野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

蜂も大好きなハンショウヅル

2019年05月10日 15時32分19秒 | 
道端を歩いているとフェンスの向こうの林の中から、
おやこんなところに、とハンショウヅルが顔をのぞかせていた。
大きな蜂が花に頭を突っ込んで蜜を集めているところだった。
身近なところでも気を付けているといろいろな花がみつかるものだ。
(2019-05 神奈川県川崎市 林間)




ハンショウヅル
ハンショウヅル(半鐘蔓、学名: Clematis japonica Thunb.[1])は、キンポウゲ科センニンソウ属に分類されるつる性低木の1種。和名は、下向きに咲く花の形を半鐘にたとえたことに由来する[2]。

特徴
木質のつる植物で落葉性[3]。葉は長さ4-9 cmの卵形の三出複葉で対生する[4]。花柄の長さは6-12 cmで、先端に紅紫色の鐘形の花を1個下向きに付ける[3][4]。花期は5-6月[4]。痩果は長さ約6 cmの長卵形で、花柱の長さは3-4 cm[3]。


花柄の先端に鐘形の花をつける


分布
日本の本州、九州に分布する[4]。主に温帯の地域に分布し、林縁や林内に生育する[3]。

ぱっと目を引く勿忘草の群落

2019年05月10日 09時44分37秒 | 
ルリソウに似た勿忘草だが、群生しているとぱっと目を引いてすごい。
思わずうれしくなってしまう。
東高根森林公園では大事にされているようだ。
名前のおかげもあって優れた俳句も多い。英語名はforget-me-not
(2019-05 神奈川県川崎市 東高根森林公園)



ワスレナグサ
ワスレナグサ(勿忘草、忘れな草)は、広義には、ムラサキ科ワスレナグサ属の種の総称。狭義には、ワスレナグサ属の一種、シンワスレナグサ(学名:Myosotis scorpioides)の和名。ただし、園芸業界でワスレナグサとして流通しているのは、ノハラワスレナグサ (M. alpestris)、エゾムラサキ (M. sylvatica)、あるいはそれらの種間交配種である。一般には、広義の意味で称される。季語は春である。
特徴
ヨーロッパ原産で、北半球の温帯から亜寒帯(ユーラシア大陸・アフリカ大陸・オセアニア)に約50種が分布している。日本に渡来したのは、明治時代に園芸業者がノハラワスレナグサ (M. alpestris) を輸入したのが最初と言われている。しかしワスレナグサ属ということでは、日本には元来、エゾムラサキ (M. sylvatica) 一種が自生分布している。

野生化して各地に群生しており、日本全国(北海道・本州・四国)に分布している。一般に日当たりと水はけのよい湿性地を好み、耐寒性に優れているが、暑さには弱い。二年生もしくは多年生植物の宿根草であるが、日本で栽培すると夏の暑さに当てられて枯れてしまうことから、園芸上は秋まきの一年生植物として扱われる(北海道や長野県の高地など冷涼地では夏を越すことが可能である)。

花期は3 - 5月(冷涼地では4月 - 7月)。春から夏にかけて薄青(紫)色・鮮青(紫)色(園芸種はさらに白色・ピンク色など)をした6–9ミリ径の小さい5弁の花を咲かせ、花冠の喉に黄色・白色の目(小斑点)をもつ。花は多数でさそり型花序をなし、開花とともにサソリの尾のような巻きは解けて真っ直ぐになる。

高さは20–50センチになり、葉が互生に付く。葉は細長く平らで、長楕円形(葉の中央付近が最も葉の幅が広い)、もしくは倒披針形(葉先近くが最も葉の幅が広い)である。葉から茎まで軟毛に覆われており、属名の Myosotis は、そうした葉の様子(細長く多毛で柔らかい)が、ネズミの耳に似ていることに由来している(ギリシャ語の「二十日鼠 (myos) +耳 (otis)」が語源)。

