感染症内科への道標

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肝硬変診療ガイドライン

2010-04-28 | 消化器・肝・胆・膵
日本消化器病学会
2010年4月に出版、3150円。 

CQ1-01 身体所見から肝硬変の診断は可能か?
触診や打診で特徴的な所見を得た場合には肝硬変と診断できるが、肝硬変の初期では明らかな身体所見が無く、肝も触れないことが多いので、身体所見のみでは肝硬変の診断はできない。海外Ib 日本無し

CQ1-02 血清生化学的検査所見から肝硬変の診断は可能か?
血液生化学的検査をいくつか組み合わせて肝硬変を診断することは80-90%の確率で可能である。肝生検の代用となりうるが、合併症の存在が用いる検査値に影響を及ぼす可能性がある。海外Ib 日本Ib
→AST優位のトランスアミナーゼ値の異常、肝予備能(ChE, Alb, TCHO, ヘパプラスチンテスト、PT等)、γグロブリン、ZTT、TTTの上昇、ICG排泄率の異常、BCAA/AAA比の低下、血清総胆汁酸の上昇、汎血球減少

CQ1-03 画像診断は肝硬変の診断に有用か?
腹部超音波検査やX線CTに特徴的所見がある場合は診断可能だが、肝硬変の形態的変化は機能的変化に遅れて出現するので、初期診断は困難である。A 海外V 日本V 保険可
Transient elastographyは肝硬変の診断に有用であり、生化学的検査ほど脂肪沈着や肝炎の活動性の影響は受けない。C1 海外Ia, 日本V 保険 不可
核医学検査は肝細胞表面のアシアロ糖蛋白受容体の分布と機能(GSA), 肝血流(タリウム)、肝網内系の数と分布(Tc-フチン酸)などの変化を手掛かりとしているが、これらでは初期肝硬変を診断することはできない。C1 海外V 日本V 保険可

CQ1-04 肝生検組織所見(腹腔鏡および針生検)は肝硬変の診断に有用か?
経皮肝生検のみでは約20%の肝硬変症例で偽陰性がある。経皮生検試料は10mm異常の長さが望ましい。腹腔鏡による肉眼的観察と組織学的検査を併用すると正診率は20-30%上がる。腹腔鏡検査や肝生検は肝硬変の診断に有用だがその正確さは80%止まりである。B 海外IIb 日本無し 保険 可

CQ2-01 肝硬変患者の低栄養状態は予後に影響を与えるか。
肝硬変患者の低栄養状態は予後に影響を与える。A 海外I 日本IV a

CQ2-02 肝硬変に対する就寝前エネルギー投与は予後を改善するか?
就寝前エネルギー投与は肝硬変患者のエネルギー代謝を改善する。B 海外III 日本II 保険可 

CQ2-03 肝硬変患者の低アルブミン血症に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与は有効か? 
BCAA製剤投与は肝硬変患者の低アルブミン血症を改善する。A 海外II 日本II 保険可

CQ2-04 肝硬変に対するBCAA製剤投与は予後やQOLを改善するか?
肝硬変に対するBCAA製剤投与は無イベント生存率/QOLを改善する。A 海外II 日本II 保険 可 

CQ2-05 肝硬変の耐糖能異常は病態に影響を与えるか?
肝硬変の耐糖能異常は病態に影響を及ぼすので、適切な対策が必要である。 A 海外III 日本III

CQ2-06 B型肝硬変においてHBe抗原、HBe抗体検査は病態のモニターに有用か?
B型肝硬変においてもHBe抗原、HBe抗体検査はモニターに有用である。A 海外Ia, 日本無し 保険 可 
HBeAg陽性例では陰性例に比べ血中HBV DVA量が多く、肝年が活動性であることが多い。 
代償性肝硬変の場合、HBeAg陽性例は陰性例に比べ非代償化する割合が高く、HBeAg消失は長期生存に寄与する。A 海外IIb 日本無し 保険 可 
HBe Agの存在やHBV DNA検出の有無は肝発癌の危険陰性にならないのでHBe Ag HBV DNAの有無に関係なく肝硬変では肝癌の発現に注意する。

