羽黒蛇、大相撲について語るブログ

相撲ファンから提供された記事・データも掲載。頂いたコメントは、記事欄に掲載させて頂くことがあります。

平成24年・2012年11月場所前(真石博之)

2012年10月31日 | 相撲評論、真石博之
11月場所の資料をお送りいたします

○9月場所は、白鵬、日馬富士、稀勢の里、高安、旭天鵬の5人が中日まで8連勝と、近来になく面白い展開となり、相撲内容にも見るべきものがあったと思います。なかでも、2日目の高安-若荒雄、千秋楽の舛ノ山-高安、日馬富士-白鵬が出色で、十両では千代の国が丹蔵を降した二丁投げが見事でした。幸い、高安-若荒雄は国技館で見ることができました。猛烈な突っ張り合いで、引いたり叩いたり一切せず、70発の突き合い。最後は、突き疲れた若荒雄が高安の上手投げに崩れるように落ちましたが、双方、力を出しきりました。昭和の天覧相撲での麒麟児-富士櫻を彷彿とさせる好勝負で、こういう相撲こそ見せて欲しいものです。



○いい相撲が多かったのに「敢闘賞 該当なし」はどうかしています。高安、旭天鵬、舛ノ山のいずれかを表彰すべきでした。また、このところ、横綱に勝てば殊勲賞、横綱が負けなければ「殊勲賞 該当なし」と自動的に決めているのも、おかしな話です。油断をした白鵬が勝手に負けただけなのに、何もしてないに等しい栃煌山の殊勲賞はないでしょう。執行部である理事会に対して物を言うべき公式機関の「運営審議会」が形骸化しきって協会の迷走を見過ごし、把瑠都-魁聖の差し違いに検査役は物言いをつけず、横審委員長は増長して喋りすぎる中、ベテラン相撲記者も入っている三賞選考委員会までが思考停止です。



○白鵬が、先場所に続いて千秋楽で日馬富士に敗れました。手に汗握る大相撲でしたが、内容的には先場所同様に完敗と言えるでしょう。立ち上がり、日馬富士のあたりをがっちりと受け止め、右四つになった瞬間には、白鵬有利と見えましたが、互いに巻きかえて左四つ。日馬富士が両廻しを取ったのに対して、白鵬は下手が取れず、上手は深く一枚廻し。寄ってはみたものの簡単に残され、頭を付けられ、徐々に不利な体勢に持ち込まれました。最後は、日馬富士の下手投げをケンケンしながら残したものの、ここまで。直後に、北の富士が「ピンとこない。白鵬が牙城を明け渡すとすればさみしい」と語りましたが、同じ思いでした。白鵬が「悔いはありません」と語った真意は奈辺にあるのか。奮起を期待したいものです。



○前回、「体力のハンディキャップは大きく、日馬富士は連続優勝できない」と予想しましたが、見事に外れ。

まことに恐れ入りました。秋場所前の測定で、欲しかった体重が5㌔増え、貴乃花をして「体格が変った。

背中が大きくなった」と言わしめました。また、「連続優勝したとしても、横綱にすべきではない。直近の

5場所の勝ち星が、8勝、11勝、11勝、8勝、8勝とあまりにお粗末なこと。多用する張り手が下品

で見苦しいことが反対の理由」とも書きました。これも、一人横綱に完勝しての連続全勝優勝でしたし、

横審や親方衆から「張り手厳禁」の声が上っているのですから、引き下がらざるを得ません。



○新横綱日馬富士を賞賛する声の多い中、では、日馬富士が白鵬のような強い横綱になるのかと言えば、答は「ノー」だと思います。9月場所、妙義龍、隠岐の海に攻め込まれ、土俵際での逆転技で凌いだように、軽量力士には一気に出られた時の弱さがあります。幕内の平均体重が120㌔に満たなかった時代でも、105㌔の初代若乃花は、一気の出足に泣かされていました。他にも心配はあります。同じ軽量横綱でも、千代の富士のような「攻め手の型」を未だに持っていないことです。綱を手にした最大の要因は、間違いなく抜群の精神力なのでしょうが、日に何度も口にする「全身全霊」が、そんなに続くものでしょうか。