勿忘草 例句

すぐ横を勿忘草の水流れ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
ふるさとを忘れな草の咲く頃に 成嶋瓢雨
わたしひとり勿忘草のこちら側 浅利康衛
サマルカンド・ブルーはなみだ勿忘草 佐々木とみ子
シヤンソンを聴く薄明の勿忘草 きくちつねこ
バイカルの勿忘草に空高し 依田明倫
一面の勿忘草に日は淡し 轡田進
勿忘草いよいよ口を閉ぢて病む 石田波郷
勿忘草そこが日溜まり司祭館 渡辺乃梨子
勿忘草たちまち迷ふ出湯の径 児玉 小秋
勿忘草にいろいろ別れありにけり 赤松寿代
勿忘草の法體の漢なぞ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
勿忘草わかものゝ墓標ばかりなり 石田波郷
勿忘草人は恋にも死ににけり 林 翔
勿忘草光りて呼ぶはちさき水面(みお) 香西照雄
勿忘草利根の離村にやさしかり 大谷雅子
勿忘草司祭の館丘に寂ぶ 小池文子 巴里蕭条
勿忘草夫に贈りし日は遠く 堀内民子
勿忘草神々の座に氷河照り 有働亨 汐路
勿忘草穂高のゆらぐ泉あり 澤田 緑生
勿忘草蒔けり女子寮に吾子を入れ 堀口星眠 営巣期
勿忘草霧に咳き人行けり 堀口星眠
夕さりぬ勿忘草へ山の風 伊藤敬子
奏でる海へ音なく大河勿忘草 中村草田男
小さう咲いて勿忘草や妹が許 村上鬼城
少し長け勿忘草の色減りし 稲畑汀子
忘れな草冷ゆるラファエルの石棺に 小池文子 巴里蕭条
忘れな草更けてゐし寺の夜風にも 中川宋淵
情夫待つ勿忘草の風の中 高橋彩子
摘までゆく勿忘草よふるさとよ 大久保橙青
母の忌に勿忘草を姉さげて 南 耕風
水神へ勿忘草の日向道 伊原正江
消ぬばかり勿忘草の風に揺れ 菊川芳秋
美しき勿忘草を植ゑ替へし 枌 さつき
船室の勿忘草のなえにけり 佐藤眉峰
花よりも勿忘草といふ名摘む 粟津松彩子
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ 古賀まり子 洗 禮
遠く細し勿忘草の径のこる 田島誠壽
雨やさし勿忘草に降りにけり 佐藤美恵子
雨晴れて忘れな草に仲直り 杉田久女
雫して勿忘草の色褪せず 佐藤きみこ

勿忘草 補遺

この花に勿忘草といふ名あり 清崎敏郎
その中の勿忘草や植木市 石田勝彦 雙杵
わがための勿忘草を妻の墓 森澄雄
わすれな草濃きもえぞ地と思ふかな(北海道) 細見綾子
雨晴れて忘れな草に仲直り 杉田久女
応へまし勿忘草がそろひ揺るる 中村草田男
宮殿の勿忘草に森開け 稲畑汀子
銃棄ててからのペン歴 勿忘草 伊丹三樹彦
色濃くて勿忘草も蜑のもの 石田勝彦 雙杵
奏でる海へ音なく大河勿忘草 中村草田男
篤農の妻の単衣の藍微塵 星野麥丘人
無理矢理に勿忘草をくるるなり 後藤比奈夫
勿忘草「蒼白傲岸婦女」いまも遥か 中村草田男
勿忘草いよいよ口を閉ぢて病む 石田波郷
勿忘草の春はめぐりて五十三 水原秋櫻子 蘆雁
勿忘草光りて呼ぶはちさき水面 香西照雄
勿忘草日本の恋は黙つて死ぬ 中村草田男
椽ありて墓地の勿忘草を摘む 岡本眸
纜やなづな隠れに勿忘草 中村草田男

日常の生活に思わぬ色を添えてくれるノアザミ

2019年05月10日 09時28分22秒 | 
どこにでも咲いていて、華やかな色てわたしたちを慰めてくれるノアザミ
したしさと愛らしさで多くの俳句がつくられた。

