平屋の中で目覚め、手を伸ばし少し木の戸を引くと、
外はもう明るくなっていた。
あたり一面霧に覆われていて、その霧はすべての生き物に
生きる力を与えていた…
花びらの中心にも、長い葉っぱの先にも雫がついて、
それらをしっとりと濡らしていた。
やがてそれらに朝日が差し込み幻想的な風景が広がった…
昨日の出来事を思い出していると男性が目を覚ました。
わたしはすぐに、「あなたは誰ですか…」
と聞いた。
しかし、その男性は記憶を失っていて
何も思い出すことが出来ないようだった。
自分が誰で、何をしに来たのか…そして昨日の出来事も
全て忘れていたのだった。
それから数日たった…
その間の記憶も曖昧で、ときどきうずくまって痛みに耐えている姿を見た。
しかし、その時以外は活き活きとして少年のように笑い
全身汗だくになってたくましく働いてくれた。
二人とも本当に些細な事でたくさん笑った…
そうしているうちに、その男性の素性などどうでもよくなっていった。