○琴奨菊、把瑠都、琴欧洲の3大関が早々と休場した中で、8連勝して期待を持たせた稀勢の里でしたが、後半は2勝5敗。腰は高く、脇は甘く、上位に勝てません。ポパイの異名を取るほど肩の筋肉が盛り上っていた隆の里が興した鳴戸部屋は、筋トレマシーンを真っ先に導入したことで知られ、その系譜は力櫻、若の里、稀勢の里へと継がれます。その誰もが、下半身よりも上半身が立派で、そこに、この部屋の強さも弱さもあるように思います。秋巡業初日での左足の捻挫、九州場所が心配です。



○前回、お知らせした通り、9月場所の幕内の平均体重が、史上最高の161.3㌔になりました。これが、

どの程度の重さなのか。過去の横綱、巨漢力士、人気力士の体重を何人かご紹介します。

千代の山122㌔、力道山116㌔、鏡里161㌔、吉葉山143㌔、栃錦132㌔、若乃花105㌔、

大内山152㌔、松登154㌔、柏戸139㌔、大鵬153㌔。 (共同通信社『大相撲力士名鑑』より)



○15年前の平成9年にも、幕内の平均体重が160㌔直前の159.5㌔にまでなったことがありました。

ただ、その時は、桁はずれに重い小錦・曙・武蔵丸・大和のハワイ勢がいたからで、4人の平均は、何と

223㌔。他の外国人力士はというと旭鷲山一人で125㌔、日本勢35人の平均は153㌔でした。

今9月場所を見てみると、 ハワイ勢にかわって白人勢(ブルガリア・グルジア・ロシア・エストニア・ブラジル)が重く、

異端児的に軽い96㌔の隆の山(チェコ・九州場所は十両に陥落)を除いた7人の平均は178㌔です。モンゴル勢

は7人全員が揃って幕内の平均体重よりも軽く、7人の平均は白人勢より30㌔軽い148㌔。そして、

日本勢27人の平均はというと、モンゴル勢を15㌔上回る163㌔。15年前より10㌔増えています。



○一方、優勝争いの方はというと、平成15年に貴乃花が引退したあとは、モンゴル勢の独壇場です。平成

16年から今年9月場所までの52場所のうちの48場所を、朝青龍、白鵬、日馬富士、旭天鵬のモンゴ

ル勢が制しています。あとの4場所は、魁皇、栃東、琴欧洲、把瑠都の1回ずつの優勝です。そうです、

大相撲はモンゴルの国技になっているのです。 (別紙『外国人力士の優勝』)



○平均で15㌔も重い日本勢が、平均で15㌔も軽いモンゴル勢にまるで歯が立ちません。体重と相撲の強

さは関係ないことになります。では、強さの要因は何か。例えば、素質・DNA。白鵬や朝青龍が地元で一

番人気のあるスポーツ・モンゴル相撲でのエリート(かその子)であるのに対して、日本ではトップアスリ

ートは大相撲に入りません。もし、清原や松井が大相撲に入っていれば・・・・といったこと。あるいは、

ハングリー精神。豊かになった上に少子化で、家に男の子がいても一人だけの今の日本。東はモンゴルか

ら西はロシア・グルジア・ブルガリア・エストニアまでの貧しい旧共産圏に、ハングリー精神で勝てる筈

はないのです。ちなみに、幕内力士の最低年収は、モンゴル大統領の年俸を上回る2000万円です。



○前々回も触れた通り、体重の増えすぎが土俵の攻防を減らし相撲をつまらなくしています。激減したのが、うっちゃり、内掛け、吊り出し。うっちゃるにも、身体を後ろに反らせるバネと肥満とは両立せず、腹が邪魔で内掛けの脚は届かず、吊り出すには重すぎる。逆に激増したのが、送り出し、叩き込み、突落とし。これらは、増えすぎた体重を自ら制御できず、いったん体勢を崩すと立て直せないことの証明です。

柔道がつまらない競技に成り下った原因はルールの改悪にありますが、体重が増えすぎて大相撲がつまら

なくなった原因にも、これに似た背景があるとの説をご紹介します。ある個性派親方が「体重を競って増

やす原因は立ち合いの正常化にある」と指摘したのです。確かに、立合いの正常化で、最初の当りの強さ

が決定的に勝敗を分けているわけですから、耳を傾けるに値する指摘と思います。ご意見をお寄せ下さい。





平成24年10月30日  真石 博之

平成24年・2012年11月場所前(真石博之)

