羽黒蛇、大相撲について語るブログ

相撲ファンから提供された記事・データも掲載。頂いたコメントは、記事欄に掲載させて頂くことがあります。

平成25年・2013年11月場所前(真石博之)

2013年10月31日 | 相撲評論、真石博之
11月場所の資料をお送りいたします

○白鵬が豪栄道に呆気なく負けた10日目、飛んできた座布団が髪のない頭に当りましたが、この災難のほかは印象が薄い秋場所でした。日馬富士、稀勢の里が相変わらず不甲斐なく、決して盤石ではない白鵬が楽に逃げ切ってしまった、つまらない場所でした。千秋楽を待たずに決めた優勝14回は、朝青龍の15回に次ぐとのこと。この二人の数字はライバル不在の証明だろうと思い、大横綱とそのライバルの関係を探るために、別紙『6大横綱とライバル』を作ってみました。参考までに年2場所時代の双葉山もつけてみました。



○優勝20回以上の6大横綱の、①初優勝から最後の優勝までの場所数、②優勝回数、③優勝率=②÷①、④上記①の期間での他の力士の優勝 を一覧にしました。優勝率が低いほど強いライバルがおり、優勝率が高いほどライバルが少ないという仮説にたっています。強いライバルがいたのは、北の湖と貴乃花になります。北の湖には前半に輪島、中盤に二代若乃花、後半に千代の富士と隆の里。貴乃花の場合はほぼ全期間にわたって曙と三代若乃花、後半に武蔵丸がいました。これに対して、ライバルが少ないのは、やはり朝青龍と白鵬です。朝青龍には後半での白鵬、白鵬には初期での朝青龍だけなのです。



○「ミスター・ガッカリ」と名づけたところ、「その通りだ」「可哀想だ」とご感想が寄せられた稀勢の里。ここ2場所続けて相撲内容で白鵬に勝っていましたが、秋場所では格の違いと言わざるを得ない完敗でした。解説の貴乃花が『負けない稽古、土俵を割らない稽古を』と言いましたが、部屋に強い相手はいないのですから、前々から言われている「出稽古をしろ」という意味でしょう。また、『稀勢の里は長身力士に弱い』と指摘したのが3日目のゲスト把瑠都だったのは意外でしたが、その通りで、当の把瑠都や琴欧洲を苦手にしていましたし、当日も隠岐の海に下手な相撲で負けました。13日目に豪栄道に完敗したあと、審判部長の鏡山が『横綱になる可能性はないと思う』と発言したのですが、果して、どうなのでしょうか。



○別紙「26横綱の昇進前の戦績」から、稀勢の里の昇進可能性を探ってみます。(欄外に稀勢の里の戦績)「昇進前の勝率」は休みを負けとした勝率②で見ます。勝率が6割(9勝6敗)を下回っているのは、稀勢

の里の他は琴櫻、北の湖、三重ノ海、千代の富士、隆の里の5人だけですから、昇進の可能性は低いことになります。5人のうち、早熟・北の湖と晩成・千代の富士は大関わずか3場所で、優勝1回を含む36勝と38勝で駆け上がった突然変身型。隆の里は大関9場所平均がほぼ12勝、優勝も2回と大関昇進後成長型。琴櫻と三重ノ海は、大関でも横綱でも弱く、横綱昇進の直前と直後だけが良かった眉唾型です。

次に「昇進年齢」では、稀勢の里がここから2場所連続優勝して昇進したとしても、27歳6カ月で十分に遅い年齢ですし、「入門からの場所数」も70場所となり、これを上回るのは北の富士、琴櫻、三重ノ海、隆の里の4人だけです。最後に「優勝」。優勝せずに昇進したのは相撲協会の汚点となった双羽黒だけで、とにかく優勝しないと話になりません。こう見てくると、横綱昇進は極めて難しいという推論になります。