CQ2-07 ラミブジンはB型肝硬変におけるウイルスの陰性化、あるいはセロコンバージョンを促進するか?
慢性肝炎および代償性肝硬変患者において、ラミブジン投与によりウイルスの陰性化、あるいはHBe抗原のセロコンバージョンが得られている。C1 海外II 日本II 保険可
非代償性肝硬変患者においてもラミブジンはウイルスの陰性化を促進する可能性が高い。しかし、多数の肝硬変患者を対象としたエビデンスレベルの高い論文はない。C1 海外IVb
日本IVb 保険 可 
慢性肝炎では耐性予防のためエンテカビルが用いられている。
B型肝硬変に対する第一選択抗ウイルス薬としてエンテカビルが推奨される。I-A アデフォビルはラミブジン耐性例に併用する。DNAが検出感度以下の例、トランスアミナーゼ制条例に対する効果については、十分なエビデンスがない。

CQ2-08 ラミブジンはB型肝硬変の肝線維化を改善するか?
慢性肝炎および代償性肝硬変において、ラミブジン投与例の殆どで、組織学的な炎症所見の改善、線維化の改善及び線化進展抑制が得られている。人種間、HBe抗原陽性/陰性症例間や各研究成績間のばらつきは少ない。 C1 海外II 日本無し 保険可 
ただし、肝硬変のみを対象にしたエビデンスレベルの高い論文はない。C1 海外V 日本無し 保険可 

CQ2-09 ラミブジンはB型非代償性肝硬変の予後を改善するか?
ラミブジンがB型非代償性肝硬変の予後を改善するかどうかについては、生存率に関するRCTがなく評価は困難である。エビデンスレベルは低いものの、ラミブジンの投与によりB型非代償性肝硬変の肝予備能や病理学的所見、生命予後が改善する可能性が指摘されている。C1 海外IVa, 日本IVa 保険可 

CQ2-10 ラミブジンはB型肝硬変の肝発癌を抑制するか?
肝硬変もしくは肝線維化の進行した慢性肝炎において、ラミブジン投与例では肝発癌優位に抑制されている。

CQ2-11 ラミブジン耐性B型肝硬変にアデフォビルの追加投与は有効か?
ラミブジン耐性株が出現したB型肝硬変に対してラミブジンにアデフォビルを併用する治療法はアデフォビル単独と同等の効果がある。A 海外III 日本V  保険可 

CQ2-12 アデフォビル治療、エンテカビル治療はB型肝硬変に有効か? 
アデフォビル治療、エンテカビル治療はB型肝硬変に有効である。アデフォビル、エンテカビルの単独治療はラミブジンと比較して費用対効果に優れている。 A 海外I 日本V 保険可 

CQ2-13 インターフェロンはB型肝硬変のウイルスの陰性化、あるいはセロコンバージョンを促進するか? 
インターションがB型肝硬変のウイルスの陰性化あるいはセロコンバージョンを促進するという十分な根拠がない。 

CQ2-14 インターフェロンはB型肝硬変の肝線維化を改善するか? 
インターフェロン療法が、B型肝硬変の肝線維化を改善するという十分な根拠はない。 

CQ2-15 インターフェロンはB型肝硬変の肝発癌を抑制するか?
インターフェロン療法が、代償性肝硬変からの発癌を抑制するという十分な根拠はない。 
C1 海外無し 日本IVa 保険可 

CQ2-16 C型肝硬変におけるインターフェロン療法の治療効果は慢性肝炎と同等か?
C型肝硬変に対するインターフェロン治療の効果はC型慢性肝炎に比べて、SVR(HCV持続陰性化)率やトランスアミナーゼ値の正常化率が劣る。B 海外II 日本無し 保険可

CQ2-17 インターフェロン療法後SVRが得られたC型肝硬変では線維化が改善するか?
C型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝硬変に対するインターフェロン治癒によりウイルス学的にSVRが得られた症例では、F4からF3もしくはF2まで線維化の改善が認められる。B
海外I 日本IVa 保険可 

