Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 ジョージの涙(ぼくは日本人だ)第3回 新連載

2011-06-08 06:24:07 | 日記
 昭和三十八年三月ジョージがいよいよ日本を離れる時、みんなでお別れ会を開いた。
「わしは日本人じゃけえ、必ず日本にこの広島県呉市に帰っている」
 こう言うと大粒の涙をこぼした。
同級生ももらい泣きをした。
「お母ちゃんの玉子焼きの味は忘れんけえ」
 ジョージのこの言葉に母親の花江は泣き崩れた。
「ごめんねジョージ」
 こういうとテーブルに伏せて泣き伏したのである。
ジョージも涙をこぼしながら、
「これで終わりじゃないけえ。必ず日本に帰ってくる」
お別れの会は涙、涙の会となった。
 三月も終わろうとするある週末呉駅から同級生に見送られてジョージは養父母と共にアメリカへの旅に出た。
 混血児ジョージはアメリカで暮らす事になったのである。
この時代の混血児は殆どがジョージのようにアメリカ人と養子縁組をして引き取られて行くケースが多かった。
広島のいや日本の知らざれる歴史である。