
アーシュラ・K・ル=グウィン 『ラウィーニア』 ←アマゾンへリンク
たぶんこれが最新作。
そして彼女の最高傑作だと思う。
グインだけど、この話はSFでもなければ魔法が使えるファンタジーでもない。
古代ローマの創立に繋がる話といわれることもある、ウェルギリウスの叙事詩 『アエネーイス』 が元ネタなのだ。
よくぞこんな偉大な作品を題材に採ることができた!!
とかいいつつ、その叙事詩については全然知らなかったんですけどね。
『ラウィーニア』 の主人公は 『アエネーイス』 の登場人物のうちどういう重要なポジションなのだろうか?
と思いきや、それが叙事詩にはほとんど出てこない人物らしい。
ラウィーニアこそ主人公だったのではないか? と思わせるくらい、グインの筆は確かなのだけれど。

叙事詩が題材で、そのことが話に出てくるのだから、話はシンプルではなく、ある意味入れ子になっている。
その複雑な感じも話に奥行きを与えている。
紀元前13世紀の頃のラティウムの人たちがどのような生き方をしていたのか、
現代人との違う点を、迷うことなくくっきりと描いているのが流石だ。
もちろんキリスト教以前だから、神が違う。 神との付き合い方も違う。
それでいて、現代の女の生き方と変わらない点を、力強く描いている。
グインといえば、やはりここが真骨頂だ。
子育てして、もうすぐ手から離れようとしているわたしには、ラウィーニアの生き方が
とても素直に心に入ってきた。
何が正しいのか、何は避けるべきなのか、言語化しようとすると、これがけっこう難しい場合がある。
そういう心の奥から出てくる善悪をラウィーニアはしっかり見分けて選択する。
そこが読んでいて気持ちよい。
女の一生、という書き方をすると陳腐なのだけれど、グインのこの話には
女の背中をしゃんとさせ、力強く生きよう、とさせる力がある。
もちろん男が読んでも充分読み応えのあると思しき男の登場人物も多い。
別に教条的な話ではない。
物語でしか表せないものが、濃厚にこの本に湛えられている。
↑一番上の写真:イリス・パリダ、今日撮影。 良い香りが漂う。 ラウィーニアは見たかしら? もうちょっと分布が北?
↑写真:ヘレボラスの鉢植え、3月20日撮影。 ヘレボラスならラウィーニアも見たかもしれない。
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