2012年10月31日 | 相撲評論、真石博之
11月場所の資料をお送りいたします

○9月場所は、白鵬、日馬富士、稀勢の里、高安、旭天鵬の5人が中日まで8連勝と、近来になく面白い展開となり、相撲内容にも見るべきものがあったと思います。なかでも、2日目の高安-若荒雄、千秋楽の舛ノ山-高安、日馬富士-白鵬が出色で、十両では千代の国が丹蔵を降した二丁投げが見事でした。幸い、高安-若荒雄は国技館で見ることができました。猛烈な突っ張り合いで、引いたり叩いたり一切せず、70発の突き合い。最後は、突き疲れた若荒雄が高安の上手投げに崩れるように落ちましたが、双方、力を出しきりました。昭和の天覧相撲での麒麟児-富士櫻を彷彿とさせる好勝負で、こういう相撲こそ見せて欲しいものです。



○いい相撲が多かったのに「敢闘賞 該当なし」はどうかしています。高安、旭天鵬、舛ノ山のいずれかを表彰すべきでした。また、このところ、横綱に勝てば殊勲賞、横綱が負けなければ「殊勲賞 該当なし」と自動的に決めているのも、おかしな話です。油断をした白鵬が勝手に負けただけなのに、何もしてないに等しい栃煌山の殊勲賞はないでしょう。執行部である理事会に対して物を言うべき公式機関の「運営審議会」が形骸化しきって協会の迷走を見過ごし、把瑠都-魁聖の差し違いに検査役は物言いをつけず、横審委員長は増長して喋りすぎる中、ベテラン相撲記者も入っている三賞選考委員会までが思考停止です。



○白鵬が、先場所に続いて千秋楽で日馬富士に敗れました。手に汗握る大相撲でしたが、内容的には先場所同様に完敗と言えるでしょう。立ち上がり、日馬富士のあたりをがっちりと受け止め、右四つになった瞬間には、白鵬有利と見えましたが、互いに巻きかえて左四つ。日馬富士が両廻しを取ったのに対して、白鵬は下手が取れず、上手は深く一枚廻し。寄ってはみたものの簡単に残され、頭を付けられ、徐々に不利な体勢に持ち込まれました。最後は、日馬富士の下手投げをケンケンしながら残したものの、ここまで。直後に、北の富士が「ピンとこない。白鵬が牙城を明け渡すとすればさみしい」と語りましたが、同じ思いでした。白鵬が「悔いはありません」と語った真意は奈辺にあるのか。奮起を期待したいものです。



○前回、「体力のハンディキャップは大きく、日馬富士は連続優勝できない」と予想しましたが、見事に外れ。

まことに恐れ入りました。秋場所前の測定で、欲しかった体重が5㌔増え、貴乃花をして「体格が変った。

背中が大きくなった」と言わしめました。また、「連続優勝したとしても、横綱にすべきではない。直近の

5場所の勝ち星が、8勝、11勝、11勝、8勝、8勝とあまりにお粗末なこと。多用する張り手が下品

で見苦しいことが反対の理由」とも書きました。これも、一人横綱に完勝しての連続全勝優勝でしたし、

横審や親方衆から「張り手厳禁」の声が上っているのですから、引き下がらざるを得ません。



○新横綱日馬富士を賞賛する声の多い中、では、日馬富士が白鵬のような強い横綱になるのかと言えば、答は「ノー」だと思います。9月場所、妙義龍、隠岐の海に攻め込まれ、土俵際での逆転技で凌いだように、軽量力士には一気に出られた時の弱さがあります。幕内の平均体重が120㌔に満たなかった時代でも、105㌔の初代若乃花は、一気の出足に泣かされていました。他にも心配はあります。同じ軽量横綱でも、千代の富士のような「攻め手の型」を未だに持っていないことです。綱を手にした最大の要因は、間違いなく抜群の精神力なのでしょうが、日に何度も口にする「全身全霊」が、そんなに続くものでしょうか。



