最大野党の蔡英文候補、安倍首相の地元・山口訪問へ…
親日をアピール
台湾の最大野党、民主進歩党(民進党)から来年1月の総統選に出馬する蔡英文主席(59)が近く山口県を訪問することが分かった。安倍晋三首相の地元を訪問することで、対日重視の姿勢をアピールするのが狙いとみられる。安倍首相サイドも次期総統の呼び声が高い蔡氏を厚遇することで、日米台のさらなる関係強化につなげたいとの思惑がありそうだ。(村上智博)
蔡氏は10月6日に東京入りし、7日午前に山口県の村岡嗣政知事と県庁で会談して地場産業の振興策などについて意見交換する。
蔡氏の来日計画が表面化したのは今月中旬ごろ。来日を希望する蔡氏側が首相の実弟、岸信夫衆院議員(山口2区)側に持ちかけたところ、岸氏側が、「道案内役を買って出た」(周辺)という。
蔡氏は山口滞在中、台湾を走る高速鉄道の車両造りも担った日立製作所笠戸事業所(下松市)で、製造現場を視察し、そのまま東京に戻る窮屈な日程となっている。あえて慌ただしい日程を組んだのは、来年1月の台湾総統選をにらんだ政局的な思惑もあるようだ 。福岡市の民間団体「台湾研究会」を主宰する永嶋直之氏(69)は、「安倍首相の地元を訪問して首相との距離が近いことを印象付けられれば、親日な台湾での総統選に有利になるとの判断が働いたのではないか」と語る。
現在台湾では、馬英九総統による対中融和策の影響で、日台関係に不協和音が出始めたことを憂慮する声も出ている。蔡氏の来日は、こうした日台双方の懸念への配慮があったとみられる。実際、馬総統は今年5月、東京電力・福島第1原発事故を理由に、科学的根拠もなく日本からの食品輸入規制を強化し、日台関係に軋(きし)みが生じた
。蔡氏と日本とは浅からぬ因縁だ。親日家で知られる李登輝元総統の外交ブレーンを務めたこともある。今年6月には米誌「TIME」アジア版の表紙を飾った。
蔡氏は今年5~6月に訪米した際も米側から破格の待遇を受けた。通常は政府庁舎外のホテルで面会する慣例を破り、オバマ政権の国務省高官は同省内に蔡氏を迎え入れた。“ポスト馬”をにらんだ米台関係の強化に向けた対応だ
首相サイドも当然、こうした各国の反応は織り込み済みとみられ、「総統選で蔡氏を側面支援したと受け取られる覚悟で来県を受け入れたのではないか」(永嶋氏)との見方もある
蔡氏来日で日米台の連携強化への期待は高まりそうだ