計画されたのに、列車が走らなかった「幻の鉄道」を地域振興の起爆剤にしようと、遺構の活用などに取り組む関係者が4日、五條市で「全国未成線サミット」を開く。「観光資源、地元の宝として次世代に引き継いでいければ」との思いを込める。

 未成線は工事が中止になったり、計画だけで着工されなかったりした路線のこと。トンネルや橋、路線跡が残され、そんな遺構を活用したイベントが開かれるところもある。

 五條市では、和歌山県新宮市までを結ぶ約120キロの「五新線」が計画されたが、戦争で工事が中断。戦後に再開されたが、1980年代に中止された。完成したうちの五條市西吉野町城戸(じょうど)までの9・2キロは、2014年9月まで路線バスが運行された。

 ログイン前の続き完成した区間のアーチ橋や、その先のトンネルは時代に取り残されたかのように今もそのままの姿でたたずむ。奈良市の映画作家、河瀬直美さんも「萌(もえ)の朱雀」でロケに使った。

 有志らは13年、有効活用を目指して組織を立ち上げ、15年に「五新線再生推進会議」としてNPO法人化。毎年、路線跡に約1キロの木製のミニレールを敷いて模型列車を走らせるイベントを開く。

 同会議などは各地の未成線と連携して盛り上げようと、サミットを企画。島根県浜田市の広浜(こうひん)鉄道今福線、静岡県浜松市の佐久間線、山口県岩国市の岩日北線、福岡県赤村の油須原(ゆすばる)線、宮崎県高千穂町の高千穂線の関係者が呼びかけに応えた。

 島根の今福線は旧国鉄の赤字などで工事が中止された。トンネルやアーチ橋などの遺構があり、土木建設などの技術者でつくる島根県技術士会の今福線研究分科会が観光用マップを作成。トンネルなどを歩き、温泉に入る旅行会社の日帰り旅行や、地元公民館主催のウォーキングもある。

 浜田市観光交流課の岡橋正人さん(47)は「期待が大きかっただけに、地元の落胆は大きかった。でも負の遺産としてではなく、地元活性化の希望のシンボルとして広く発信したい」と意気込む。

 五新線再生推進会議の理事長、新名惇彦・奈良先端科学技術大学院大特任教授は「トロッコ列車を走らせるなど観光資源として活用している例もあり、知恵を借りられれば。ネットワークをつくり、サミットを続けたい」と話す。

 サミットは午後1時半から市西吉野コミュニティセンターで。各路線の関係者や鉄道研究家、国土交通省の専門官らのパネル討論がある。翌5日に木製ミニレールのイベントもある。問い合わせは五條市西吉野支所地域振興課(0747・33・0301)へ。(