○琴奨菊、把瑠都、琴欧洲の3大関が早々と休場した中で、8連勝して期待を持たせた稀勢の里でしたが、後半は2勝5敗。腰は高く、脇は甘く、上位に勝てません。ポパイの異名を取るほど肩の筋肉が盛り上っていた隆の里が興した鳴戸部屋は、筋トレマシーンを真っ先に導入したことで知られ、その系譜は力櫻、若の里、稀勢の里へと継がれます。その誰もが、下半身よりも上半身が立派で、そこに、この部屋の強さも弱さもあるように思います。秋巡業初日での左足の捻挫、九州場所が心配です。



○前回、お知らせした通り、9月場所の幕内の平均体重が、史上最高の161.3㌔になりました。これが、

どの程度の重さなのか。過去の横綱、巨漢力士、人気力士の体重を何人かご紹介します。

千代の山122㌔、力道山116㌔、鏡里161㌔、吉葉山143㌔、栃錦132㌔、若乃花105㌔、

大内山152㌔、松登154㌔、柏戸139㌔、大鵬153㌔。 (共同通信社『大相撲力士名鑑』より)



○15年前の平成9年にも、幕内の平均体重が160㌔直前の159.5㌔にまでなったことがありました。

ただ、その時は、桁はずれに重い小錦・曙・武蔵丸・大和のハワイ勢がいたからで、4人の平均は、何と

223㌔。他の外国人力士はというと旭鷲山一人で125㌔、日本勢35人の平均は153㌔でした。

今9月場所を見てみると、 ハワイ勢にかわって白人勢(ブルガリア・グルジア・ロシア・エストニア・ブラジル)が重く、

異端児的に軽い96㌔の隆の山(チェコ・九州場所は十両に陥落)を除いた7人の平均は178㌔です。モンゴル勢

は7人全員が揃って幕内の平均体重よりも軽く、7人の平均は白人勢より30㌔軽い148㌔。そして、

日本勢27人の平均はというと、モンゴル勢を15㌔上回る163㌔。15年前より10㌔増えています。



○一方、優勝争いの方はというと、平成15年に貴乃花が引退したあとは、モンゴル勢の独壇場です。平成

16年から今年9月場所までの52場所のうちの48場所を、朝青龍、白鵬、日馬富士、旭天鵬のモンゴ

ル勢が制しています。あとの4場所は、魁皇、栃東、琴欧洲、把瑠都の1回ずつの優勝です。そうです、

大相撲はモンゴルの国技になっているのです。 (別紙『外国人力士の優勝』)



○平均で15㌔も重い日本勢が、平均で15㌔も軽いモンゴル勢にまるで歯が立ちません。体重と相撲の強

さは関係ないことになります。では、強さの要因は何か。例えば、素質・DNA。白鵬や朝青龍が地元で一

番人気のあるスポーツ・モンゴル相撲でのエリート(かその子)であるのに対して、日本ではトップアスリ

ートは大相撲に入りません。もし、清原や松井が大相撲に入っていれば・・・・といったこと。あるいは、

ハングリー精神。豊かになった上に少子化で、家に男の子がいても一人だけの今の日本。東はモンゴルか

ら西はロシア・グルジア・ブルガリア・エストニアまでの貧しい旧共産圏に、ハングリー精神で勝てる筈

はないのです。ちなみに、幕内力士の最低年収は、モンゴル大統領の年俸を上回る2000万円です。



○前々回も触れた通り、体重の増えすぎが土俵の攻防を減らし相撲をつまらなくしています。激減したのが、うっちゃり、内掛け、吊り出し。うっちゃるにも、身体を後ろに反らせるバネと肥満とは両立せず、腹が邪魔で内掛けの脚は届かず、吊り出すには重すぎる。逆に激増したのが、送り出し、叩き込み、突落とし。これらは、増えすぎた体重を自ら制御できず、いったん体勢を崩すと立て直せないことの証明です。

柔道がつまらない競技に成り下った原因はルールの改悪にありますが、体重が増えすぎて大相撲がつまら

なくなった原因にも、これに似た背景があるとの説をご紹介します。ある個性派親方が「体重を競って増

やす原因は立ち合いの正常化にある」と指摘したのです。確かに、立合いの正常化で、最初の当りの強さ

が決定的に勝敗を分けているわけですから、耳を傾けるに値する指摘と思います。ご意見をお寄せ下さい。





平成24年10月30日  真石 博之