サイプレス

鬱病になり不安定な毎日。今は宝塚熱が再燃して、これがいい処方箋になっています。

なんだかよく分からないけれど、考えてしまう。

2010年12月26日 | 読書

東電OL殺人事件 新潮社 佐野 眞一著
東電OL症候群  新潮社 佐野 眞一著


こんな暮れの押し迫った時に、図書館でふと目に止まった本。

ご記憶の方もいるかもしれないが、平成9年の3月に起こった
東京電力のエリート社員だった女性が絞殺死体で発見された事件に
迫っている作品だ。

ただ個人的なことをいえばその頃神戸では「連続児童殺傷事件」が起こっており、
また、母の病状が思わしくなかったこともあって、「こんな頭のいい人が・・・」
くらいの感想で止まっていた。

けれど、時間がたつにつれ「彼女」が昼間は普通に働いて、
夜は「たちんぼ」と呼ばれる夜の女になったのか興味が出てきた。

ただご本人は被害者としてなくなっているし、家族からのエピソードも
得られていないので、その深部に迫ることは不可能に近い。

それでも、周りにいた人たちの、それも取材に協力した人たちの証言だけでも
かなり興味ぶかい。

彼女は、東大を出て東電に務める父とその年代であれば最高学歴を持つ
大卒の母との間に昭和30年代初めに生まれた長女である。

かなりのファザコンだったらしいエピソードを同級生に残しているようだが、
彼女は父を亡くした大学2年生の時に拒食症を発症したらしい。
ただし、この病気がなかなか治らず28歳の時にも再発し、
亡くなった39歳当時の検案書では身長169センチ、体重44キロと
記されていたようだから、症状は良くなっていなかったのだろう。

興味深いのは、そんな体で昼は仕事をして、夜は4人の客を取ることを
自らに課し、そして必ず終電で母と妹の住む自宅に帰っていたこと。
おまけに、土日も休むことなく『仕事』を続けていたらしい。
こんな生活が亡くなる数年前からはじまったようだ。
まるで家にいるのが嫌なようだ。

そして、この事実を職場も家族も知っていたのである。
想像するしかないけれど、彼女に正面きって言えるような状態を
彼女自身が持っていなかったのかもしれない。
母親にすれば、こんな生活を毎晩見せ付けられて楽しかろうはずはなく、
そのことに彼女はどこか自虐的なそれでいて喜びを感じていたのだろうか?

読めば読むほど謎が深まる2冊の本だった。
でも、彼女の生き方に賛成できなくても、共感は出来る女性は多いだろうな~
と、思う私。
上手くいえないけれど、私より上の女性で男性と同じかそれ以上を目指して
いた彼女にとっては、「会社社会」は理解不能になったのだろう。
頭が良くて、そのことでは学生時代には男性からも一目置かれていた彼女は、
「会社」では、そのことだけでは生きていけないことをかなり時間が
たって思い知らされたような気がする。
そのことを思い知った時、彼女は自分を傷つけていく・・・行動に出たような
そんな叫びにも思える。

けれど、きっとこんな感情をもつ女性は彼女だけでなく、
沢山いるだろう。(行動に移すかどうかは別にして)
ちょっと、彼女が愚直すぎたんだと思う私。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