あざみあざやかなあさのあめあがり 種田山頭火 草木塔
忘れられた女とならず花薊 谷口桂子
あんたがたどこさ満州野の薊ぐさ 村岸明子

のような句がいい。
(2019-05 神奈川県川崎市 道端)






ノアザミ(野薊、学名: Cirsium japonicum[1])はキク科アザミ属の多年草。


特徴
茎の高さは0.5-1mになる。

葉は羽状に中裂し、縁にとげがある。茎葉の基部は茎を抱く[2]。花期にも根生葉は残っている。

花期は5-8月で、アザミ属の中では春咲きの特徴をもつが、まれに10月まで咲いているものも見られる。花(頭状花序)は筒状花のみで構成されており、直径は4-5cm[2][3]。花の色は紫色であるが、まれに白色のものもある[2]。花を刺激すると花粉が出てくる[2][3]。総苞はよく粘る。

分布と生育環境
アザミ属は、分布域が比較的広いものと極端に狭い地域固有種がある。ノアザミの分布域は広く、日本の本州、四国、九州の草原や河川敷に見られ、アジア大陸にも変種が分布する。


薊の花の例句

あざみあざやかなあさのあめあがり 種田山頭火 草木塔
あざみ濃し芭蕉もゆきしこの道を 星野立子
あんたがたどこさ満州野の薊ぐさ 村岸明子
うつぶせのままでは死ねない花薊 玉菜ひで子
かぼそきくらしの壺へ追憶の薊を妻が忘れず 橋本夢道 無禮なる妻抄
くもり来しひかりのなかの薊かな 久保田万太郎 流寓抄以後
けふもまたなまじ天気のあざみかな 久保田万太郎 流寓抄
さいはての五島岬の花あざみ 福田清人 坂鳥(附・生い立ちの記)
つやつやひれあざみうちの玄関だ 北原白秋
てのひらが薊をけものかと思ふ 西野理郎
ふれてみしあざみの花のやさしさよ 星野立子
まへうしろ愁ひの雨の濃き薊 原裕 葦牙
ゆく春やとげ柔らかに薊の座 杉田久女
ゆふかぜにゆるゝ気のなき薊かな 久保田万太郎 流寓抄以後
よべ過ぎし崖におどろく露薊 林原耒井 蜩
わが儘にのびて花さく薊かな 永井荷風
スター・ウォーズ薊に唾す中学生 菊川貞夫
フィヨルドのひよろひよろ薊太陽病む 有働亨 汐路
一茎のあざみを挿せば野のごとし 黒田杏子 木の椅子
一輪の薊を持ちし手が疲る 山口波津女 良人
下り鮎一聯過ぎぬ薊かげ 茅舎
世をいとふ心薊を愛すかな 薊 正岡子規
世移れる廟の薊となりにけり 尾崎迷堂 孤輪
乳房なす丘よ薊の咲き次げり 金箱戈止夫
人恋し人疎しや野の薊 小熊佳津子
今日を生き薊に旅の口漱ぐ 野見山朱鳥
典厩の墓にはりつき萌薊 西本一都 景色
切りし薊はさみでつまみ持ちにけり 飯沼衣代
初夏や蓬が中の白薊 高田蝶衣
十字架の倒れたる地に薊咲く 仙田洋子 橋のあなたに
午前五時あざみにとげのなかりけり 伊藤柏翠
双眼鏡遠き薊の花賜(たば)る 山口誓子(1901-94)
回廊は石の回廊花薊 塩川雄三
地底はしる火気に開きし花薊 能村研三
壷にして葉がちに秋の山あざみ 飯田蛇笏
夏草や薊を幽かなるものに 尾崎迷堂 孤輪
夕影に薊淋しや野の厩 高田蝶衣
夢なりし城も薊の野となりぬ 阿波野青畝
大原女の三人休む薊かな 野村喜舟 小石川
大薊死海へ下る細き道 有馬朗人 天為
天上に映写幕はる花薊 杉野一博
太陽が焼きし薊の骨細工 小檜山繁子
妻が持つ薊の棘を手に感ず 日野草城(1901-56)
安曇野の薊の棘に触れており 武居武志
寄れば刺すとげをかくしてあざみ咲く 小野さよ子
