羽黒蛇、大相撲について語るブログ

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平成24年・2012年7月場所前(真石博之)

2012年06月30日 | 相撲評論、真石博之
7月場所の資料をお送りいたします



○平幕優勝は、横綱、大関、三役が皆そろって不甲斐ない成績の場所に起るものです。東正横綱から数えて16人目までの優勝は、上位同士の対戦を勝ち抜いての優勝ですから、正式名称である「幕内最高優勝」に相応しいと言えます。ところが、5月場所の旭天鵬の場合は、対戦した役力士は琴欧洲と豪栄道だけで、幕内42人の中で番付が42番目の宝富士、41番目の玉鷲とも対戦しているのですから、とても「幕内最高優勝」とは言えません。この優勝によって、最高齢関取・旭天鵬の実に好もしいお相撲さんぶりが広く知られたのは嬉しいことではありましたが、なんとも釈然としない5月場所でした。








○こうなった原因の第一は白鵬です。昨年5月の技量審査場所のあとに、「下り坂にさしかかるには若すぎますが(当時26歳)、一抹の不安を感じました」と書きましたが、結局、昨23年は5場所で9敗。前年と前々年の6場所で4敗という驚異的な戦績に比べて明らかな後退です。さらに今年は、3月場所までの2場所で5敗と数字はさらに悪くなっていました。そして5月場所の直前、北の湖理事長が「白鵬は力が落ちている。衰えを感じる」と漏らしたと朝日が報じました。確かに、横綱審議会の稽古総見でも、大関相手にゆっくりと間を取りながらの8勝4敗で、息もあがっていました。蓋を開けてみれば、初日に20場所ぶりの黒星。廻しを取らずに不用意に前に出たところを引き足の速い安美錦にうまく回られたのです。過去に何度かあった負け方です。そして、そのあとがよもやの展開。7日目に妙義龍の土俵を飛び出しながらの小手投げに敗れたのはよしとしても、続いて中日に豪栄道、9日目に豊ノ島と3連敗。この強い横綱が初めて見せた惨めな姿でした。その後の大関戦での強い相撲ぶりを見れば、初日に左手人差指を剥離骨折していたのが原因ではなく、精神の疲れが来ていたのでしょう。白鵬は自分のことを「腕力は十両、上半身は前頭、下半身は大関、全部合わせて横綱」と評していると紹介したことがありましたが、5月場所では脚を送れない下半身の不安が出ていました。この先、白鵬がズルズルと衰えてしまうのか、復活するのか。後継者未だ現れずの大相撲界にとって重大事です。大関6人のうちの4人は横綱より年上です。








○平幕優勝の原因の第二は稀勢の里です。11日目を終えた時点で、星二つの差をつけて優勝争いのトップにいたにも拘わらず、残りの4日間で3敗。18歳で入幕、早くから大関候補といわれながら、大関になったのは25歳。その間、「脇が甘い」「立ち合いの張り手で腰高になる」と言われ続け、今回も同じことの繰り返し。がっかりしました。言いたくはありませんが、結局、スポーツIQが低いのでしょうか。



(スポーツIQとは、学業の知的能力とは相関のない、特定の競技に関わる知的能力。勝手な造語です。)








○ところで千秋楽、琴欧洲の欠場で優勝争いトップの栃煌山が不戦勝となりました。「不戦勝力士がそのまま優勝」の最悪の事態は避けられたものの、これにもがっかりさせられました。八角理事(北勝海)は「這ってでも出てほしかった」と語りましたが、これは大間違い。相撲がとれない力士を土俵にあげるのはファ



ンにも相手にも失礼です。また、「前日のうちに休場を申し出れば、取組を作り直すことができた」というのも大間違い。千秋楽の幕内十両35番の全取組は14日目の幕内前半戦に作っているのですから、たかだか数番の作り直しは当日できるはずです。何事も前例通りという頭の固さは稽古の賜物でしょうか。








○5月場所は、恒例の「初日満員御礼」が出ず、2日目は売れ残りが6080枚(11,000人収容の55%)で史上最悪を記録し、おしなべて不入りでした。客寄せの手立てがいくらもあることは、大阪場所で貴乃花親方が証明しているのです。それが、なぜ東京で出来ないのでしょうか。責めを負うべきは事業部長の九重(千代の富士)、玉ノ井同副部長(栃東)、総合企画部長の雷(春日富士)あたりでしょうか。 <続く>



