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ウクライナ情勢:ウクライナ侵攻と制裁によって変わるロシア産石油天然ガスフロー2022/04/21 原田 大輔

2022-05-18 15:25:34 | 連絡
〇概要

  • しかし、4月に入り、3月のロシア産原油輸出量の結果は減少想定を裏切るものだった。下旬から急速に買いが入った結果、月間全体では2月より3.5%増加したと考えられている。増加は西欧に向かう5%増加に支えられており、ウクライナ侵攻による敬遠や欧米諸国の禁輸とは真逆の様相を呈している。
  • ウクライナ侵攻から3月下旬まで市場で買い控えられてきたロシア原油が、3月下旬から盛り返してきた最も大きな理由はロシア石油会社による大幅な値下げにあると考えられる
  • 欧州市場の原油指標価格である北海ブレント原油に歴史的にリンクしてきたロシア産ウラル原油(ウラルブレンド)は、ロシアによるウクライナ侵攻を起点に、ブレント価格と乖離を始め、その差は日を追うごとに拡大し、現在40ドルまで広がっている。
  • 世界の需要者が100ドルを超える高油価に苦しむ中、ディスカウントされたロシア産原油を調達する一部のバイヤーに濡れ手で粟の状況が生まれている。

  • インド向けウラル原油の輸出は3月に急速に伸びている(原油約600万バレルが5回に分けて出荷)。東方向けの原油価格指標であるESPOブレンドもドバイ原油に対して20ドル程度ディスカウントされており、今後太平洋市場でもバイヤーが調達に向かう可能性もある。
  • SinopecやPetroChinaはロシアからの追加のLNG購入を慎重に検討しており、スポット取引で大幅に値引きされた水準での購入に向け供給側と協議している模様。

  • ロシア産エネルギーの禁輸という側面で見た場合、原油と天然ガスでは事情が全く異なるということにも留意が必要である。それは(1)供給余力、(2)輸送インフラ、(3)ロシアの生産地域の特徴という3つの違いに起因している。特に生産地域の特徴として、ロシアは原油については東西がパイプラインで接続されている一方、天然ガスは東西がパイプラインで結ばれておらず、欧州向けの天然ガスは西シベリア・ガス田から、中国向けの天然ガスは東シベリア・ガス田と異なる生産地域から輸送されている。欧州市場代替を中国に見出すには、ロシアにとって東西シベリアを結ぶパイプラインの建設が喫緊の課題となる。
  • 東方シフトをさらに加速するロシアはその帰結として「シベリアの力2」建設等に向けて動き出そうとしている。プーチン大統領は政府に対し6月1日までに新規原油パイプライン及び天然ガスパイプラインの建設計画提出を指示している。
  • 問題はこれらプロジェクトに多大な建設コストがかかることはもちろんのこと、供給源多様化に成功している中国が「シベリアの力」同様に新規ガス供給を買い叩く可能性、そして、最大の問題は中国にそれだけの市場があるのかどうかということである。
  • 現在の欧州の年間需要である155BCM(パイプライン+LNG)を今後天然ガス需要増加が見込まれる中国及びインドについて、既存分はそのままに、追加需要分を対象として検討すると、欧州制裁によってLNG輸送が前提となるインドは除外されることになる。それでもインドのLNG輸入見込みは全量で43BCM(2030年)に過ぎない。パイプラインで輸出できる中国は2030年時点で外国から輸入するパイプラインガス契約(35BCM)を全て確保したとしても、現在の欧州への輸出量の23%程度にしかならない
  • ー略ー
3. ロシア産原油・天然ガスを敬遠する動き
-略ー
しかし、4月に入り、3月のロシア産原油輸出量の結果は想定を裏切るものだった。下旬から急速に買いが入った結果、月間全体では2月より3.5%増加したと考えられている。
増加は西欧に向かう5%増加に支えられており、ウクライナ侵攻による敬遠や欧米諸国の禁輸とは真逆の様相を呈していることが判明した。
特にバルト海経由の海上輸出は平均9%増加(日量137万バレル)で、黒海は8%増(同43.8万バレル)、ドルージュバパイプライン経由は2.3%減少(日量80.8万バレル。
ポーランドとスロヴァキア向けがそれぞれ22.2%、17.6%減少。
中国向けは平均1%増加した(コジミノ港が4.6%増加、大慶支線は1%増加したが、カザフ経由が11%減少)という結果だった。 
ー略ー
ウクライナ侵攻から3月24日までは各港の輸出量に減少が見られるが、その後は戻り始めている傾向を見ることができる(赤矢印)。
下記図3 ロシア産原油の海上輸送の推移(港別) 
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参照

