中国国家統計局が17日発表した主要統計では、2023年4~6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比0・8%増にとどまった。1月の「ゼロコロナ」政策の正式終了を受けた景気回復に、早くもブレーキがかかった状況だ。若年層の失業率が悪化するなど、習近平政権の強権的な政策は中長期的な中国経済の見通しにも影を落としている。 7月前半、約40度の暑さに見舞われた河南省の省都・鄭州のビル前で、「22歳以上募集」などと書かれた貼り紙を若者が熱心に見ていた。地元当局が中心となった合同就職説明会の会場だ。中国は6月が大学卒業シーズンで、就職できずにいる卒業生を後押しするため鄭州では7月に毎週2回以上のペースでこうした説明会が開かれている。 「大学の就職説明会などで30回以上は採用面接を受けたが駄目だった」 鄭州から約100キロ離れた河南省開封市から車で2時間を掛けてきた機械関連の学部を卒業したばかりの女性(22)は表情を曇らせた。友人の多くも無職のまま卒業したという。ゼロコロナ政策下で就職できなかった大卒者が滞留していることもあり、女性は「就職は年々難しくなっている」とため息をつく。 16~24歳の失業率は4月から20%超の水準が続き、過去最高を毎月更新中だ。中国の交流サイト(SNS)では「卒業即失業」や「息も絶え絶えだ」という嘆きの投稿が少なくない。 高学歴化で大学卒業生らが増えていることが要因で、今夏には前年比82万人増の1158万人を見込む。そこに「官製不況」が追い打ちをかけた。ゼロコロナ政策の長期化で企業業績が悪化。さらに、大卒者の就職の受け皿となっていた教育、不動産、IT業界は、習政権の統制強化で採用拡大の余力を失った。 一方、工場労働者などブルーカラーの職種を中心に人手不足が深刻だ。就職説明会の会場を訪れた鄭州の卸売会社で人事担当を務める40代の女性は「高い給料を出せないうちのような小さな会社は人集めに苦しんでいる。若者も企業も共に大変だ」と疲れた様子だ。 雇用環境の悪化もあり消費回復には勢いがなく、物価低迷でデフレ懸念すらくすぶる。世界経済の下振れリスクから輸出は低迷し、米中対立激化が投資家心理を冷やす内憂外患にある。 習政権も景気下支えに躍起で、6月以降、10カ月ぶりの利下げや、自動車や不動産市場の支援策を繰り出した。国内IT大手に雇用創出など経済貢献を求め、外資企業の呼び込みも急ぐ。だが、7月施行の改正反スパイ法に海外から懸念が噴出し、北京の日系企業幹部は「中国は外資を本当に歓迎しているのか」と真意を疑う。習政権の強権統治が景気リスクとなる構図は今後も続くとみられる。(河南省鄭州市 三塚聖平) 産経新聞
トラック運転手の残業規制強化で物流の停滞が懸念される「2024年問題」が迫る中、大型トレーラーを2台つなぐ「ダブル連結トラック」の活用が広がっている。一度に2台分の荷物を運べる車両の導入には、政府も走行区間の延長などでバックアップする。「6割は空気を運んでいる」ともいわれている荷台の積載率をあげるための取り組みも企業の中では進められており、来る問題の解決につなげたい考えだ。 大王製紙は6月、ダブル連結トラックを使った実証実験を行った。通常、一般のトラックで走行している埼玉県行田市のグループ会社の工場と、愛媛県四国中央市の大王製紙の工場の区間を走行。四国内をダブル連結トラックが走行したのは初めてという。 大王製紙は区間の道幅といった道路環境などを検証し、問題がなければ今後の定期運行を検討していくとしている。同社は「ダブル連結トラックの活用は輸送の効率化やトラックドライバーの労働負荷軽減、さらには二酸化炭素(CO2)排出量削減の効果が期待できる」と説明している。
産経新聞
財務省発表の2022年度の国の一般会計決算では、税収が前年度に比べ6%増の71兆1373億円で3年連続過去最高を記録した。同年度当初予算で計上の65・2兆円、今年度当初予算の69・4兆円を大きく上回る。
景気がよく、われわれ一般の懐具合がよくなるときに、税の自然増収が起き、民間も政府も共にハッピーとなるというのが、真っ当な国民経済だ。例えば米国の場合、2021年までの25年間で税収は1・85倍、国内総生産(GDP)は1・88倍とほぼ同じペースで増えた。わが国はどうか。
グラフは、22年度に比べた税収とGDP、家計消費(「みなし家賃を除く正味ベース」の増減額を、デフレの始まった1997年度と、コロナ前に分けて比較している。一目瞭然、25年前に比べて税収は消費税主導で20兆円余り増えたが、GDP増は19兆円余りだ。18年度比ではそれぞれ12・7兆円、5兆円余りだ。
増減率を%でみるとさらに歴然とする。2022年度の消費者物価はコロナ前に比べて3・5%上がったが、消費は2・6%しか伸びていない。消費税収は31%も増えた。GDPは25年前に比べて3・6%弱しか増えていないのに、税収は32%も伸びた。デフレ圧力が去らないために、実体経済はほとんど成長しないが、消費税増税などのおかげで税収だけが増えたのだ。