富士あざみより絮ひとつ小春空 皆吉爽雨
屋根の上にペンペン草やら薊やら 篠原鳳作
山薊昏きこゝろに刺さりくる 中島斌男
岩が岩に薊咲かせてゐる 種田山頭火 草木塔
岩子ねむし膝の薊の刺にぶり 林原耒井 蜩
巌頭の薊や海の雲丹のごと 中村草田男
川鼠顔を干し居る薊かな 内田百間
干し草のなかの薊は生乾き 今瀬剛一「晴天」
志度寺へ三里ときゝしあざみかな 久保田万太郎 流寓抄
忘れねばならぬ旅きて野のあざみ 稲垣きくの 黄 瀬
忘れられた女とならず花薊 谷口桂子
我れにかもぬれて花さき薊草 中塚一碧樓
振袖をかざして通るあざみ哉 薊 正岡子規
捕虫器に伏せし薊の蝶白し 杉田久女
旅の傘置く辺も月の薊咲き 神尾久美子 掌
暁の風薊を摘みて細る妻 池上樵人
朝あざみ花去来のむすめけむりなり 阿部完市 純白諸事
末枯るゝ杉の下道歯朶薊 正岡子規
村あげて馬市立てり花薊 山田春生
林沼の日の静かさや花あざみ 飯田蛇笏 山廬集
森の神泉におはす薊かな 飯田蛇笏 山廬集
死の谷(デスバレー)の廃鉱に咲く花薊 仙田洋子 雲は王冠
水かへて薊やいのち長かりし 久保より江
水音の消えては生れあざみ咲く 稲畑汀子
汁に煮立つる色保つ薊山風に 河東碧梧桐
波音やひるの薊のかげもなし 田中裕明 花間一壺
泣きじやくる赤ん坊薊の花になれ 篠原鳳作 海の旅
海鳴や薊を国の花として 日原傳
深山薊は黙して居れば色濃くなる 加藤知世子 花寂び
湖を横ぎり着きにけり薊 東洋城千句
滅びしは城のみならず花薊 大木あまり 雲の塔
滝に咲きすでに初雪みし薊 神尾久美子 掌
滝径やわきて露けき花薊 西島麦南 人音
濃薊に足拵へをかためけり 岡崎莉花女
濡れ青葉いよいよ重く薊老ゆ 林原耒井 蜩
濤音やしづかに絮となる薊 鷲谷七菜子 雨 月
灯台の見えゐて遠しあざみ咲く 勢島れい子
炎えるかもしれぬ薊を束ねおり 永井江美子
熔岩の原薊を黒く咲かしめて 橋本多佳子
燈火なき乱のいにしへ花あざみ 三橋敏雄 *シャコ
畔薊ぬぎ揃へある草履かな 西山泊雲 泊雲句集
畦塗にぬりこめられぬ薊の葉 西山泊雲 泊雲句集
畦塗に暾勁き薊露おびぬ 西島麦南 人音
畦塗りに暾勁き薊露おびぬ 西島麥南 金剛纂
畦辿りあざみ鮮し古墳群 齊藤平伍
相抱くや春のいかづちあざみいろ 小松崎爽青
石原やくねりしまゝの花あざみ 白雄
石室の味噌汁の実の薊の芽 高濱年尾 年尾句集
第一花王冠のごと薊咲く 能村登四郎
紀の海の紺極まりて薊咲く 高橋好温
紀見峠の薊なびかす風に立つ 鈴鹿野風呂
紫の花に刺ある薊哉 薊 正岡子規
肩に背にまつはる蝶や薊煎る 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
花あざみ露珊々と葉をのべぬ 飯田蛇笏 春蘭
花薊われら稜線にうきあがる 佐野良太 樫
花薊八達嶺の風の中 上野さち子
花薊夕日の前を人馬ゆく 柴田白葉女 花寂び 以後
花薊寝腹作ると啜る蕎麦 石塚友二 方寸虚実
花薊小鳩くるみの歌きこゆ 柢 太郎
花薊広野をめぐるミサの鐘 柴田白葉女 遠い橋
花薊毛虫生るゝ思ひあり 薊 正岡子規
花薊盛夏の露に燃えにけり 西島麦南 人音
花薊蝶とまらんとして高く 高浜虚子
花薊露珊々と葉をのべぬ 飯田蛇笏
茅ほけて薊花濃し畦づたひ 飯田蛇笏 山廬集
茎枯れて花に蝶居る薊かな 島村はじめ
草原の薊もち込む旅寝かな 永島靖子
草深くなりぬ薊の花一本 臼田亜浪 旅人