○前回も稀勢の里に触れましたが、その時に第一線記者からいただいたご返信を紹介させていただきます。『先代鳴戸親方の言う「頭」、まったく同感です。というか、どんなスポーツでも一流アスリートは皆、頭がよいのだと思います。一部の相撲記者の間では「相撲偏差値」という言葉が言われています。偏差値75は安美錦です。白鵬もかなり高い力士だと思います。残念ながら稀勢の里はこれに当てはまらないというのが、記者の間の一致した見方です。相撲偏差値は番付とは比例しません。三段目力士でも、まるで三役力士にインタビューしているのではないかと錯覚するときがあります。出番前の関取衆が付け人の指示を仰ぐといったケースも珍しくありません。 <中略>  取材を通じても“体重信仰”がより顕著になったことが感じられ、ちょっとがっかりさせられることもなくはありません』。



○その体重信仰で心配なのが遠藤です。師匠の追手風(大翔山)が言ったのです。「まだ、幕内の身体ではない。160kgは欲しい」。今、遠藤は146kg。柔らかい立ち合いから、離れて良し、組んで良し。組めば、型を持っている上に臨機応変の相撲をとります。この魅力ある取り口を160kgでとれるか甚だ疑問です。

大翔山はといえば、もっぱら半身からの下手投げ。アマチュア横綱なのに、幕内22場所、2枚目止まり。その原因は腰痛で、どう見ても186kgが重すぎたのです。今も検査役の中で際立って太っています。



○拙著「『うっちゃり』はなぜ消えたのか」で一番いいたかったのは「肥満が相撲をつまらなくした」ということです。肥満でバネを失った腰ではできない「うっちゃり」、腹が邪魔でかからない「内掛け」、重すぎて上らない「吊り上げ」が激減した一方で、肥満で簡単にバランスを崩すために、「はたきこみ」「突き落とし」「送り出し」が激増しました。いずれも、手に汗を握る前に勝負がつく、つまらない決まり手です。



○肥満の蔓延を止める方法として、「立ち合いの本当の正常化」を説く先達のご意見を再び紹介します。

『今は、手をおろす前に呼吸を合わせようとにらみ合い、立つときに瞬時手をおろしている。これでは、体重のある者の当たりが強くなって有利。正常な立会いとは、双葉山時代以前の立合いで、両手をしっかりおろして静止してにらみあい、そこで呼吸を合わせて立つ立会いです。立会いの当たりは減速されます。

早く立った者が有利とは限らなくなり、軽量の者もわざを発揮しやすくなります』。

一方、私の提案は安直なもので、①「BMI(肥満値)50以上」②「180kg以上」の出場停止でした。



○別紙「幕内力士のBMI・体重・身長」をご覧ください。 (BMI=体重 kg÷身長 m÷身長 m)

上記の出場停止の条件①と②の両方に該当するのが、臥牙丸、佐田の富士、天鎧鵬、富士東、豊響、碧山の6人です。いずれも、体重以外に見るべきものがない魅力に乏しい力士と思いますが、如何でしょうか。

次に、180kg以上ではないがBMIが50以上なのが琴奨菊、舛ノ山、琴勇輝、豊ノ島、豪風、徳勝龍、千代大龍、稀勢の里の8人。逆に、BMIは50以下だが180kg以上なのが魁聖、栃乃若の2人です。

一番右の「要減量kg」は、BMIを50に、あるいは体重を180kgに落すために必要な減量kgです。

2場所毎に体重測定をしますので、次の測定で減量できていなければ出場停止としてはどうでしょうか。



○豪栄道が白鵬と3大関を破って11勝をあげ、大関への足がかりをつかみました。本人も「これからにつなげていきたい」と明言しました。妙義龍以下をまったく寄せつけない稽古場での無敵の強さを本場所でも出せたようです。13日目、稀勢の里に押し込まれたところをイナし、差しにくるところを右からおっつけて押し出したのは出色でした。続く14日目、苦手にしていた高安が突いてくるところを厳しくおっつけ、頭をつけ、のど輪で圧倒したのも大進歩に思えました。白鵬より1歳若いだけ。時間はありません。



