宝物。

ひとり言など

相関…

2014-04-30 09:05:51 | 

平屋の中で目覚め、手を伸ばし少し木の戸を引くと、

外はもう明るくなっていた。

あたり一面霧に覆われていて、その霧はすべての生き物に

生きる力を与えていた…

花びらの中心にも、長い葉っぱの先にも雫がついて、

それらをしっとりと濡らしていた。

やがてそれらに朝日が差し込み幻想的な風景が広がった…

 

昨日の出来事を思い出していると男性が目を覚ました。

わたしはすぐに、「あなたは誰ですか…」

と聞いた。

 

しかし、その男性は記憶を失っていて

何も思い出すことが出来ないようだった。

自分が誰で、何をしに来たのか…そして昨日の出来事も

全て忘れていたのだった。

 

それから数日たった…

その間の記憶も曖昧で、ときどきうずくまって痛みに耐えている姿を見た。

しかし、その時以外は活き活きとして少年のように笑い

全身汗だくになってたくましく働いてくれた。

二人とも本当に些細な事でたくさん笑った…

そうしているうちに、その男性の素性などどうでもよくなっていった。


回帰…

2014-04-30 06:26:41 | 

…どうやら、二人の命は奪われなかったようだ。

わたしは、水の底から男性を抱いたまま水面に上がった。

満月がキラキラと輝き水面にも写っていた。

 

元の姿に戻るまで後数時間…

人魚の姿のまま男性を抱き体が温まるのを待った。

 

痛みが体中を支配する。

金色の髪の毛は全て抜け落ち水に溶け、黒髪に変わる。

抜けるような皮膚の色も元通りになった…

そして濡れた体は、少しずつ服に覆われていった。

わたしは、元の自分に戻った。

 

やがて男性は目を覚まし、二人で平屋の中に入り

その夜は、そのまま眠ったのだった。

 


委ねる…

2014-04-30 05:50:50 | 

その男性はわたしの胸の中で子どものように

眠っていた。

はじめは、弱々しかった表情が

しばらくすると、安心したようなそれに変わっていった…

 

目の前に現れた時は、驚いたが

わたしは直ぐに平静を保ち

男性を抱いたまま数時間水の底で過ごした。

それをしないと、わたしの命が更新されないからだ。

 

”もう少し目を覚まさないで…”

 

そう心のなかで呟きながら静かに水の音を聞いた。

命を助けるか、奪うかは水が決める。

わたしの命も男性の命も水に委ねられた。


幻想…

2014-04-29 22:43:14 | 

女性は、それから何日かするといなくなった…

わたしは、来る日も来る日も探した。

女性に何があったのか、解らなかった。

やがてわたしは諦め、はじめから一人だと思うことにした。

 

水に写った自分の顔…

まじまじと見たのは何日ぶりだろうか…

髭は髪の毛とつながり、猛獣のようだ。

なんだか可笑しくなった。

笑っていたけれど同時に頬を雫が伝っていった…

 

雫はプールの水の中にポトンと落ちた…

すると、月を背にした女性の姿が頭のなかに浮かんだ。

胸が締め付けられ、心がざわめいた…

やわらかな感触…?

人魚…?

考えようとすると、頭が割れるように痛くなった。

うずくまりわたしはそのまま気を失ってしまった。