ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE)

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ブランド価値向上する高めのハードル - サントリーの数式<2>

2008-03-24 08:04:05 | 企業戦略
 NIKKEI NET BIZ+PLUSコラムコーナーの中島孝志氏の3月12日付記事を取り上げる。タイトルは、「ブランド価値向上する高めのハードル - サントリーの数式<2>」である。
 記事タイトルにリンクを張っておくので、興味のある方はチェックしてみるとよい。中島孝志氏は、企業戦略等を数式化して、算術的に表現する記事を多く書いており、比較的分かりやすく面白い。

 今回は、サントリーが今年7月に受付を再開する「オーナーズカスク」の販売戦略に関するものである。いわゆる、樽ごと買う、ウイスキーファンなら垂涎の商品を取り上げている。
 中島氏は、「オーナーズカスク」に関して、「限定!」「ビンテージ」という2つのキーワードが決め手であると指摘している。

 つまり、「商品そのものが世界にひとつといった、ユニークであるということ」、「年代物であること」という特異性を持つ商品がどのように売れるか、ということに係わる「販売の考え方」ということになる。
 ある意味で、美術品等の競売を通じた取引等と類似すると指摘できるのかもしれない。。。
 記事を引用しておく。

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 記事引用
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 ウイスキーはもともと嗜好品です。ほかの人が飲んでいるものとはできたら違う、自分だけが知っているお酒であれば、より楽しみは広がります。

 その意味でオーナーズカスクは、究極のウイスキーです。サントリーの山崎(京都府)、白州(山梨県)の両蒸留所だけで生産されるシングルモルト、しかも複数の樽をブレンドするのではない1つの樽だけで寝かせたシングルカスク(樽)と呼ぶ希少性の高い酒だけを対象にします。

 中身は同じですが、樽1つ1つの状態の違いが、中身のウイスキーを少しずつ違う風味に変えていきます。色、香り、味わい…そうしたウイスキーを構成する要素1つ1つが、樽に長年寝かせているうちに蓄積されていきます。

 そしてその樽には1本1本認定証が発行されます。世界に1つしかない認定番号入りなのがまた、ウイスキーファンには応えられません。

 …(中略)…

 もちろん、味が最高にいいのはいうまでもありませんが、ここまで私を惹きつけるのは「限定!」「ビンテージ」という2つのキーワードが決め手です。今後、このキーワードはどのビジネスでもアピールポイントが大きいと思いますよ。

 同様に、サントリーのオーナーズカスクも相当高いハードルを消費者に求めます。まず、両蒸留所に行かないと買えないのです。もちろんネットや電話注文はできません。

 …(中略)…

 しかし、そうした高いハードルを乗り越えたファンだからこそ味わえる、究極の酒なのです。

 蒸留所では、自分のお気に入りの樽を見つけられるまで何度もテイスティングできます。しかも、ウイスキー作りには欠かせないブレンダーというプロの指導に従って何種類もの酒を試飲できます。

 …(中略)…

 このようにサントリーは消費者に強気の高いハードルをつきつけます。記憶に新しいかと思いますが、2005年に発売、すぐに売り切れた1本100万円、50年熟成した「山崎50年」もかなり高いハードルといえますよね。

 しかし、なぜこんな敷居の高いユーザー対策が打ち出せるのでしょうか? 

 ウイスキー市場は、一部シングルモルトの根強いブームはあるものの、市場全体では消費量は決して増えてはいません。海外のブレンドウイスキーに限らず、サントリー製もそうですが、国産ウイスキーも多くは値崩れしています。

 消費者の健康志向と安価志向の高まりを受けて、ウイスキーは安くて軽い発泡酒などのアルコール飲料にシェアを奪われているといわれています。

 しかし厳しい市場環境だからこそ、あえて厳しい条件をファンにつきつける。ハードルをクリアしたファンはさらに強固なサントリー・ファンになる。サントリーの戦略は、価格が高いから入手困難だからこそ飲みたい、というウイスキーファンの心理をうまくついているものといえるかもしれません。

 「あなただけのウイスキー、世界で唯一のカスク(樽)」とうたう認定証の「限定性」「希少性」は、どれだけファンの心をくすぐるでしょうか。

 …(中略)…

 ただ、そしてこれは忘れてはいけないのが、オーナーズカスクのような、“大人の醍醐味・大人の遊び”に訴求する商売は、総合酒類・飲料メーカーのチャンピオンともいうべきサントリーだからできるのだと思います。

 お茶の「伊右衛門」、清涼飲料の「なっちゃん」、缶コーヒーの「BOSS」、ウーロン茶「黒烏龍」など、それぞれのジャンルの首位打者といえる商品を多数抱え続けるサントリーだからこそ、可能なサービスだといえます。

 …(後略)…
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 Written by Tatsuro Satoh on 24th Mar., 2008


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