○日経新聞元社長の鶴田卓彦氏の後任に読売新聞元社長の内山斉氏が就いた横綱審議会委員長。大手新聞社の社長は立派に務めたのでしょうが、ご両所とも相撲は門外漢です。前任者同様のトンチンカンなことを言わなければいいと思っていた矢先、秋場所を総括した中で、日馬富士について『(足首を痛めていたが)綱の意地で場所を乗り切った点では評価したい』と述べました。怪我があるのなら、まず、それを直して、優勝争いに加わるのが横綱の務めです。怪我を理由に、10勝の横綱を評価するとは困ったものです。

平成25年10月28日    真石 博之

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2013年10月19日 | 書籍、映画、展示会、美術等相撲作品の感想
「大相撲の見かた」右四つと左四つ、どっちが多い(羽黒蛇)







書名:大相撲の見かた



著者:桑森真介



出版社:平凡社新書







この本を読んで関心を持った箇所を引用し、感想を述べる。







80頁から引用



小見出し:右利きは右四つが組みやすい。すると数が少ない左四つは有利か?!



「平成25年3月場所の幕内力士42名中、右四つは20名、左四つは6名、どちらともいえない力士は16名である。



稽古で押しの練習をする場合でも、受け側は右胸を前に出し、押す側はその右胸を押すことが一般的だ。これは右四つで、右胸が前に出る体勢と合致している。つまり右四つがベースとなった稽古が行われているのである。」



「一般的には、左四つは力士の中でも比較的少なく、左四つの体制を押すことには不慣れなために、左四つが有利になるのであろう。」







94頁から引用



「序二段:平成25年3月場所では九十四枚目までの番付がある。つまり東西合わせて200人近い力士がしのぎを削っている激戦の階級といえる。」







154頁以降から引用



小見出し:補論 科学データで読み解く ちょっとディープな相撲のはなし



小見出し:立合いで力士が体に受ける力は1トンを超える



小見出し:足を滑らせるためにある、土俵の砂の不思議



小見出し:押し上げることで、相手の体重を自分の力に変えられる!?



小見出し:立合いに両手をつくと有利か不利か



「相撲経験のある関係者は、立合いに両手をつくとスピードが落ちて当たりが弱くなると感じるようであるが、実際の測定データから、むしろ有利になることがわかった。」



「経験から生まれる思い込みと現実が異なることを、科学的なデータが実証した一例である。」



小見出し:土俵を大きくすると小さな力士が活躍できる?



「私たちの研究グループでは、直径16尺(4m85cm)の拡大土俵と、直径15尺(4m35cm)の両方で学生の相撲選手に住もうを取ってもらい、体重の軽い側がカツ率、決まり手数、競技時間を比較した。



土俵を拡大すると、体重差が10%以上ある取組では、体重の軽い方が、30番行うと2・3番多く勝つことができるようになると分かった。決まり手数と競技時間は、土俵を拡大しても大きな影響は見られなかった。」







羽黒蛇の感想:



私は、右四つより、左四つの方が多いと感じていたので、右四つが多いという数字は新鮮だ。



自分が相撲を熱心に見た子供の頃、柏鵬、北玉時代は、左四つが多かったのか、一度調べてみたい。



千代の富士が大関・横綱とスピード昇進した当時、右四つの千代の富士が、左四つが多い上位力士に勝てるようになったのは、相撲の早い千代の富士が、自分十分・相手不十分の体勢になるからだと、感じていたのを思い出した。



上位に右四つが多ければ、千代の富士が十分でも相手も十分なら、そんなには勝てない。



のちに、右四つの隆の里が強くなってから、千代の富士が苦手としたのも、自分は体が小さいのに、相四つだから。







序二段は、相撲の弱い力士が多く、一番つまらない階級である。激戦の階級と表現するのは誤りである。序二段から三段目にすぐ昇進できない力士のほとんどは将来性がないと、私は評価している。



序ノ口は、入門したばかりで相撲を覚えていない力士たちの、体格・足腰の強さ・面構えを見て、将来強くなるかを想像する楽しみがあるが、序二段は、見飽きた弱い力士たちの、ゆるゆるの階級と感じる。