○前回の便りでお伝えした通り、5月場所での幕内の平均体重が、史上もっとも重たかった平成9年1月場所と同じ159.5kgになりました。これはまことに由々しき事態です。



ひと昔前の拙著のテーマ『「うっちゃり」はなぜ消えたのか』の回答として、「体重が増えすぎ、今や、うっちゃりは危険な技であり、やろうにも身体を後ろに反らせるバネは肥満とは両立しない」と書きました。



内容を少々紹介させていただけば、昭和30年から平成12年までの45年間で、幕内の平均体重は43kgも増えた。それと同時に、激減したのが、うっちゃり、内掛け、吊り出し。腹が邪魔で内掛けの脚は届かず、吊るには重すぎる。逆に激増したのが、送り出し、叩き込み、突き落とし。これは、増えすぎた体重を自ら制御できず、いったん体勢を崩すと立て直せないことの証明。その結果、土俵上での攻防は昔に比べて極端に短くなり、手に汗を握る前に勝負がついてしまう。このように、太り過ぎは「相撲内容の充実」を阻害している。また、太り過ぎによって、力士に期待される凛々しさは影をひそめ、時には醜ささえ漂う。身体にサポーターをつけていない関取が珍しいほどまでに怪我が増えた原因も太り過ぎにある。



そして、太り過ぎ追放のために、「肥満度指数(BMI)50以上は出場停止」を提案しました。



BMI(body mass index)= 体重(kg) ÷身長(m) ÷身長(m)  一般人はBMI25超が肥満








○さて、幕内の平均体重が史上最高の159.5kgを記録した平成9年1月場所の幕内力士を日本・ハワイ・モンゴルの出身国別にまとめたのが別紙『平成9年1月場所 幕内40力士の体重・身長・肥満度』です。



一目瞭然です。体重が桁はずれの200kg以上の小錦、曙、武蔵丸のハワイ勢が、肥満度(BMI)でも、他を圧していました。武蔵丸に振り回されることが多かった貴乃花が、「160kgを目指す」と宣言して、それを実現したように、重い者が強く、皆が体重を増やすことに励んだ「体重相撲の時代」です。








○時代は移り、一人横綱が武蔵丸から朝青龍になったことに象徴されるように、「体重相撲の時代」は去り、



スピードと技が戻りました。8年半後の平成17年9月場所には、幕内の平均体重は11kg以上も減って



148.3kgにまで落ちたのです。ところが、平成20年から、再び増加の道をたどり、先場所の幕内平均は159.5kgに戻ってしまったのです。再び、太り過ぎの時代です。犯人は誰でしょうか。








○出身地域別にまとめた別紙『平成24年5月場所 幕内42力士の体重・身長・肥満度』をご覧ください。



幕内42人のグループ分けは、「日本(27人)」、「モンゴル(8人)」、「欧州(ブラジルを含む7人)」です。



平均身長が193cmで、「日本」を10cm近く上回る「欧州」が、平均体重でも173kgと他を圧しています。白人は大きいのです。「ハワイ去り 欧州来る」です。しかし、太り過ぎの犯人ではありません。








○グループごとの平均値(頁の下部)をご覧ください。肥満度を示すBMIで、なんと「日本」が「欧州」を凌いでトップなのです。肥満の中心はハワイから日本に移っているのです。BMIで、「欧州」はトップの臥牙丸から41位の琴欧洲まで万遍なく分布し、「モンゴル」は横綱と2大関が最下位から8位以内にいるなど全員が平均値以下でスリムなのに対し、「日本」は上位15名のうちの11名を占めています。








○私の昔の提案「BMI・50以上は出場停止」に該当する力士は、上から数えて10人。臥牙丸以外はすべて日本人で、天鎧鵬、若荒雄、雅山、琴奨菊、富士東、佐田の富士、豊響、千代大龍、豪風の面々です。



この中で、琴奨菊と豊響の二人を除く7人は、押しては叩く、つまらない相撲が多く、相撲の興を削いでいる元凶でもあります。見てくれも、西洋の女性の多くが相撲を嫌う理由のuglyそのもの。凛々しくないのです。再び、「肥満度指数(BMI)50以上は出場停止」を提案いたします。



平成24年6月26日   真石 博之

<訂正とお詫び> 5月場所7日目に白鵬が敗れた相手を妙義龍と記しましたが正しくは豊響です。