荘の名は「あざみの館」風通し 波多野寿子
蒲公英や薊に影をうち重ね 小杉余子 余子句選
蓑しいて憩ひ煙草や畔薊 西山泊雲 泊雲句集
蓑をきて曳きずり行く児畔薊 西山泊雲 泊雲句集
蓬薊これより草の茂るかな 尾崎迷堂 孤輪
薊かげ逃げし鯰を見つけたり 西山泊雲
薊かげ逃げし鯰を見付たり 西山泊雲
薊が折れてゐる片岨の乏しい往き来 梅林句屑 喜谷六花
薊に棘あるぞ用心してかかれ 高澤良一 寒暑
薊に蜂がかぢりついてゐて雨かわく シヤツと雑草 栗林一石路
薊より羽虫こぼるる*うん気かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
薊を折つて花を頬に触れしなど 原石鼎
薊動く度に山や沼も仲間 森田高司
薊咲き下田通ひの船がゆく 臼田亞浪 定本亜浪句集
薊咲き断崖神の産屋置く 神尾久美子 掌
薊咲く真昼の雨のしづけさに 岡部名保子
薊嗅ぐわがうちの北溟かりき 河原枇杷男
薊嗅ぐわが内の北冥かりき 河原枇杷男 流灌頂
薊挿し兵たくましく午睡せり 横山白虹
薊摘んで花の巧を眼に見入る 篠原温亭
薊枯るまことや鵙の贄刺され 松村蒼石 春霰
薊濃き薄暑の雨の花車 西島麦南 人音
薊濃しはくさんふうろの中に濃し 八木林之介 青霞集
薊濃し磐余の道と聞きしより 八木林之助
薊濃し草川ときにもりあがり 田村了咲
薊見る実相院のまひるかな 波多野爽波 『湯呑』
薊野やはや灯を入れし水車守 芝不器男
薊野やレースのやうな雲生まれ 吉原文音
蚤ふえし家に薊を活けにけり 百合山羽公 故園
蛇の衣かゝれる蓬薊かな 岡本松浜
蜘の網煙とまとひ日の薊 中村草田男
蜻蛉とまる薊の一つ一つかな 増田龍雨 龍雨句集
触れてみよ憂ひ薊に多かりき 河内静魚
足摺のあざみのほかは海霧の中 庄中健吉
軛つけて草はむ牛や畔薊 西山泊雲 泊雲句集
追憶は切子グラスの花薊 和田季洋
透く海にふるるばかりの花薊 沢木欣一
運河温み大地に薊復活す 神尾久美子 掌
道のべにみづく墓ある薊かな 吉武月二郎句集
野あざみの一本吹かれ獄門所 谷藤政子
野あざみや弔いの旗見送りぬ 足立美和子
野に出でし女が一人花薊 横井かず代
野を分けて薊の傷の二つ三つ 藤原たかを
野反湖の畔の薊とげやさし 豊田よしを
野薊にしばし憩へり醫師通ひ 石田あき子 見舞籠
野薊にぴしりぴしりと夕立来ぬ 内藤吐夫
野薊の場所を静かに支持すなり 攝津幸彦
野薊の絮立つ疳の虫封じ 宮坂静生 樹下
野薊は花を残して立ち去れり 五島高資
野薊や島に残れる撥ね釣瓶 白井新一
野薊や朱の痕残す摩崖仏 細井房俊
野薊を潰して頭蓋を楽にせん 攝津幸彦
針のとぶレコード川のあざみかな あざ蓉子
鎌腰に老のいでたち花あざみ 米田一穂
長城や薊の揺れが少女めき 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
閑古啼くや深山薊の花の色 石井露月
降り出でて淡路は近し薊咲く 角川源義 『口ダンの首』
陰晴や薊の穂絮汽車に入る 加藤楸邨
隠岐あざみ潮の匂の牧展く 佐藤ちさと
雨の薊女の素足いつか見し 下村槐太 天涯
霹靂に歯向かへるや庭の大薊 内田百間
靄深く日のこもり居り花薊 秋元草日居
風に咲く薊荒寥たる孤独 内藤吐天 鳴海抄
高原の薊はまぎれ易き色 稲畑汀子 汀子句集
鳳蝶の掴み放せし薊濃き 稲垣きくの 牡 丹
黄鶲や沢辺に多き薊の座 水原秋櫻子

