感染症内科への道標

研究学園都市つくばより感染症診療・微生物検査・感染制御の最新情報を発信しております。

小児呼吸器感染症診療ガイドライン  

2011-12-22 | 臓器別感染症:呼吸器系
日本小児呼吸器疾患学会・日本小児感染症学会による合同ガイドライン
日々で診療で使いやすいようにポケットサイズでお手頃価格、しかも内容は素晴らしいの一言につきます。研修医の先生も必携の一冊です。
(日本感染症学会もがんばってほしいですね)

2011年4月出版 2000円

検査:外来でも血液培養は肺炎を疑ったら採取、尿中肺炎球菌抗原は偽陽性率が高いため参考、レジオネラ抗原は重症肺炎で行う。
A群溶連菌:ペニシリンアレルギーではセフェム系(15%で交差反応)、マクロライド:日本では耐性株が多い。
急性喉頭蓋炎:ほとんどがインフルエンザ菌b型(咽頭培養は行わない:危険のため)血液培養は90%で陽性となる。
細気管支炎:45-75%がRSウイルス。ハイリスク児のRSウイルス感染の予防にはヒト化モノクローナル抗体(パリビズマブ)の使用が可能。その他ではh MPV、ヒトボカウイルス

肺炎:重症 全身状態不良 チアノーゼ 多呼吸 努力呼吸 胸部X線での陰影 胸水
SpO2 循環不全 人工呼吸管理の内1つ以上 
原因不明時 原則1剤
軽症 AMPC SBT/PC 広域セフェム (2か月-5歳) 6歳以上マクロライド又はテトラサイクリン(8歳未満の小児には多剤が使用できないか無効の場合)
耐性菌懸念:AMPC増量 CVA/AMPC 広域セフェム増量 TBPM-PI or TFLX po
入院ではABPC iv or SBT/ABPT iv or PIPC iv or 広域セフェム 6歳以上ではABPC iv or SBT/ABPT iv or PIPC iv or 広域セフェム iv ②マクロライド po テトラサイクリン
ICU カルバペネム 又はTAZ/PIPC

インフルエンザ菌:BLNARであっても80%でABPCに著効
肺炎マイコプラズマ:現時点ではマクロライド系で治療
投与期間:3-7日間で十分である。
OPAT:外来点滴治療、CTRXが対象となるが安易な使用は控える。

基礎疾患のある肺炎:
一次検査 血算、CD4/CD8比、CRP、ESR、血液ガス、γグロブリン、補体、ツベルクリン反応、同種血球凝集抗体価、微生物検査、血液培養、喀痰塗マツ培養、喀痰細胞診(カリニ)、アデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス迅速抗原、マイコプラズマ、クラミジア血清抗体価、Βdグルカン 
二次検査 一般検査 IgGサブクラス、好中球殺菌能/貪食能 リンパ球増殖反応
NK細胞数 CD40 Ligand(CD154) 微生物検査 喀痰PCR マイコプラズマ、クラミジア レジオネラ尿中抗原 ウイルス分離 CMV抗原 CMV-DNA定量 血清カンジダ 
アスペルギルス クリプトコッカス抗原 トキソプラズマ抗体 
治療 液性免疫不全 SBT/ABPC TAZ/PIPC 第3世代セフェム
細胞性免疫不全 SBT/ABPC TAZ/PIPC 第3世代セフェム+ST合剤+ミカファンギン 
好中球減少症 SBT/ABPC TAZ/PIPC 第3世代セフェム ミカファンギン 
補体欠損症 SBT/ABPC TAZ/PIPC 第3世代セフェム

院内肺炎:セフタシジム50mg/kg,1日3回、アズトレオナム30mg/kg1日4回、メロペネム30mg/kg 1日3回、ピペラシリン・タゾバクタム112.5mg/kg 1日3回 + バンコマイシン20mg/kg 1日2回 又はテイコプラニン10mg/kg 1回10mg/kg 12時間毎3回、以降は24時間毎点滴静注

予防接種対象疾患
インフルエンザ:罹患率子供37%,健康成人5-10%、高齢者施設で43%、65歳以上で死亡率が高い。2010年度からソ連株→H1N1(2009)がワクチン株に組み込まれた。重度の卵アレルギー児以外はワクチン接種が可能。
麻疹:全数報告。EIA抗体価は発疹出現後4日で全例陽性。診断時には必ず全例検体を地方衛生研究所に提出
百日咳:近年成人例の報告が増えている。診断は血清診断が主流(遺伝子診断は全国数か所) DTPワクチン接種者ではPT(百日咳毒素)-IgGで単血清94EU/ml以上又は100EU/ml以上 ペア血清で2倍以上 凝集素価は単血清では評価できない。ペア血清では流行株、ワクチン株いずれか4倍の有意上昇。凝集素法は低感度のためWHOでは推奨されていない。成人例では4週間以上続く咳で受診した場合、既に抗体価が上昇しており評価できない。CAM内服後5-7日で百日咳菌は陰性となる。
結核:BCG接種については結核性髄膜炎や粟粒結核等の重症播種性の結核症の予防効果に関して極めて高い評価で一致。
インフルエンザ菌感染症:キョウ膜型特にb型で最も病原性が高い。中耳炎、気管支炎、肺炎等の局所感染症は、無キョウ膜型が主体。Hib侵襲性感染症を発症した児に、5歳未満の兄弟がいる場合には、兄弟のHib全身感染症の発症リスクが高くなるので、同居している家族全員に対して抗菌薬の予防投与を行うと同時に、5歳未満の兄弟に対してはHibワクチンを早期に接種するよう指導する。(除菌効果としてはリファンピシンが最も優れる)
肺炎球菌感染症:キョウ膜を有しているため病原性が高い。本邦では2010年2月から肺炎球菌ワクチンが保険適用。(成人用肺炎球菌ワクチンはB細胞直接活性化のためT細胞非依存性のため2歳未満では効果がない)

小児市中呼吸器感染症原因微生物の耐性化
肺炎球菌:1990年以降PCGに対する耐性傾向(1A,2B,2X変異)、TFLX耐性株、マクロライドについては従来から日本では高い耐性率(erm B遺伝子)
インフルエンザ菌:BLNARが増加傾向
A群溶連性連鎖球菌:マクロライド高度耐性(ermB遺伝子)の影響を受けCLDM耐性率が高い
肺炎マイコプラズマ:マクロライド系に対する耐性が急増
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