ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE)

風の向くまま、気の向くままに……

「偽」 - 人が為す

2008-01-11 07:57:54 | 文化・学術

 宋文洲氏の「メルマガの『読者広場』」は興味深い。タイトルの記事は、昨年12月21日頃公開されたものと思われる。
 ちなみに、記事タイトル「『偽』 - 人が為す」にリンクを張っておいたので、チェックしてみることをお勧めする。
 記事の内容は、昨年を通じて「この字が今年を表す字に選ばれたのは悲しいこと」であるというものであるが、単純にそのことに言及するのみならず、「偽」について深く掘り下げて考えようとしているところが面白く、興味深いところである。

 宋文洲氏は、単純に人のいうことを受け入れるのではなく、それを受け入れた上で、改めて自分自身で掘り下げて考える性格のように感じられる。
 「宋文洲の傍目八目」も、書籍表紙に「あなたの『常識』、正しいですか?」と記載されているように、言葉等を受け入れた上で、自分なりに考え直してみるところがうかがわれる。
 あるいは、「斜に構えている」と評する人がいるやも知れない。。。
 しかし、企業を経営してきた、というところも影響しているのかもしれない。。。

 私の知っているある企業経営者も、同じように考えている節がある。
 つまり、いくつもの情報ソースを持ち、ひとつの情報ソースからの情報のみでは物事の判断をしたり、決断をしないというところがある。
 複数の情報ソースから入手できる情報を総合し、それぞれの情報に評価を加え、どのように判断、決断すべきかという結論を得ようとしているところがある。
 そのような意味で、「企業経営者」を体験しているからこそ、そのような発想が生まれてくるのかもしれないと感じる。。。

 「偽」に関する掘り下げ方も、相応に説得力があるように考えられ、参考のため引用しておく。
 話は、カーター元大統領の母親の話から始まっており、「嘘も方便」で、「嘘も時にはやむを得ない」ところから話を説き起こし、「時には有益な『偽』もあり得る」との結論を導き出し、「ブランドや他人の言葉を軽信しないための判断力を養ってほしい」としている。。。
 さて皆さんはどのように感じるだろうか???

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 記事引用(全文を引用)
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 カーター元大統領のお母さんのもとをある女性記者が訪ねました。「息子さんが選挙中に『私は嘘をついたことがない』というのですが、それが嘘でしょう」と問い詰めました。カーターのお母さんは「息子は良い嘘をつくが、悪い嘘はつかないよ」と答えました。

 「嘘に良い嘘があるのですか」。納得できない女性記者が食い下がりました。すると老婦人が迷わずに答えました。「あら、先ほどあなたが入った時、私が『あなた可愛いね』と言わなかった?」。・・・

 「偽装」、「偽善」、「偽り」。「偽」には良い意味がありません。この字が今年を表す字に選ばれたのは悲しいことです。しかし、せっかく選ばれたのですから、この字の奥深さを追いかけてみたいと思います。

 豚の血と配鶏の肉を混ぜて牛肉と偽ること、家の建材の性能を偽ることは明らかに他人を害する行為であり、厳しく非難されるべきことです。

 賞味期限10日間の餅が11日目でも味は変わらないだろうと思って、そのまま店頭に並べることも偽りです。ならば、南国の島で成長した牛を別の場所に連れて行き、3ヶ月後にその産地の牛として出荷します。これは偽りかどうか。Made in Japanと書いた電気製品に数割の中国製部品が入っています。これも偽りかどうか。

 本当ではないからといってすべて同じ程度の「偽り」として断罪するのはフェアかどうか。これが私の問いかけです。命を脅かす危険な偽りもあれば、無害の偽りもあります。時には有益の「偽り」さえ存在するのです。

 冒頭の女性記者と老婦人とのやり取りがよい事例です。また、我々人間は善として本当のことを言わない時があります。電車に乗った3歳の子供が体に障害を持った方を指さしてその身体特徴を言おうとするとき、親はそれを言わないように指導します。それは教育であり、思いやりでもあります。われわれが美徳としている謙遜とお世辞の実態は「有益の偽り」そのものです。

 「偽」かどうか、また有益な「偽」かどうかはあくまでも個人個人の判断次第です。長崎から見ると韓国産のマツタケはよほど北海道のマツタケより地元のマツタケに近いはずです。しかし、日本産というだけで何倍も高くても買ってしまう消費者の判断力の無さは、自分の舌への偽り行為です。しかも自分の為になっていないのです。

 「偽」は「人が為す」ことを意味し、その反対側にある「信」は「人が言う」ことを意味します。「偽」が今年の漢字に選ばれたことは悲しいですが、せめて偽りの本質を見抜き、ブランドや他人の言葉を軽信しないための判断力を養ってほしいものです。
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 Written by Tatsuro Satoh on 11th Jan., 2008

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