藤子スマイル

2014年、今年も丑三つ時をゆく。

ピキピキに凍りついた空気が、何とも心地いい。

都会の丑三つ時は、季節ごとの景色に趣がある。

人口的な景色とは、アンバランスな調和のことだろうか。

新宿八景…BGM:Bill Evans'79

…


藤子は、心許せる人間には、笑顔で歓迎をする。

一度、藤子が顔をくしゃくしゃにしながら、笑うのを見たことがある。

近所に、もたいまさこ風の、猫好き婆さんがいて、餌を与えに現れると、公園に住み着いたノラ達が、どこからともなく現れた。

婆さんは、立看板の"猫にエサを与えないで’など、全く目に入らないらしく、無表情に、数枚の紙皿に餌を分けた。

その中に藤子もいた。
藤子は、婆さんに目配せすると、他のノラ同様に、無心に食べ始めた。

ノラ達は、まるで儀式みたいに、一通り食事を済ませると、婆さんにスリスリしながら、屈んだ婆さんの足元に寝転がった。

藤子もそうだった。

婆さんが何かつぶやきながら、藤子のお腹あたりを優しくさすると、藤子が顔をくしゃくしゃにして笑い始めた。

本当に笑ってる。

僕は、猫を飼ったことがないからだろうが、生まれて初めて、猫が笑うのを見た。