野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

水辺で小さな黄緑色の花をつけるゴキヅル

2019年10月13日 09時36分45秒 | 

水辺で小さな黄緑色の花をつけるゴキヅル。うっかりすると見逃してしまう。ゴキとは合器(碁石を入れる器)のことらしい。果実がその形に似ているのだという。面白い名前をもらったものだ。この時期にまだ果実は実っていなかったが。

(2019-09 東京都 神代植物公園) 

 

 

ゴキヅル(合器蔓)
つる性1年草
北海道-九州の水辺に生える。葉は長さ5-10cm、幅2.5-7cmの三角状披針形で、先端は尖る。葉腋から花序をだし、小さな黄緑色の花をつける。雌雄同株。花序の上部に雄花が総状につき、基部に雌花が1個つく。花は5全裂し、裂片は細長い。萼も同じ形なので、花びらが10個あるように見える。雄花の中心部には5個の雄しべがある。雌花は雌しべのまわりには退化した雄しべがある。果実は長さ約1.5cmの蓋果(がいか)で、熟すと横に割れる。なかには黒褐色の種子が縦に2個並んでいる。花期は8-11月。(野に咲く花)
学名は、Actinostemma tenerum
ウリ科ゴキヅル属


目立たない花だけに、みつけるとうれしくなるハナイカリ(入笠山シリーズ02)

2019年10月13日 08時59分24秒 | 

ハナイカリは目立たない花だ。花が黄色から緑色だからだろう。それでもよく見ると、碇の形をした花がたくさんついていて、うれしくなる。目立たない花だけに、みつけると愛着がわく。

(2019-09 長野県 入笠山) 

 

ハナイカリ  花碇、花錨
[学名] Halenia corniculata (L.) Cornaz
リンドウ科 Gentianaceae  ハナイカリ属
 茎の断面は綾のある四角形。葉は対生し、長さ2~6㎝の長楕状卵円形、3~5脈があり、全縁。葉先が尖り、葉の基部は楔形になり葉柄に続く。茎上部の葉腋の集散花序に長い花柄のある淡黄色花を上向き~横向きにつける。花冠の先は4裂して尖る。花冠の基部には淡黄色~白色の4個の距があり、錨形に見える。距は長さ3~7㎜。萼は4深裂し、線形の裂片が距の間から尖って見える。蒴果は長さ6~10㎜。種子は長さ約1㎜。2n=22
[花期] 8~10月
[草丈] 10~60㎝
[生活型] 越年草
[生育場所] 山地の草原
[分布] 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア


きれいな花をつけるニラ

2019年10月13日 07時37分38秒 | 

ニラは野菜としては馴染みだが、きれいな花をつけることはあまり知られていないようだ。万葉の頃はミラと呼ばれていたらしい。それが中世の頃にニラとかわり、女房言葉では文字数からきたフタモジという名前で呼ばれたらしい。面白い由来である。歴史の古い植物だけに俳句でも好まれた季題である。「つれづれにとればあつき手韮の花  飯田龍太」はうまいかも。

(2019-9 川崎市 道端) 

 

 

 

ニラ(韮、韭、Allium tuberosum)はネギ属に属する多年草。緑黄色野菜である。


名称
『古事記』では加美良(かみら)、『万葉集』では久々美良(くくみら)、『正倉院文書』には彌良(みら)として記載がある。このように、古代においては「みら」と呼ばれていたが、院政期頃から不規則な転訛形「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。近世の女房言葉に二文字(ふたもじ)がある。

方言では、ふたもじ(二文字。千葉県上総地方)、じゃま(新潟県中越地方)、にらねぎ(韮葱。静岡県、鳥取県などの一部)、こじきねぶか(乞食根深。愛知県、岐阜県の一部)、とち(奈良県山辺郡、磯城郡)、へんどねぶか(遍路根深。徳島県の一部)、きりびら(沖縄県島尻郡)、ちりびら(沖縄県那覇市)、きんぴら(沖縄県那覇市)、んーだー(沖縄県与那国島)などがある。

特徴
夏には葉の間から30 - 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 - 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 - 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。

本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年前以上前に栽培化されたと考えられる。この種とニラを同一種とみなす場合もある。株分けまたは種によって増やす。