科学データで読み解く相撲の話は、知らないことも多く、読みごたえがあった。羽黒蛇

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2013年10月04日 | 横綱昇進、大関昇進、大関陥落、横綱陥落
弱い大関を昇進させ、強い大関を昇進させない可能性のある現行制度(羽黒蛇)「強い大関は横綱昇進、強くなければ大関据え置き」の方がまし






昨日の「来場所全勝なら、稀勢の里横綱昇進」というブログ記事に対して、

「フォロワーさんから、面白い評論をメールで頂きました。要旨は、「稀勢の里は、来場所全勝なら横綱に」。荒唐無稽、と思われるでしょう。ところが、通読すると、ちょっと捨てがたい理屈なんです。この理屈をどこかの紙面で紹介するチャンス、ないもんかなあ。」というツイートをいただきました。






現行制度の「大関で連続優勝なら横綱昇進」は、弱い横綱を作るから、よくない。

ケースA1:0・8・0・8・12優勝・12優勝  (6場所で40勝)

全敗・ぎりぎり勝ち越しの最低の成績の大関が、連続優勝したら横綱に昇進させるのか。

おそらく昇進できないであろう。しかし、ルールでは、横綱昇進である。






ケースA2:8・8・8・8・12優勝・12優勝  (6場所で56勝)

現行制度では、昇進させざるをえない。ケースA1はカド番を続ける大関は連続優勝しても昇進させないという言い訳ができるが、ケースA2は言い訳が難しい。

しかし、こんな成績の大関は弱いので、昇進させるべきではないと羽黒蛇は考える。

稀勢の里がこの成績で、横綱に昇進できなかったら、ファンは納得するだろうか。

こんな弱い大関でも横綱になるチャンスのある現行規定は廃止して、新しいルールが必要である。






ケースB1:10・15優勝・10・15優勝・10・15優勝(6場所で75勝、優勝3回)

現行制度では、優勝の翌場所が、優勝に準じるとは言えない10勝なので、この成績を続けていると永遠に横綱になれない。その結果、本当に横綱より強い大関が誕生する。






ケースB2:11・13・11・13・11・13(6場所で72勝、優勝0回)

相撲協会と横審が、13勝を優勝に準じる成績と定義しているのか、分からない。

私は優勝に準じる成績だと考える。

しかし、11勝は優勝に準じる成績と言えないから、昇進できない。

11勝で優勝しても、横綱昇進の審査に当たっては、優勝とも、優勝に準じると私は評価しない。相撲協会と横審が、そのように明確に定義した記憶はないが、私と同意見だろう。






ケースB3:12・12・12・12・12・12(6場所で72勝、優勝0回)

12勝が優勝に準じる成績だと評価されれば、優勝しなくても、横綱に昇進できるかもしれない。






次に、現行制度の問題点を指摘する。

問題点1:優勝か、優勝に準じる成績かというのが唯一の基準なので、12勝も15勝が同じ価値になってしまう。






直前2場所の成績と、現行制度での昇進可能性。

11 ・12優 合計23勝 優勝1回、昇進できない

12優・12優 合計24勝 優勝2回、昇進できる

11 ・14  合計25勝 優勝なし、昇進できない

10 ・15優 合計25勝 優勝1回、昇進できない

11 ・15優 合計26勝 優勝1回、昇進できない

仮に直前2場所の成績で昇進可否を決めるとしたら、私は勝ち星の多い大関が横綱昇進にふさわしく、連続優勝しても12勝2回の24勝は昇進にふさわしくない。

では、2場所の成績が何勝以上なら、横綱昇進させるにふさわしいのか。






その答えは、15勝・15勝の連続全勝優勝でも、昇進させるべきでないケースがある。






ケースA3:0・8・0・8・15優勝・15優勝  (6場所で46勝)






問題点2:直前2場所の成績で決めるので、直前3場所目以前の成績が評価の対象外となっている。






ケースA2:8・8・8・8・12優勝・12優勝  (6場所で56勝、優勝2回)