薊の花 補遺

いざ下りて踏ん鈴鹿の鬼薊 馬場存義
かなぶんぶん雨の薊にねむりけり 阿波野青畝
しくしくと虫載せてゐる鬼薊 飯島晴子
ドイツ薊一花一瓶めでにけり 阿波野青畝
ひしひしと野に枯は満つ霜薊 草間時彦 櫻山
まへうしろ愁ひの雨の濃き薊 原裕 葦牙
みち~の薊の花を今思ふ 高野素十
ゆく春やとげ柔らかに薊の座 杉田久女
らくがきに句碑は汚れし富士薊 富安風生
われにかもぬれて花さき薊草 中川一碧樓
磯釣と舞蜩相博つ枯薊 水原秋櫻子 晩華
雨の薊女の素足いつか見し 下村槐太 光背
雨細し草の葉細し花薊 川端茅舎
円形墳あり濃薊に裾をひき 中村汀女
温泉山路のおほつゆたるる鬼薊 飯田蛇笏 春蘭
下り鮎一聯過ぎぬ薊かげ 川端茅舎
花あざみ露珊々と葉をのべぬ 飯田蛇笏 山響集
花薊おのづと走る徹夜の目「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
花薊寝腹作ると啜る蕎麦 石塚友二 方寸虚実
花薊盛夏の露に燃えにけり 西島麦南 人音
花薊毛虫生るゝ思ひあり 正岡子規 薊
海神のため円座敷く鬼薊 山口誓子
茅ほけて薊花濃し畦づたひ 飯田蛇笏 山廬集
巌頭の薊や海の雲丹のごと 中村草田男
岩が岩に薊咲かせてゐる 種田山頭火 草木塔
鬼薊ごう~と枯れ由布の裾 野見山朱鳥 曼珠沙華
鬼薊金剛力に枯れにけり 野見山朱鳥 曼珠沙華
鬼薊咲けり山号幽霊山 山口誓子
鬼薊憂悶つねに更らしき 伊丹三樹彦
亀ケ城薊むらさきに梅雨ふかし 水原秋櫻子 蘆刈
近景薊 遠景傘松 僕埋葬 伊丹三樹彦
畦塗に暾勁き薊露おびぬ 西島麦南 人音
畦塗りに暾勁き薊露おびぬ 西島麥南 金剛纂
枯れてゆく島の薊をたゝく雨 清崎敏郎
枯薊心頭の花燃えにけり 川端茅舎
荒魂の惹かるゝ天地薊原 高屋窓秋
降り出でて淡路は近し薊咲く 角川源義
高原の薊はまぎれ易き色 稲畑汀子
今日を生き薊に旅の口漱ぐ 野見山朱鳥 天馬
妻が持つ薊の棘を手に感ず 日野草城
山城や薊はなやか霜の前 山口青邨
山田植う人のほとりの薊かな 原石鼎 花影
山百合も薊も莟句碑の前 山口青邨
山薊犬が噛み合ふ猪の肉 水原秋櫻子 玄魚
四山みな烽火台立つ薊かな 加藤秋邨
紫の花に刺ある薊哉 正岡子規 薊
傷み揚羽に 崖の薊の吹かれ通し 伊丹三樹彦
振袖をかざして通るあざみ哉 正岡子規 薊
森にゐて薊は白毛飛ばすなり 三橋鷹女
森の神泉におはす薊かな 飯田蛇笏 山廬集
水平を湖は保てず富士薊 上田五千石『琥珀』補遺
世をいとふ心薊を愛すかな 正岡子規 薊
青嵐や芒の中の花薊 川端茅舎
石原やくねりしまゝの花あざみ 加舎白雄