なぜ、税収と実体経済との間に大きな乖離(かいり)が生じるのか、答えは緊縮財政である。GDPは政府部門と民間部門に大別される。政府は民間の収入を税で吸い上げるが、需要不振が続いているのに財政支出を通じて民間に還流させず、多くを国債償還財源に回すのだから需要がますます細る。この結果、企業は原材料高や消費税増税の一部だけ販売価格に転嫁するのにとどめると同時に賃上げを渋る。 岸田政権が先に打ち出した「骨太の方針」では2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の文言を外す代わりに、目標達成を明記した過去の骨太に基づくと書き込み、目立たない形で黒字化目標を堅持している。歳出を抑制し、増える税収を実体経済に返さずにPB黒字化を実現する財務官僚の意図がみえみえだ。 今の税収の増加基調が続けば、25年度達成は十分可能だろう。政府が今年1月下旬にまとめた「中長期の経済財政に関する試算」によると、国と地方合わせたPBは低成長が続く場合でも5・1兆円の赤字を見込んでいるが、税収を低く見積もるのは財務省の常套手段である。22年度の税収だけでも同年度当初予算の税収を5・9兆円上回った。さらに地方税収も国の税収に準じて増加する。 産経朝刊7月11日付によれば、岸田首相は常日ごろ、「財務省の言う通りにするつもりはない」と、周囲に語っているという。ならば、この際、増える税収をきちんと民間に返したらどうか。(産経新聞特別記者・田村秀男)
沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で17日、中国海警局の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは46日連続。
産経新聞
衆院第二議員会館前で抗議活動を行う韓国野党の議員ら=10日午後、東京・永田町 (有本香氏撮影)記事に戻る10日午後のことだ。ある議員との面会のため、衆院議員会館を訪れた。国会閉会中の永田町は閑散としていたが、その静かさを破るような大声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、第二議員会館の前の車両進入口の脇に20人ほどが集まっている。そろいのネービーカラーのTシャツ姿の集団で、その中の一人の男が大声の主らしく、やかましくスピーチしていたが、内容はまったく聞き取れない。
近づいて見ると、しゃべる男の胸前には「フクシマを忘れない」というプラカードが掲げられていた。「反原発」のデモのようだと分かったが、スピーチの内容は依然聞き取れない。なぜなら韓国語だったからだ。
前述のプラカード以外、集団が着ているTシャツのバックプリントから、議員会館の塀に掲げている大きな横断幕、スピーチまですべてが韓国語だ。
暑い夏の日にわざわざ、日本の首都、国会議員のオフィス前まで出張って、通行人の誰一人解さない外国語でデモをする異様。いや異様を通り越して、滑稽ですらあった。
私がさらに近づこうとすると、議員会館前の警備員から声をかけられた。
「あちらの関係者の方ですか?」
私が「いいえ」と答えると、「では、近づかないで。タクシーを拾うならここでどうぞ」と言ってきた。
変な話である。
日本人の私が日本の街路を歩くに際して、なぜ外国人の奇妙な政治デモに遠慮しなければならないのか。
私は仕方なく、車両進入路を挟んだところからデモ隊にカメラを向けた。ズームで撮影した画像に目をこらすと、おかっぱ頭の見覚えある女性が映っている。
慰安婦に関し、史実に基づかない内容での〝反日プロパガンダ〟を主導してきた活動家で、現在は国会議員の尹美香(ユン・ミヒャン)氏らしかった。
そういえば同日午前、韓国の国会議員が「福島の汚染水投棄阻止」を掲げて抗議行動するため来日したと報じられていたと思い出す。土地の不正取引疑惑で党を除名され、いまは無所属の尹議員と、野党・共に民主党所属議員10人の計11人だ。
とはいえ、目前にいるのがその一団かどうか確信を持てずにいたのだが、いまは便利な時代である。写真をツイッターにアップするとたちまち多くの人から情報が寄せられた。
なかでも、韓国国内で歴史に関するウソをただす活動をしている作家、金柄憲(キム・ビョンホン)氏の指摘が決め手となった。
金氏は私の写真の中の人物の顔を黄色のラインで囲み、「尹美香」とただし書きを付けてツイートしていた。
これに対し私が、「金先生、私が撮ったその写真の左にいる女性は、間違いなく尹美香ですか?」とリプライして尋ねると、金氏は「はい、そうです」と返答した。
さらに、金氏は「どうせ行ったから福島の海辺に行って寿司も食べて、北海道に行ってゴルフもしてこよう~ もちろん、永遠に戻ってこなければいいのですが」ともツイートし、尹氏の金銭にまつわる疑惑や、韓国向けの反日パフォーマンスに過ぎない行動を痛烈に嘲笑った。
本邦内での外国人の政治活動については、1978年のマクリーン事件に対する最高裁判決により、「日本国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等」は憲法上保証されていないと解されている。
尹氏らの馬鹿げた活動が、わが国の意思決定や実施に影響を及ぼすとは思えないが、それでも、長年にわたり日本の国益と名誉を毀損し続けてきた人物の新たな「日本貶し活動」を止めようともしない日本当局の姿勢はやはりおかしい。
尹氏こそ、上陸拒否事由の一つ、「日本の国益又は安全を害する恐れがあると認めるに足りる相当の理由がある人」ではないか。
今後、尹氏の入国を許可しない対応こそが、当たり前の国家の姿だ。
有本 香
ありもと・かおり ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。