ケースA4:8・8・8・8・15優勝・15優勝  (6場所で62勝、優勝2回)

ケース日馬:8・11・11・8・15優勝・15優勝  (6場所で68勝、優勝2回)

ケースB3:12・12・12・12・12・12(6場所で72勝、優勝0回)






ケースA2とケースB3は、いずれも直前2場所は、12勝・12勝。

しかし、ケースA2は弱い大関だが、ケースB3は強い大関。

弱い大関はたとえ二場所優勝しても横綱に昇進させるべきでないし、

強い大関はたとえ二場所優勝がなくても横綱に昇進させるべき。

これができないのが、現行制度の欠陥である。






現行制度では、

ケースA2:昇進できるかどうかは微妙。いくら2場所連続優勝でも、その前が弱すぎるのでもう一場所様子をみることになるだろう。しかしそれは、現行制度では問題となる。よって、早く制度を変えるべきである。

ケースA4:昇進させるであろう。弱い大関とはいわないが、強くない大関を昇進させてよいのかは、疑問。

ケース日馬富士は、昇進した。

ケースB3:昇進できるかどうかは微妙。いくら6場所の成績がよくても、直前2場所で優勝がなければ、双羽黒の呪縛がある限り、昇進は難しい。






私の意見は、この4つのケースでは、ケースB3が一番横綱に昇進させるにふさわしい。

何故なら、4つの中で、一番強い大関だから。






提案:

2場所では大関が強いか、強くないのか分からない。少なくとも、6場所みて決める。

6場所で何勝以上なら横綱昇進かは、過去の昇進の例より判断し、相撲協会が決めればよい。

追加の条件として、

条件1:優勝を経験していること。

条件2:直前1場所で12勝以上。






条件2を追加した理由は、例えば6場所で70勝という昇進条件にした時に、

5・8・12・15・12・15(合計67)・9(合計71)・9(合計70)

のように、直前場所が一桁でも昇進条件を満たしてしまい、盛り上がりにかけるから。

制度とは、このように、あらゆるケースを想定して、用意周到に作るべき。






大関で二場所連続優勝か優勝に準ずる成績という現行制度は、あまりに杜撰。

杜撰な制度ならない方がまし。

単純に、「強い大関は横綱昇進、強くなければ大関据え置き」の方がまし。






羽黒蛇

shin2

2013年10月04日 | 読者からのコメント、中村淳一他読者の投稿
9月場所11日目、妙義龍のもろ差しを、左から小手に振って、右からの小手投げで裏返した(呼び戻しと小手投げの合わせ技?)白鵬を見て、とてつもなく強いと思った。

古今東西の最強力士を選ぶ場合、選者の人生が反映する=自分の人生で、いちばん輝いていた時代に活躍していた力士を最強と認定する傾向があると考えます。
私自身は、自分の高校生時代に全盛だった北の湖が最強と思っていましたが、上記の白鵬vs妙義龍戦を見て、白鵬最強と考えを変えつつあります。

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2013年10月03日 | 横綱昇進、大関昇進、大関陥落、横綱陥落
来場所全勝なら、稀勢の里横綱昇進(羽黒蛇)






