沖縄本島 フクギ並木
初めて沖縄旅行へ旅立った、その入口は、
綺麗な海と、普段暮らす土地とはまったく違う暑い気候、
要するに『南国』という雰囲気に惹かれての事だったように思う。
二度目の旅あたりから、人々の暮らしであるとか
独特の文化や工芸品などに目が行くようになり
なかでも、製作現場を訪ねやすく 作る過程が断片的にでも見やすい
そして価格的にも入手しやすいため選ぶ楽しさがある焼物に
どんどん興味が深まっていった気がします。
読谷村 登り窯
沖縄の焼物は「やちむん」と呼ばれる。
ざっくりとした、それでいて柔らかな土の風合いと
勢いがあって伸びやかに描かれる大胆な絵付け、
日常使いにピッタリな丈夫さにすっかり惚れこみ
何度もやちむんの現場に足を運ぶようになりました。
やちむんの焼かれる登り窯を覗いたり
立ち働く人々を遠巻きに眺めたり
それぞれの窯元で直販される器を選んだり
気が付けば、旅行時間の大半を焼物の里で過ごすようになりました。
ある時ふと立ち寄った、ちょっと奥まった
林に囲まれた小さな工房『横田屋窯』には
いつもあたたかく迎えてくれる知花夫妻の明るく優しい人柄と、
奇をてらわない おおらかな器に魅力を感じて
毎回、どの窯よりも長い時間滞在しているように思う。
沖縄県読谷村
『横田屋(ゆくたや)窯』 知花 實作
横田屋窯の工房と住居、専用の登り窯とは
そのほとんどを自力で作った物だと聞きました。
数人の作家が共有する登り窯で焼かれる事の多いやちむん。
専用の窯を持とうと思ったのは、自分のペースでゆっくりと
作品に向き合い作陶したいからだと言います。
また、ほとんどの作家が土練機で土を練りますが
知花さんの器作りは、何日もかけて足で踏んで練る。
基本的な器の成形はご主人=知花 實さんが行い
絵付けは主に奥様が担当。
奥様の仕事は、絵付けのほかにも来客や販売の対応や発送の手配~
お二人とも忙しいはずなのに、いつ伺っても温かな笑顔で
「はいはい、お茶を淹れますからゆんたくしましょうね~」
と迎えてくれる。
∴ゆんたく=のんびり楽しくおしゃべりすること
林の中に自分で作り上げた工房で
こうして時に旅人やご近所さんとゆんたくしながら
昔ながらの工程にこだわり作陶する知花さんご夫妻の器作りは
一言でいうとスローなペースで、
「一年で二度くらいかなー」という窯出しは
今までなかなか仕入れたいタイミングと合いませんでした。
今回やっと、夏に向けての嬉しい時期に送ってもらえて
こうしてみなさんにご紹介することが出来ました。
本当に嬉しく思います。
出来る限り昔の人と同じような作り方で
この上なく丁寧に、心を込めて作られる知花さんの器。
それはきっと 先人達に敬意をはらい、
また、やちむんの魂や文化を守り伝えていきたいという
知花さんの強い意志であり願望なのでしょう。
そんな魂のこもったやちむんが
海を越えて 遥か北国へ。
ぜひたくさん触って、沖縄の風を感じてみて欲しいと思います。