せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

弥終夜(イヤハテヤ)

2007-04-07 01:59:11 | その他
今日が山だってさ、俺も此処まででさァ。はは、と笑った声はもう覇気どころか生気さえ感じられない。折角誕生日迎えた後だってのに。そう呟いてなんとも悔しそうに顔をゆがめた。こちらも。

「俺より先に死ぬとは思ってなかった」
「奇遇ですねェ。俺もあんたより先に死ぬとは思ってませんでしたさァ」

あんなに怨んでたのに案外あっけない。憎まれ子神固しなんて誰が言い出した。確かにこいつはかなりの憎まれ子だがこんなにあっけないじゃねェか。そんな嘘を言い出したのは誰、だ。

「あーあ、近藤さんはどうしてんだろな。最期に看取りにも来ないなんて酷ェや」

こうしていると死期が近いなど誰がわかるだろうか。声はもうほとんど掠れているけれど。・・そして近藤さんはもう居ない、病に伏せていて、隊員も出払ってたから誰も、というよりは、こいつが結核だから。知るわけもないが。

「・・・看取ってくれんのが土方さんなんて嬉しくもなんともねェや」
「来てやっただけでも喜べ、お前何の病気か知ってんだろ」
「結核。空気感染するんでしょう?」
「そういうことだ。近藤さんを近づけるわけにはいかねェんだよ」

カチ、と煙草に火を点ける。土方さん、病人の前でさァ。止めてくだせェ。あ?うるせえな。んだと土方コノヤロッ・・げほ、っごほ!!
ああ死期が近いってのは本当だったのか。真っ白い布団が真っ赤に染まる。思わず背中に手を伸ばすと叩かれた。そして睨まれている。

「触んねェでくれ、どうせ俺は死ぬんだ。意味なんかありやしねェ」
「・・お前、」

いつからそんなに、そう言いかけてこれだから土方は嫌いでさァ、という声で先が言えなくなる。あくまで最期まで嘘を吐き通したいらしい。馬鹿か、と呟くと意味がわかりませんぜ、と聞こえた。

「ああ、ほんと、土方なんて、ついてねェや。お前なんか、マヨネーズの角に頭、ぶつけて、死ね」
「豆腐だつーの」
「知ってらァ。土方バージョン、でさァ」

くく、と笑う。どちらも。リン、と早過ぎる鈴虫が鳴いた。息が浅くなっている。もうすぐ、か。そう思いつつふう、と煙を吐く。

「土方。姉上に、何て顔向け、すればいいんでさァ」
「・・・」
「結局、最期まで、あんたを、殺れませんでした」

こんな野郎でも居なくなると寂しいかもしれない。土方覚悟ォォ、もう五月蝿い日は、来ないのだろう。今日限り、金輪際。

「まあ、」

「殺す気なんて、」

「元々、」

「ありません、でしたけどねィ」

ぼんやりと呟く。知っている、本当に殺したければ寝込みでもなんでも襲うはず。こいつはそういう男だ。ああそうかよ。夢現に答えた。

「何十、年も、八つ当たり、し、続けて、すみません、でしたねェ」
「俺にだって落ち度があったから、八つ当たりされたんだろ。別に謝られることじゃねェよ」
「・・すみません、でしたねィ」

ぼんやりと呟いた。総悟、お前はいつから、そんなに、弱くなった。サディスティック星の王子のじゃなかったのかよ、名が泣くぜ。

「本当は、何もしてやれなかった、自分、が、憎かったんでさァ。でも、それと同じくらい、あんたは、好きじゃねェや」
「悪かったな」
「別に、謝んねェで、くだせェ」


ぼそり、その後に呟かれた声は耳に届くことがなかった。



土方さん、弥終が見えまさァ。



―――
沖田が土方より先に結核で死ぬなんてのは考えられない(待
ていうかこう、何かむず痒くて気持ちの悪い話だな(殴

問題点
一、結核の人の側に居てはいけない(伝染る)。
一、沖田が土方に居て欲しいはずがない(恨み仇)。
一、土方はそんなことを言いそうにも無い(俺より先に)。
一、鈴虫ほんと早過ぎだコラ。

近藤が玄米を食べさせていれば沖田、死ななかったかも。
あと沖田が30年でも永く生きてれば、結核、治ったかも。
(1882年コッホという人が病原菌を見つけて、)

まあ、生きてても60歳でお先真っ暗なんですが!(待
過ぎたことだしあれこれ言ってても意味無いし痛いし(笑

近藤さんの死を知らなかったらしいです(故5/17)。
沖田総司は7/19、土方歳三は翌年1869年の6/20。