ガイド日誌 - 北海道美瑛町「ガイドの山小屋」

北海道美瑛町美馬牛から、美瑛の四季、自転車、北国の生活
私自身の長距離自転車旅
冬は山岳ガイドの現場をお伝えします。

北へ行く道 - MAIN NORTH RD -

2014年11月05日 | 自転車の旅 海外

北へ向かう道は南太平洋を右側に眺めながらひたすら走り続ける。
この道は、国道1号線。土地の人からは、北へ行く道。MAIN NORTH RD、または略してメインロードと呼ばれている。

いかにも開拓魂な感じがグッとくる名だ。

いい。
こういう感じ、すごくいい。

かつて開拓民が、幌馬車仕立てて通った道だ。
パブから、次のパブへ、
その時代の名残りを色濃く残したパブが、今でも田舎の村ではごく当たり前に営業していたりする。

さて、チャリダーは、その道をひたすら北へ走り続ける。
単純で、ひたすら長い。

こうなってくると風向き次第でその日の運が決まってくる。
10月下旬から11月にかけては南島はまさに春から初夏へと季節が変わっていく最中だけに、暖かい北風が吹きやすい。
それは北に向かうチャリダーにとっては悪夢の向かい風を意味するけれど、そうそう北風ばかり吹くわけもないので天気予報を注意深くチェックしながら運を切り拓いていくのだ。

カイコウラまでは概ね向かい風だった。


ところで、ニュージーランド南島は写真のような形をしている。
ボールペンの先あたりがスタートの町クライストチャーチ。南島を日本の本州に例えると、仙台がクライストチャーチで、僕は太平洋に沿って北上していて、カイコウラは気仙沼あたりになる。
カイコウラも気仙沼も魚の美味い町だ。

ちなみにカイコウラとは、アイヌ語で「海老を食う処」という意味だという。
あ、失礼、先住民族マオリの言葉だ。
両者は妙に魂の通づるところがあるような気がする。


だから僕もお言葉にあやかり海老を食う。
カイコウラの南20kmほどのところにあるオアロという漁村の民宿に4泊ほど逗留して海老を食い、本をたくさん読んだ。


民宿の目の前は海岸で、目の前でオットセイ(fur seal)が日向ぼっこをしている。
遥か沖に目をこらすと、イルカが泳いでいるのだ。

ここの奥さんは日本人で、僕が泊まると本をたくさん差し入れて下さり、何処からともなく伊勢エビを仕入れてきてくれる。
僕は海の見える部屋で朝から夕方まで本を読み、ときどき波打ち際を散歩し、腹が減ったら海老を部屋の台所で料理して、丸ごと食う。
ここでは海老を喰わなければマオリの神様に申し訳ないではないか。というわけなので、これでいいのだ。


伊勢エビとは微妙に種類が違うらしいけど、何がどう違うのかさっぱりわからない。ここではクレイと呼ばれている。

もちろん美味しい。繊細な甘みがある。
いつも思うことだけど、北海道に置いてきた僕の奥さんに食べさせてあげたい。
僕の奥さんは贅沢をしない人で、贅沢してもせいぜい回転寿司くらい。洋服はイオンで買い、宝飾品ブランド品を持たず、カフェのランチで大喜びする慎ましい女性だ。

いつかきっと連れてきてやろう。自転車以外で。
娘たちは放っておいていい。来たければそのうち自分で来るだろう。


みなさん、漁師さんを見かけたら、こう叫ぼう。
「クレイ売って、くれい!」

ありがとうございました。




カイコウラを出発してもメイン・ノースロードはまだまだ海岸をひたすら走り続ける。

カイコウラのオアロ集落から塩田のあるワード村まで100km以上、途中にはカイコウラの町のほかには宿泊できるようなところはなく、あってもキャンプグラウンド(キャンプ簡易施設)程度。ひたすら向かい風と闘い、あえぎあえぎ105kmを漕ぎきってワード村に辿り着いた。
80kmを越えたあたりからはフラフラで、愚痴る元気も残っていなかった。


変わった羊だなと思ったらアルパカ

このあたりから風向きが変わり出した。
季節外れの寒気の流入で風向きが南寄りになったのだ。ここは南半球なので南極海で冷やされた南風はとびきり冷たくて南島の脊梁山脈に雪を降らせる。
平野では雪といわないまでも小雨が降りやすくなるので時折、レインウェアの世話になった。

ところでチャリダーの昼飯休憩というのはどんなものだろうか。
僕の場合は、ちょうど良い公園や海岸があればそこにするけれど、そうそうぴったりな場所があるわけではないので、写真のように道端に自転車を引っ掛けて休んだりする。


このときは牧場のゲートに自転車を立て掛けて草にどかっと座って白いままの食パンと水、という昼飯だった。
まあ、そんなもの。


ブレナムまでの道は、南島を本州に例えるならば三陸沿岸部にあたり、ブレナムは八戸にあたる。
ブレナムは八戸と同じようにこの辺りでは一番大きな町で北島に向かうフェリーのピクトン港にも近い。バスや鉄道の分岐点でもあり交通の要衝になっている。
久しぶりにスーパーマーケットに立ち寄って嬉しくて仕方がない。
ブレナムでついにメイン・ノースロードに別れを告げた。ずっと北を目指していた僕は、ここから西へと進路を変える。
そして、僕はいま青森(ネルソン)の少し手前にいる。

前述の地図でいうとマジックペンの先あたり、ハブロックという漁村で、ここはフィヨルドの入り江でのムール貝や牡蠣の養殖が盛んなことで有名なのだ。

ムール貝!


早速、部屋を手配した。まだ昼なので空き部屋は簡単に見つかった。


よしよしキッチンもあるぞ。


ムール貝を買ってきた。
鍋いっぱい、これだけで400円くらい。


蒸しあがった。


お腹いっぱい食うう!

旅は、まだまだ続くのだ。