いーお

午前中は子育てサロン。
天気がよくて、庭で遊んで焼き芋を食べるという日だった。
児童館のスタッフさんも来ていたので
前から気になっていたことを聞いてみたけど
よく知らないみたいだった。
少なくとも市の事業ではないというし、
余計なことかも知れないけど
リンスケさんは一体誰のお金で
ここでお団子やら焼き芋やらを食べさせてもらっているのだろう。
参加無料というのが毎回不思議でしょうがない。
おいしい焼き芋でお腹いっぱいになってくれたので
そのまま連れて帰って寝かせる。
お昼寝して起きたらおじちゃんが来るよ、と言ったら
「いーお、くー！」と大喜びで寝てしまった。
目が覚めるなり「いーお、くー！」と叫んで跳ね起きて
お昼ごはんを食べている間も「いーお」を連呼。
あのぼんやりした、子育ての子の字も知らないワカモノの
どこにそんなに2歳児を惹きつけるものがあるんだろうと思うけど、
学校でもバイト先でも誰からも好かれるというのも
あの子が持って生まれたものなんだろう。
本人は何の努力も意識もしないのに、そうだということは。
「いーお」は、また髪を茶色くクルクルにしたみたいで
倉敷でいた時よりさらに若くなっていた。
じょいフルは、この頃には一応だけど
もう白衣を着てたぞ、一応。
リンスケさんの木のレールの間にお茶を並べて
持って来てくれた「ティコラッテ」のケーキを食べる。
やっと名前を憶えられた。
堂島ロールより美味しいよと豪語していたけど、
本当に堂島ロールより美味しいと思った。
あんなスポンジは初めて食べた。
こんなにすごいロールケーキが有名でも何でもないなんて、
世の中の、口コミランキングとか予約殺到とか
行列ができるとか楽天の仰々しいコピーとか、
話題になるならないなんていい加減なものだと思った。
これこそが予約待ちで行列待ちで即日完売になるべきロールケーキだと思う。
三人で公園に行ってリンスケさんの滑り台に付き合ってもらって
スーパーで買い物をしている間二人でカニを見ていて、
帰ってからも「いーお、いーお」とリンスケさんは大喜びだった。
リンスケさんはこんなに喜ぶし、
それにこんなに美味しいロールケーキが食べられるし、
またちょくちょく遊びに来てくれたらいいのにと思って、
自分がそう思っていることに気がついて
これがあの子が持って生まれたものなのかとびっくりした。