切取て和紙にひんまく薊かな 三宅嘯山
双眼鏡遠き薊の花賜る 山口誓子
草深くなりぬ薊の花一本 臼田亜浪 旅人 抄
太陽のしたに是はさびしき薊が一本 荻原井泉水
第一花王冠のごと薊咲く 能村登四郎
滝径やわきて露けき花薊 西島麦南 人音
沢跳びの二の腕つかむ 鬼薊 伊丹三樹彦
淡路あをし旅寝の果ての薊咲く 角川源義
箪笥くろく挿すむらさきの花薊 山口青邨
蜘の網煙とまとひ日の薊 中村草田男
低咲きの岬の薊大海原 山口誓子
庭薊莟あらたに初あらし 山口青邨
天城峰に道岐るゝや花あざみ 村山故郷
燈火なき乱のいにしへ花あざみ 三橋敏雄
頭運びの牛糞 薊は黄に咲いて 伊丹三樹彦
蚤ふえし家に薊を活けにけり 百合山羽公 故園
膝をいましめ 灯台くだる 鬼薊 伊丹三樹彦
富士見えず富士薊見て山登る 阿波野青畝
富士薊するどき班もち萌え出でぬ 山口青邨
富士薊触れざる指を刺しにけり 富安風生
富士薊触れんとしたるのみに刺す 富安風生
富士颪薊に絮を残さざる 山口誓子
捕蟲器に伏せし薊の蝶白し 杉田久女
歩みつづけて胸挿しの薊萎え 山口誓子
頬に触れて薊はいたし機音ちかし 加藤秋邨
末枯の中に花咲く薊哉 正岡子規 末枯
末枯るる古墳薊の花残す 山口青邨
末枯るゝ森の下道齒朶薊 正岡子規 末枯
末枯るゝ杉の下道齒朶薊 正岡子規 末枯
夢なりし城も薊の野となりぬ 阿波野青畝
木の葉水に薊の花の染まり咲く 右城暮石 句集外 昭和九年
野薊に 不動を刻む石片 飛び 伊丹三樹彦
溶岩と火山灰育ち手強き富士薊 百合山羽公 樂土
葉も刺もこゝろには似ぬ薊かな 支考
来てみれば百済野に咲く薊かな 日野草城
林沼の日の静かさや花あざみ 飯田蛇笏 山廬集
棘痛き薊を愛す何の罪科 三橋鷹女
濤音やしづかに絮となる薊 鷲谷七菜子 銃身
澤薊むらさきに岳は雪被たり 水原秋櫻子 霜林
薊と小店太宰の故郷へ別れ道 中村草田男
薊の花にじつと近く寄つた時日のいろ 中川一碧樓
薊の棘火つかみしかに痛かりき 中村草田男
薊ぽつかり泉の面を霧流れ 大野林火 雪華 昭和三十四年
薊むらさき軽便汽笛よく鳴らす 山口青邨
薊むらさき水子地蔵に咲きそへる 山口青邨
薊もて打つ男あり輝けり 中村苑子
薊より立ちて静かなほむらかな 加藤秋邨
薊見る実相院のまひるかな 波多野爽波
薊咲き下田通ひの船がゆく 臼田亜郎 定本亜浪句集
薊咲き墓も息づく山の雨 水原秋櫻子 蓬壺
薊咲く富士の鉄砲水の跡 鷹羽狩行
薊草第一の蕾むらさきに 山口青邨
薊長け何と言ふべきものしづけさ 右城暮石 句集外 昭和十七年
薊濃き薄暑の雨の花車 西島麦南 人音
薊嗅ぐひとには見せぬ顔をして 加藤秋邨