Rystad Energyはこの動きについて、3月にロシア産原油輸出は重大な問題に直面するという一般的な見方にもかかわらず、実際の積載データは、最初の3週間には当てはまったが、その後、中国とインドからの注文が増えたことに支えられ、3月24日より後に積載量が回復(第三者に船舶の位置情報が分かるトランスポンダーをオフにし、ロシア産原油輸送を隠す石油タンカーも増加)したと分析している。
他方、ロシア産原油を敬遠する動きは依然強まっており、4月に原油輸出は日量100万バレル減少し、年末まで150万バレル減少すると予測している。また、原油生産量は4月に日量140万バレル減少し、5月以降、200万バレルに達する可能性があると指摘している。下旬の増加は5.で後述するロシア石油会社による値引きが功を奏した動きであるが、3月初旬の制裁発動を受けた買い控えの影響が顕在化する4月以降の見通しでは、輸出量が大きく抑制される可能性が高いと考えられている。
インド向けウラル原油の輸出は3月に急速に伸びたことも様々な意味で象徴的である。原油約600万バレルが5回に分けて出荷されたとされているが、インドの年間輸入量が日量410万バレルであり、その内、ロシア産は同10万バレル程度であることを考えると、3月だけで年間の2倍に当たる日量19万バレルものロシア産原油を買い増したということになる。
IEAも4月13日にロシア産原油について、制裁と購入見送りの影響が本格化するのは5月以降との見方を示している。4月のロシア産原油の供給減少は平均で日量150万バレル(通常の輸出量の32%減少)と想定しており、5月以降は消費国主導の自主的なロシア産原油禁輸の影響が本格化し、日量300万バレル(同64%)近くの供給が減る可能性があるとしている。
但し、中国の新型コロナウイルス流行に伴う需要減少、OPECプラスによる増産、米国等IEA加盟国の戦略石油備蓄放出により、原油市場が急激に供給不足に陥ることはないとの見通しも示している。
4. 始まりつつあるロシア産エネルギーシェアの争奪戦
ロシア産原油がレピュテーション・リスク及び制裁回避策によって敬遠される中、ロシア石油会社は値引き攻勢で対応しており、現下の高油価もその値引きの余地を提供している模様だ。他方、現下の状況は、実は他産油国にとっては、世界供給で12%余りを占めるロシア産原油の牙城を切り崩し、供給途絶を阻止する世界協調という大義の下、高油価の恩恵を享受できる絶好のタイミングでもある。 
(1) 高油価下、世界協調の名の下に市場シェア拡大を目指すか否か
-略ー
(2) ポテンシャルのある代替供給先への秋風
日本からはメガバンク三行(みずほ銀行、三井住友銀行及び三菱UFJ銀行)が米欧の金融大手と組み、クウェート石油公社に10億ドル規模を融資する方向で調整に入ったことが報じられている。
 また、バイデン米政権はロシア産原油の代替調達先として、2019年に制裁を科したベネズエラからの原油輸入再開を模索している模様である。
5. ロシア産原油敬遠に対するロシアの苦肉の策:大幅な値下げ
(1) 広がるブレント原油とウラル原油の価格差
(2) 安価なエネルギー購入を模索・優先するインド
-略ー
また、中国政府もウクライナ情勢が緊迫する中で、国際協調の和を乱さないよう国営企業等へロシアとの協業や新規出資をサスペンドするよう通達が出されているという噂もある。現時点ではインドのようにディスカウントされたロシア産原油購入の動きは余り見られないが、東方向けの原油価格指標であるESPOブレンドもドバイ原油に対して20ドル程度ディスカウントされており、山東省等に位置する地方製油所が一部調達に動いている模様である。また、SinopecやPetroChinaはロシアからの追加のLNG購入を慎重に検討しており、スポット取引で大幅に値引きされた水準での購入に向け供給側と協議しているとの報道もある。






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