車のタイヤのパンクが増えている。日本自動車連盟(JAF)のパンク救援は昨年度は36万件余りと過去最多を記録した。JAFは、セルフ式ガソリンスタンド(GS)の増加で空気圧点検がおろそかになっているとみて、注意を呼びかけている。

 群馬県昭和村の関越自動車道で昨年9月13日夜、パンクで止まっていた乗用車に大型トラックが追突。乗用車の会社員男性(20)と無職女性(20)が死亡し、同乗の2人も負傷した。

 県警によると、4人は東京ディズニーリゾート千葉県)から帰る途中で、ハザードランプを点滅させて助けを待っていた。県警高速隊の登坂幸永副隊長は「パンクでも死亡事故につながり、高速道路上は特に危険だ」と話す。

 JAF(会員数1855万人)によると、昨年度のパンクによる救援は36万1942件。活動を始めた1963年度以来最も多く、10年前と比べ5万3506件(約17%)増えた。

 車の性能向上で救援総数は10年間で2割減っており、全体に占めるパンクの割合は10・3%から15・5%に上昇。発生場所別では一般道が92・3%で、高速道路は7・7%、月別では夏休みで遠出する機会が増える8月が最も多く、3万6494件と全体の約1割を占める。

 JAFはパンクの増加要因として、セルフ式GSの増加をあげる。全国のセルフ式GSは今年3月末時点で9728店と全GSの3割を占め、年々増えている。JAFの広報担当者は「身近な車の点検所であるGSで専門的な知識を持った店員との接触が減り、タイヤの点検回数も減る。その結果、空気圧不足の車が増え、パンクが増える」と話す。

 ログイン前の続き日本自動車タイヤ協会が毎年4月に全国6~7の高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で希望者にするタイヤ点検で、空気圧不足だった乗用車の割合は13年が19・6%、14年が20・5%、15年が28・1%だった。

 JAFの会員調査では、タイヤメーカーが勧める毎月の空気圧点検をしているのは14%だった。工学院大の中島幸雄教授(タイヤ工学)は「それぞれのデータを見ると、セルフ式GSの増加がパンク増加の一因と言える」と話す。

■空気圧点検、タイヤ4本で約3分

 「タイヤの空気が減っている車や点検不足が目立つ」。東京都墨田区東京スカイツリー近くのGS「百瀬商店」社長の百瀬純史さん(48)は言う。

 最近、1千円分だけ給油し、タイヤの空気圧チェックを頼む客がいる。普段はセルフ式GSを使うが、空気圧の減りが心配になり、自身でチェックできないため来店するという。

 東京都世田谷区のセルフ式GS「シンエネ八幡山」。日中、12ある給油レーンに次々と乗用車やトラックが停車する。店員2人は誘導に追われるが、毎月、空気圧をチェックする近くの自営業男性(62)は「自分から店員に声を掛ければ、空気圧を測る機器を貸してくれる。使い方を覚えれば操作も簡単」と話す。

 店内には空気圧をチェックする機器がある。まずは運転席のドア付近に貼られたシールに表示された指定空気圧を機器に入力。タイヤのエアバルブに機器のホースの先を押し当てると自動的に指定空気圧に調整される。タイヤ4本の点検で2~3分程度だ。

 副店長の木村文彦さん(54)は「空気圧に不安があれば気軽に声を掛けて欲しい。もちろん無料です」と話す。(