それに反発する必要も、怯む必要もないし、嘆く必要もない。
相撲協会は、自分たちの将来のために、何をすべきかを考え、専門家の指導を受け、将来のために、着実に改善を重ねていけばよい。
今回の維持員席問題は、そのスタートだと、前向きに考えよう。
羽黒蛇