本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。
雉とフォワグラのパイ包み焼き サルミソースです。
今年もジビエの季節になり、フランスから野生の雌の雉が届きました。
毎年この時期には、フランスからは雉の他にも山鶉や山鳩、青首鴨等が届き、日本では北海道の蝦夷鹿や丹波の猪、新潟の真鴨が、グリンツィングのキッチンに集まります。
今回届きました雉は、鮮度や状態共に良く、とても素晴らしい食材でした。
野生ですので個体差があり、その上鉄砲で撃たれた場所が悪いと状態が良くない為に、そのつど調理法や味付けを変えなければいけません。
そこがジビエの難しさでありますが、しかし面白さでもあるところです。
野生の肉が持つ繊細で力強い味わいに、ぴったりの熟成と適切に調理された一皿は、飼育された肉には出せない凄みが有ります。
今までに食べたジビエでは、フランス修行中に食べた野ウサギの煮込み(リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル)は、これぞジビエという複雑で野生的、そしてこの上なく濃厚な美味しさに、とても感激した思い出があります。
東京でもその時の味を再現したいのですが、今はフランスから野ウサギが入りませんので残念です。
さて、今回の雉ですが、ボリュームとコクをプラスするために、フォワグラと一緒にパイで包んで香ばしく焼き上げる事にしました。
雉はとても淡白な味ですので、お店に届いたばかりの新鮮な状態では、癖のない鳥肉位の価値しか有りませんが、数日間じっくりと熟成させる事で、本来の雉の個性と独特の良い香りが出てきます。
そんな香り高い雉に、コニャックや赤ワイン、バター、生クリームを合わせて、フランス料理らしい一皿を食べていただきたいと思います。
パイ包みの作り方は、雉の胸肉と腿肉、砂肝や心臓、レバーと豚のノド肉を、コニャックと塩、スパイスと共に1週間漬け込み、ミンチにしてから炒めた玉葱と卵、クリームを加えて良く練った物と、軽く焼き色を付けた鴨のフォワグラを折り込みパイ生地で包み、溶いた卵黄を塗ってから、250度の高温のオーブンで15分程焼きます。
サルミソースは、雉のガラと香味野菜を炒めた所に、コニャックと赤ワインを加えてよく煮詰めてからフォンドヴォー(仔牛のダシ)を入れて、ブーケガルニとスパイスを加えて一時間位弱火で煮ます。
目の細かい漉し器で漉した後に、軽くソテーした雉のレバーと一緒にミキサーに入れてよく回します。
鍋に移し弱火で加熱して濃度を付けてから、もう一度漉して、最後に塩とコショウ、コニャック、バター、生クリームで味と濃度を調えて完成です。
付け合せには、別皿で胡桃風味のサラダを添えていますが、今回は熱々のパイ包み焼きと濃厚なサルミソースを、じっくりと味わっていただけたら嬉しいです。
美味しい料理には、必要な作業や要素と同じく、必要で無い作業や要素が有ると思います。
やらなければいけない事と、やらなくてもよい事とも言えます。
今まではその作業や要素の違いが解らずに、やらなければいけない作業を軽く考えたり、外してしまったり、逆にやらなくてもよい事に、時間や労力を使っている事も多かった気がします。
お店によって必要な事はそれぞれ違いますが、基本的な所や、基礎になるベースの部分こそ大切であり、時間と労力を注がなければいけないと思います。
いくら外側の綺麗さや奇抜さが目立っても、そこに本当の美味しさや感動はあるのでしょうか?
「当たり前の事をきちんとする」またそこから始めたいと思います。
ジビエの季節はまだまだ続きますので、是非食事にいらして下さい。
喜んでいただけてとても安心しました。
そして、こんなにもありがたいお言葉をいただき、本当に嬉しいです。
これからも料理の腕を磨き、沢山のお客様に喜んでいただけるよう頑張りたいと思います。
また、お会いできる日を楽しみにしております。