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米国大学でのムンプスoutbreakにおいてMMRワクチン3回目接種の有効性

2017-10-05 | ワクチン・Travel Medicine
Effectiveness of a Third Dose of MMR Vaccine for Mumps Outbreak Control
NEJM 2017
Cristina V. Cardemil, M.D.,et al

要旨
▾ 目的
• 2015年の米国アイオワ大学で起こったムンプスのoutbreakにおいてMMRワクチン3回接種の予防効果の解析

▾ 方法 
• 場所: The University of Iowa, 学生数 22,000人 入学時にムンプスワクチン2回接種が必要
• 対象患者: 在籍中の学生
• The outbreak period: August 24, 2015 - May 13, 2016.
• outbreak中、MMRワクチンが無料で全学生を対象に接種された
• 大学のデータからワクチン接種歴、接種時期、発症の有無のデータを抽出し解析

▾ 結果
▾ Vaccination History
• 20,496人の学生中ほとんどが生後12ヶ月から23ヶ月の間に1回目、4歳から6歳の間に2回目の接種を受けていた
• outbreak以前, 98.1%が2回以上MMRワクチンを接種されていた
• outbreak以降、19,705人の2回接種を受けていた学生のうち4783人 (24.3%)がoutobreak以降に3回目の接種を受け、そのうち94.0%がワクチンキャンペーン中に接種された。
▾ Mumps Attack Rate
• 20,496人の学生中、259人が発症(12.6 cases per 1000 population)
• 3回接種を受けた場合の発症率は2回接種より低い (6.7 vs. 14.5 cases per 1000 population, P<0.001).
• 2回接種を受けたものの中でも12年以内に2回目の接種を受けた場合はそれより以前に接種を受けた場合よりも発症率が低い
• 2回目の接種を2年以内に接種を受けた場合の発症率は1.6 cases per 1000 population 、3ー12年以内に受けた場合の発症率は3.9 cases per 1000 populationであった
• 2回目の接種を13-15年以前に受けた場合は11.3 cases per 1000 population、16-23年以前に受けた場合は17.6 cases per 1000 populationまで発症率が上昇
▾ Risk of Mumps
• 多変量解析の結果、3回のMMRワクチン接種と2回目の接種を受けてからの期間が発症と相関したリスクだった
• postvaccination windowを28日間とすると接種キャンペーン中の3回目接種により78.1%発症リスクを低下させることができた(adjusted hazard ratio, 0.22; 95% confidence interval [CI], 0.12 to 0.39)
• 13 - 15 年前に2回目のMMRワクチンの接種を受けた場合は、2年以内に受けた場合よりも9.1倍、16 - 24年前に受けた場合は14.3倍に発症リスクが上がる
▾ Vaccine Effectiveness
• 3回目のMMRワクチンの有効性は2回接種に比較して接種後7日で60.0% (95% CI, 38.4 to 74.0)、接種後28日で78.1% (95% CI, 60.9 to 87.8)
• 2回接種と接種なしで比較した場合の有効性は2回目接種からの期間で変わり、13年以内に接種した場合は89.4% (95% CI, -2.5 to 98.9)、それ以前に接種した場合は31.8% (95% CI, -388.9 to 90.5)

▾ 結論
• 高いワクチン接種率を持つ集団でのoutbreakでも3回目のMMRワクチン接種は有効である。本研究のデータにより抗体価の減弱の重要性も示された。2012年からCDCは3回目のMMRワクチン接種について、学校などでの強い暴露や高い発症率(>5 cases per 1000 population)や持続する伝播(>2 weeks)の場合に接種を検討するように.guidanceを出している。今回の解析でさらに3回目のMMRワクチン接種の有効性についての情報が得られた。医療機関はoutbreak controlの際、それを元に接種を検討することができるかもしれない。

▾ 本論文から得られる知見
• MMRワクチンを2回接種した集団でのムンプスのoutbreakでも3回目の接種は有効である。
• 2回目のMMRワクチン接種から13年以上経過するとワクチンの有効性は大幅に低下する
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