「何事も馬九行久(うまくいく)」と、袋の赤い縁取りに書いてあった。
願いを込めた言葉も、語呂合わせで面白みを忘れないところがいい。
旭屋の「太っちょ」が、道の駅「南相馬」で売られていた。
「太っちょ」は、浪江名物の「なみえ焼きそば」である。
一袋に、麺と特製ソースを一組にして三食分入っていた。
この「なみえ焼きそば」には、ちょっとした決まりがある。
具は、もやしと豚肉だけというのが、基本の「なみえ焼きそば」である。
もやしが、麺の量より少なくてはいけない。
何しろ、「なみえ焼きそば」は、「安くて旨くて腹持ち良く」と思って作られたというから、簡素で力強いわけだ。仕上げに一味唐辛子をかけるといいらしい。
「太っちょ」は名前の通り太麺で、もやしと同じくらい太い。
だが、うどんとはまた違う味わいだ。
見事に、そばの滑らかさと、うどんの弾力とを併せ持っているのである。
もやしの多さも、食べて「なるほど」と思う。
もやしの歯切れ良い食感とみずみずしさが、太っちょ麺の弾力や、肉とソースのコクとも調和して旨いのだ。ソースも、程よい甘味とコクがあり、酸味が穏やかで良く合う。
色々試したが、少し肉に下味をつけて作ると、好みの味になっていい。
浪江の人々は、原発事故によって町を離れることになってしまった。
けれども、ふるさとで培った産品は大事に守り、作り続けている。
旭屋は今(2012年)、郡山に仮事務所を置き、仙台に生産委託しているそうだ。
どうにか、浪江名物として人々に親しまれた「なみえ焼きそば 太っちょ」を作りながら、相馬や双葉地区での操業を目指しているという。(2015年から相馬の新工場にて製造再開)
「太っちょ」に添えられた、「何事も馬九行久」の願いも広がるだろう。
その願い、きっと叶えたいものだ。