感染症内科への道標

研究学園都市つくばより感染症診療・微生物検査・感染制御の最新情報を発信しております。

感染症診療の基礎と臨床 

2011-05-06 | 感染症参考書(一般)
医薬ジャーナル社より2010年4月出版、8190円
耐性菌診療に関与する医師にとっては普段の診療の確認で大変価値のある本です。


Pseudomonas
湿潤環境の至る所に生息 
健康な成人の約15%、入院患者の30-60%で検出
問題となる耐性→OprDの欠失、MBL産生 
Gyr、TopoIVの変異(緑膿菌等のグラム陰性桿菌の第一標的はGyrA/DNA複合体)
排出システムの亢進 
アミノグリコシド耐性(修飾酵素の産生:アルベカシンは緑膿菌が産生する酵素に修飾されにくい)、排出システムの亢進、16S r RNAメチラーゼの産生

ESBL
日本では欧米で主流であるTEM型、SHV型よりもCTX-M型が多い 

耐性嫌気性菌
近年B fragilis groupの中でのCLDM耐性の傾向が強い。
B frailis groupの殆どがペニシリナーゼを産生する。  
現在B.fragilis全般に有効なのはβラクタム剤阻害薬配合剤、カルバペネム、メトロニダゾールである。

H.influenzae
ペニシリナーゼ(TEM型βラクタマーゼ)とBLNAR(PBP3を支配するfts I遺伝子の変異)

非発酵菌群
ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌
多くはP.aeruginosa
Acinetobacter baumannii
Stenotrophomonas maltophilia
Burkholderia cepacia
Cryseobacterium meningosepticum
Alcaliganes xylosoxidans


新薬
リネゾリド 
細菌の50Sリボゾームと結合することで70S開始複合体の形成を妨げる。 
グラム陽性菌全般に有効性。グラム陰性菌については全般的に無効(一部Neisseria やHaemophilus influenzaに対して抗菌活性を示す場合がある。NocardiaやMycobacterium tuberculosisについても有効)

コリスチン 
グラム陰性菌の細胞膜を傷害することによりその透過性を高め、殺菌的に作用。
MDRPの切り札であるが単独では有効性は7割程度

テリスロマイシン 
世界初のケトライド系薬であり、エリスロマイシンと共通のラクトン環を有するものの、クラディノース糖鎖を持たず、代わりにケトン基を有する。耐性肺炎球菌に対しても優れた抗菌活性をもつ。マクロライド系薬と同様に細菌のリボソーム50Sサブユニットにある23SリボソームRNAに結合する。結合部位がドメイン部位がドメインVに加え、ドメインIIの2か所であることが特徴。(erm B遺伝子保有株、mef A遺伝子保有株)に対しても優れた抗菌活性

日本では意識傷害という重篤な副作用(自動車運転中に意識消失し事故発生など)の多発により安全性情報が発出され、基本的に他製剤では代替出来ない場合に用いる慎重投与の製品

Tigercycline
ミノサイクリンの半合成誘導体 
作用機序はリボソーム30Sサブユニットに結合して蛋白質の合成阻害でありテトラサイクリンと同様であるがMICの4倍の殺菌性をもつ。脂溶性で組織移行性良好

Daptomycin
細菌の細胞膜に結合し、膜電位の脱分極を起こす。メチシリン耐性、VCM耐性、LZD耐性と交差しない。肺のSurfactantで不活化される。

Ceftobiprole
MRSAに対して有効なβラクタム系抗菌薬
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