全草に独特の匂いがある。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。

韮 の例句 
つれづれにとればあつき手韮の花  飯田龍太
なつかしき故の頬杖韮の花 高野素十
ほとゝぎす野韮ぬく子も居ざりけり 寥松
わが苦き歌韮の花韮の夜明 佐藤鬼房
人去つて風残りけり韮の花 岸田稚魚 負け犬
傘さして韮つむ人のにくさ哉 政岡子規 韮
厄介と言へば死ぬこと韮の花 藤田湘子 てんてん
吹きこぼれたる雑炊の韮匂ふ 清崎敏郎
夕煙の端山恋しや韮の花 佐藤鬼房
家畜倦み山風なごむ韮畠 飯田蛇笏 山響集
島の雨執ねく降れる韮の花 清崎敏郎
巾でみずから縊る須弥山麓の韮 橋閒石 風景
帋漉も雨乞ふくれや韮もゆる 鈴木道彦
忘れんや韮噛んでわかれゆきし日を 加藤秋邨
怠けては墓場をあるく韮の花 秋元不死男
手籠は韮 纏足老婆がまた振り向く 伊丹三樹彦
文人の自殺のむかし韮の花 鷹羽狩行
暑に負けて過すに韮の花咲ける 細見綾子
梨老いて花まばらなり韮畠 政岡子規 梨の花
流人井戸涸れて久しや韮の花 清崎敏郎
流氓として祖母の名と韮の花 佐藤鬼房
牡丹の下草韮に花咲きし 細見綾子
牡丹の根元の韮の花も咲く 細見綾子
牡丹散る根元の韮の花の上 細見綾子
窓より見ゆ二月の屋根と韮畑 草間時彦 中年
花韮も春の惜ししと紫に 後藤比奈夫
花韮や歩いて行けば猫神社 雨滴集 星野麥丘人
落第の始末にゆくや韮の雨 飴山實 辛酉小雪
貧農は弥陀にすがりて韮摘める 飯田蛇笏 霊芝
足許にゆふぐれながき韮の花 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
里くらしの日が少しのび韮の崕 右城暮石 句集外 昭和九年
野韮の香置く露の香にたちまさり 山口誓子
長病みの医師こそかなし韮の花 相馬遷子 山河
雑炊の韮片よせて風邪長し 石川桂郎 高蘆
韮くふて来てさむしろのすゞみ哉 成田蒼虬
韮つんで食べんと思ふ牡丹どき 細見綾子
韮に花遠墓原に風かよひ 三橋鷹女
韮の花ことごとくゆれ蜂縋り 山口青邨
韮の花ひとかたまりや月の下 山口青邨
韮の花坂としもなく息あへぐ 石田波郷
韮の花女人禁ぜし境に入る 山口誓子
韮の花行きより帰り足早に 岸田稚魚 紅葉山
韮の花長生きの母ありがたし 星野麥丘人
韮の花鷺群立つと曉けゆけり 角川源義
韮一本われの眼を扇ぐなり 飯島晴子
韮刈つておほまがときをけむりゐる 佐藤鬼房
韮剪つて酒借りに行く隣哉 政岡子規 韮
韮咲くや一病を得て食大事 岡本眸
韮咲くや夫呼ぶらしも月の鷺 角川源義
韮咲くや空かたあかり鷺飛べり 角川源義
韮咲くや食べ読み書くに卓一つ 岡本眸
韮咲けばまたその花もくらはんと 山口青邨
韮咲けり牡丹散りたるあとの庭 細見綾子
韮採りにくる神々の深靴よ 飯島晴子
韮摘んで韮臭き手を夫婦かな 星野麥丘人
韮生えて枯木のもとの古畑 村上鬼城
韮畑や針金張つて御薬園 村上鬼城
韮粥にわすれぬ落し味噌なりし 能村登四郎
韮臭い身となり 彼我に微笑湧く 伊丹三樹彦
韮臭き僧と端山の月を見たり 橋閒石 和栲
韮雑炊番茶ぬるめにたまはりぬ 星野麥丘人
飴なめて忿りうすめる韮の花 上田五千石 森林
鹿みちや韮に交りて蕗の薹  白雄