今回、旅の行き先を九州に決めたのは
ここ数年、器=焼物に心惹かれていて。
それも、所有したいだとか集めたいとかいうことではなく
焼物で生計を立てる集落の暮らしに触れたり、
作陶している作業風景を眺めたり、
その風景の一部になって生活しながら器作りの現場に
居てみたい気持ちが強くありまして。。。
10年位前に縁があって手元にやってきた一枚の大皿、
その力強さや美しさにとても心惹かれ
それを作っている場所が九州・大分県にあると
そこへ行ってみたいなーと夢のように思っていた土地が
大分県日田市源栄町皿山=小鹿田焼のふるさとでした。
ついにそこへ向かう時がやってきた!
まずは、パンフレットなどからの抜粋で
ありきたりですが、小鹿田(おんた)について少々。
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小鹿田焼は江戸時代中期に開窯された李朝系登り窯です。
開窯以来300年余りにわたり、当時の技法を受け継ぎ
窯の火を守ってきました。
昭和6年に民芸運動指導者であった柳宗悦氏が来山し
その伝統技法と素朴な作調を賞揚、その後英国より
バーナード・リーチ氏が逗留し、小鹿田で作陶しながら
影響し合った経緯もあります。
決して外部から弟子を取らず世襲制で伝統を守る小鹿田の焼物。
今も10軒の窯元がそれぞれ家族で作陶にあたっています。
現代化の進む陶芸の世界の中で、近代化合理化を避け
小鹿田ならではの作風、昔ながらの技法と暮らしとを守り続けた結果
平成7年に国の重要無形文化財保持団体として指定を受け
今も集落の谷川沿いで、日々じっくりと手仕事に取り組んでいます。
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焼物の里というのは、概ね山中など交通の便が悪い場所にあり
今回はレンタカーを借り、ひたすら車で移動する旅でした。
小鹿田の集落も、期待を裏切らず
静かな山中にひっそり静かに佇んでいました。
途中、車が行き交うことも出来ない細道を緩々登り
何度か小さい山を抜け、やや心細くなった頃、小鹿田に到着。
ひときわ濃い緑の匂いと、陶芸の里独特の土の香り、
ここに至るまでの山道と、携帯の示す圏外表示に
はるばるやってきたんだなぁ という実感が高まります。
ここで特徴的なのは、川の水を引き込んでその水力で臼を打ち付ける
唐臼(からうす)と呼ばれる装置による土作りにあります。
唐臼のみで陶土を作るのは世界中で小鹿田のみとのこと。
この唐臼はそれぞれの窯元にあり、元旦を除く364日土を搗き続けています。
川の水と大きな松材で作られる原始的な唐臼
美しく整頓された一軒の窯元・作業場風景
村に点在する登り窯のひとつ
静かな山中に響き合う ギ~ゴトン、ガコッ、ギギ~ィ・・・
という唐臼の音を聞きながら一晩過ごしてみたい気持ちから
集落の中に一軒だけある宿に泊まることにしました。
そば茶屋という名の食堂空間と、その奥に客室を擁する宿へ。
集落一軒だけの居酒屋でもあるこちらには、
私が到着した頃、すでに酒盛りをしているおじいちゃん二人。
「北海道の人 いらっしゃーい!」と明るく迎えてくれた二人は
陶工さんで、現役陶工の長老にあたる方でもありました。
お話が面白いので、ついつい引き込まれ
同じテーブルへ夕食を運んでもらい一緒に会食することに。
小鹿田の歴史や家族で作る器の話、そして
近代化を拒み守り続けたいこの暮らしこそが小鹿田の魂である・・・
など、一晩かけてこの長老から聞かせてもらったお話は
今回の小鹿田滞在で一番の宝かもしれません。
とても楽しい夜でした。ありがとう。
宿で出されるお食事も、晩ご飯・朝ご飯ともに惜しげもなく
小鹿田の器がふんだんに使われ、もうそれだけで大興奮。
山菜や魚・肉など食べきれないほど盛りだくさん。
こんなに小鹿田焼がズラリと並んだ食卓は、
きっとこの先も見ることはないでしょう。
宿の方にもとても良くして頂きました。
本当にありがとうございます。
ずらり並んだ小鹿田の器@朝食風景
翌朝、昨晩お話を聞かせてくれたおじいちゃんの居る窯元へ。
快く作業場へ招き入れてくださり、作業を見学させていただきました。
時々会話を交わしながら、唐臼で搗かれたきめ細やかな陶土を
みるみる器に変えていきます。
ちょっと見ている間にもどんどん器が成形されていく。
自然光の射す作業場で、作陶に励むおじいちゃんの姿は
当分胸に焼き付いて離れることは無いでしょう。
10年間慕い想い続けた小鹿田焼が、良い人々と良い出会いがあって
ますます好きになりました。
感謝と愛を込めて買い付けてきた器たちが
こうして森音に並びました。
眺めていると色々な想い出が蘇ってきてニヤニヤしてしまいます。
見て美しく、触って優しい小鹿田の器、
買う買わないは別にしても多くの方に触れて欲しいと思います。
ぜひ色々揃っているうちに触りに来てくださいね。
ついつい長文になってしまいますね。
今日も読んでいただきありがとうございました。