CQ2-18 C型肝硬変に対するインターフェロン療法は、有害事象を誘発し予後に悪影響を与えないか?
C型肝硬変のインターフェロン治療では骨髄抑制などの合併症をみることがあるが、投与量や投与期間の工夫により、慢性肝炎と有害事象の頻度は変わらない。したがってインターフェロン治療はC型肝硬変に対して合併症を誘発し、予後に悪影響を与えているとはいえない。B 海外II 日本 IVa 保険可 

CQ2-19 C型肝硬変に対するインターフェロン療法は、肝癌を抑制し予後を改善するか? 
C型肝硬変患者に対するインターフェロン療法は、肝癌発現を抑制し、肝不全の発生を抑制し、予後を改善する可能性が高い。

CQ2-20 初回インターフェロン療法が無効であったC型肝硬変に対し、ペグインターフェロン、リバビリン併用療法は有効か? 
初回インターフェロン治療が無効であったC型肝硬変に対するペグインターフェロン、リバビリン併用療法のSVR率は慢性肝炎よりは低いが、ナイーブ(初回治療)症例と変わらない。生命予後、発癌抑制、肝硬変の非代償化抑制に関する有効性は認められない。B 海外II 日本無し 保険不可

CQ2-21 血小板減少を伴うC型肝硬変に対し、脾摘または部分的脾塞栓術(PSE)後のインターフェロン療法は有効か?また費用対効果はどうか?
血小板現Sン法を伴うC型肝硬変に対する脾摘または部分的脾塞栓術(PSE)後のインターフェロン療法の有効性、安全性についてレベルの高いエビデンスはない。費用対効果の検証は報告がない。 C1 海外V 日本 無し 保険可 

CQ2-22 抗ウイルス療法以外にウイルス性肝硬変の肝線維化を抑制する治療法はあるか?
有効というエビデンスのある治療法はない。 

CQ2-23 アルコール性肝硬変では禁酒により線維化が改善するか? 
禁酒により血清線維化マーカーの低下がみられるので組織学的に軽い線維化は改善するかもしれないが報告はない。組織学的には偽小葉の形態がさまざまに変化するが5年間の禁酒では線維化自体の有意な改善がみられない。B 海外無し 日本IVb

CQ2-24 アルコール性肝硬変では禁酒により進展が阻止され、予後が改善するか? 
アルコール性肝硬変は断酒により死亡率の改善が得られる。A 海外IVa 日本IVb

CQ2-25 自己免疫性肝炎による肝硬変に対して副腎皮質ホルモンを投与すると線維化が改善するか?
多くの症例では線維化の改善がみられる。しかし、ステロイド治療にもかからず線維化が進行する例が治療例の25%程度にみられる。B 海外IVb 日本無し 保険可

CQ2-26 AIHによる肝硬変にステロイドを投与すると予後は改善するか?
大規模な無作為比較試験は行われていないが、過去のAIH自然史の予後報告と比べてステロイド治療は予後を改善することが報告されている。B 海外IVb 日本IVb 保険可 

CQ2-27 PBCによる肝硬変にUDCAを投与することで線維化の進展抑制効果が得られるか?
UDCAは線維化、血液検査所見、ソウヨウ感などの症状を改善する。 グレードA 海外I 日本無し 保険可 
ブデソニドとUDCAの併用はUDCA単独より線維化改善効果が強い。 A 海外II 日本無し 保険不可

CQ2-28 PBCによる肝硬変に対するUDCAあるいは副腎皮質ステロイド投与は改善するか?
多くのメタアナリシスではUDCAの投与はPBCの生存率改善にはつながらないとしている。特にStage III, IVでは改善がないとされている。しかし最近メタアナリシスでは予後改善の報告もあり、現状では決着がついていない。副腎皮質ステロイド単独投与は無効で進展予防、改善につながらない。B 海外I 日本無し 保険可 

CQ2-29 PSCによる肝硬変にステロイドを投与すると予後は改善するか?
有効性についてもエビデンスレベルの高い報告はない、生命予後を改善するというエビデンスはない。



CQ2-29 PSCに対する肝硬変にステロイドを投与すると予後は改善するか?
有効性についてもエビエンスレベルの高い報告はなく、生命予後を改善するというエビデンスはない。

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