初場所の日馬富士の全勝優勝から4場所連続して白鵬が優勝している。もし仮に、白鵬がこの4場所休場したら、誰が優勝したのだろうか。

白鵬と対戦して負けた力士は他の力士と対戦して勝つと仮定して、勝敗を推定してみると、






3月場所

日馬富士 10勝

稀勢の里 11勝 決定戦

豪栄道  11勝 決定戦

把瑠都  10勝

栃煌山  11勝 決定戦






5月場所

日馬富士  12勝

稀勢の里  14勝 優勝

鶴竜    11勝

琴奨菊   12勝

妙義龍   12勝






7月場所

日馬富士  10勝

稀勢の里  11勝 決定戦

鶴竜    11勝 決定戦

栃煌山   11勝 決定戦






9月場所

日馬富士  11勝

稀勢の里  12勝 優勝

琴奨菊   11勝

豪栄道   11勝






9月場所は、稀勢の里11勝、豪栄道11勝で、白鵬に負けた稀勢の里は理論値12勝、白鵬に勝った豪栄道は実績値11勝。

場所前から白鵬が休場していたら、各力士の精神状態が異なり、理論値の通りにはならない。

一人横綱の日馬富士は、一つの場所に全力を集中して、他の場所を捨てれば、4場所のうち1場所は優勝するだろう。






白鵬4場所休場なら、稀勢の里は最低2回、あるいは全4場所優勝の可能性があった。

稀勢の里が白鵬に次ぐ、実力者であることは、数字で証明されている。






雑誌「相撲」で九重親方は、「一言で言って、安定感が足りない」と書いている。

稀勢の里は、攻めの相撲であり、取りこぼしがあるのは、想定内である。

取りこぼしても、優勝できるくらいに強い力士になれば、横綱の可能性が出てくる。

2番目に強いけど、横綱になるほどには、強くない。

では、どうすれば強くなるのか。

九重親方は、自分より実力が上の相手と稽古しないと、と書いている。これは白鵬と稽古しろという意味。






3日目のテレビ解説で、把瑠都が、隠岐の海に敗れた稀勢の里を称して、「背の高い力士を苦手にしている」と評していた。

稀勢の里は把瑠都を苦手としており、上手を取られては切りにいくが、攻め手がなく懐の深さに負けてしまう相撲を、毎場所のようにとっていた。

苦手を克服するには、稽古も大事だが、どうやったら勝てるのかという研究も大事である。






今場所の稀勢の里は、日馬富士戦、琴奨菊戦で、不利な体勢になりながら、辛抱して、最後に体力と豊富な稽古量を見せつけるような勝ち方をした。

以前の稀勢の里だったら、不利な体勢になると、腰高をつかれて、挽回できなかったという印象がある。この二番は、相撲が進歩したのかな、と思わせる内容だった。

少しずつでも進歩していけば、白鵬が衰えた時に、いつかは優勝できるような気がする。






史上最強の大関は、初代若乃花勝治だった。

13・12・12・12・11・10・11・11・12・13

強い大関はすぐ横綱になってしまうので、10場所で12勝以上6場所というのは空前絶後の記録である。

次の候補は、柏戸。

12・11・13・12.10・11・12

直前三場所の成績は悪いが、7場所で12勝以上4回と、若乃花ほどすごくないが、横綱でもこんな成績は難しいというレベルは達成している。

われらが稀勢の里

11・9・11・10・10・10・10・10・13・11・11

来場所15戦全勝なら横綱にしてもよいのではないか。

直前6場所の勝ち星合計、若乃花68勝、柏戸69勝、稀勢の里70勝(全勝なら)






理論値により、白鵬がいなければ、稀勢の里が優勝と書いたが、本当に白鵬が休場なら、他の力士がチャンスとばかりに奮起するので、

日馬富士、鶴竜、琴奨菊、豪栄道が1回ずつ優勝して、稀勢の里は準優勝はするが、ここ一番の大事な相撲に敗れて、優勝できない、という可能性もある。いや、可能性が高いと思うべきかもしれない。






日本人力士の優勝を望んでいるファンは、毎場所稀勢の里に期待をかけて裏切られ続ける。

巨人に日本シリーズで負け続けた阪急ブレーブス、

ヤンキースにワールドシリーズで負け続けた、ブルックリン・ドジャースのように。

「来年まで待っていろ」というのが、ドジャースのキャッチフレーズだったが、稀勢の里はいつまでファンを待たせるのだろうか。

いや、稀勢の里が優勝すると、希望が実現して、ファンの楽しみが減るのは、困るのかもしれない。

ファンは、優勝だけでなく、横綱を希望している。






羽黒蛇

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2013年10月02日 | 相撲評論・現在の大相撲
白鵬が豪栄道に負けたのは、相手を甘くみたからか(羽黒蛇)






白鵬が豪栄道に敗れた相撲は、立合いが安易に見えた。

豪栄道の右手をたぐるように、左から、とったり。

これが決まらずに、あせってはたいたところで、豪栄道に先手を取られた。

とったりは、白鵬の得意技である。

相撲レファレンスで調べたところ、横綱に昇進してから、8番とったりで勝っている。

栃煌山 3回(今年の3月、7月、9月)

豪栄道 2回

鶴竜  1回

安美錦 1回

若の里 1回






勝負に勝つために技をかけると、それが決まらなかった時に、相手に逆襲させるというリスクがある。

技をかけないと、勝負に勝つことはできない。

技をかけずに、じっくり構えて、相手が自滅するという相撲をとるには、相当の実力差がないとできない。

白鵬と栃煌山の実力の差、白鵬と豪栄道の実力の差、いずれも白鵬が、リスクはあるが、とったりという技を繰り出して勝ちに行くと白鵬に思わせるくらいには、差が小さい。






表題の「白鵬が豪栄道に負けたのは、相手を甘くみたからか」には、相手に実力があると認めているから、ああいう相撲になったのだと感じた。






14日目の解説で、元琴錦の秀ノ山が、面白いことを言っていた。趣旨を要約すると、

1)白鵬が四つ相撲からの寄りで勝てなくなったのは、対戦相手が白鵬の得意の四つを封じているからである。それだけ向上している。

2)白鵬は得意の四つになれなくても、相手を上回る技術と地力で勝ち続けている。

3)「貴乃花最後の優勝は、13勝のうち10勝は寄り切りだった」というアナウンサーに対して秀ノ山は、貴乃花も若乃花も、相手十分の四つにわざとなり、四つ相撲で勝った。四つになったら不利と分かっていながら、得意の四つになれるので、四つになってしまう。例えば、魁皇は貴乃花が左を差させてくれるので、差してしまう。






白鵬は、右四つ得意だが、左四つでもとれる。

何故貴乃花と同じように、相手十分の四つにさせて組まないのか、と思ったところ、稀勢の里を相手に、立合いから、左四つ右上手、稀勢の里に上手を取らせなかった。











白鵬が優勝を続けるのは、まわりの力士が弱いからだという説は根強くある。

例えば、すもう瓦版「土俵」の斉藤編集長によると、「栃若時代から強豪横綱を見てきたことから言えば、白鵬は数字程は強い力士ではない」「他が弱すぎる最低レベルの時代か」






日馬富士・稀勢の里・鶴竜 ・琴奨菊

曙・   武蔵丸・ 魁皇・ 武双山

北勝海 ・大乃国 ・旭富士・琴風

輪島・若乃花(若三杉)・貴乃花・朝潮

柏戸  ・佐田の山・栃ノ海・豊山






白鵬・貴乃花・千代の富士・北の湖・大鵬と同時代の力士の名前を並べると、白鵬の対戦相手は見劣りする。

しかし、白鵬の相手は、2013年9月という特定の場所の相手から選んでいるのに対して、

4人の大横綱は、同時代の長い期間から選んでいるという差がある。






白鵬も長い時代から選べば、朝青龍と把瑠都が入ってくる。

柏鵬時代では、栃ノ海と豊山は、強かった時期は短かった。

今場所の白鵬の対戦相手と強さを比べるには、ある特定の場所(例えば貴乃花最後の優勝の平成13年5月)の対戦相手と比べるか、あるいは、ある年(6場所)の対戦相手を総合的に評価する必要がある。






白鵬が14勝1敗の今場所に、大鵬が、北の湖が、千代の富士が、貴乃花が何勝できるだとうか。

もちろん、どの場所の大鵬が、タイムスリップして今場所、白鵬の代わりに相撲をとるかによるのだが、4人の平均は14勝、全勝する横綱もいるかもしれないが、13勝以下となる横綱もでるだろう。

私には、現在の白鵬の対戦相手が、そんなに弱いとは思えないのである。






羽黒蛇