せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

バイバイバラード。

2007-09-25 18:14:01 | その他
どうしてこんなことになったのかと彼方は泣くけれど、もう今更そんなことは無意味なんだといい加減に知って欲しかった。いつまでそう無知で居るつもりなのか、と、普段の私なら皮肉に笑って殴られていただろう。でもそんな力も、もうない。
素晴らしい切れ味のナイフで切られた喉からは絶えず血がドクドク、漏れる息がヒュウヒュウ。体中の血がなくなって死ぬのか、それとも衰弱して息を吸えなくなった頃、酸素が足りずに死ぬのか私には皆目検討もつかなかった。生憎私は医者じゃない。けど確かに言えるのは、もう手遅れだってことだけだ。血まみれの銃が支えを失って朱い水溜りに突っ込む。

「どうして、」

どうしてじゃなくて、ありがとうでしょうが。それくらい言いなさいよバカ、そしたら私、何の為に死ぬんだかわからなくなりそう。泣き虫で弱くて、ヘタレなバカ牛の為なのよ、ありがとうぐらい、言いなさいよ。言って、どこか遠くへ行ってしまって!(私の血が臭わないくらい遠くに、さあ!)(行って欲しくなんか、ないけど)

「あ・・、か、る」
「え・・・?」
「あか、る・・い、と、ころ、で、しょ・・ね・・・天国」

しっかり言えた。そんな優越感に浸っている私をよそに、彼はとんでもなく顔を歪めた。畏怖としか言いようがない、まるでオバケでも見たかのような表情で、私を殴った。(怪我人、なんだけど)(死人の間違いか)

「止めてくれ、言わな
「き、と、・・ボス、も、い・・・て」
黙れよ、聞こえないのか!?

気前の良かった板前パパも、もしかしたら、トマゾのバカ8代目達も居て、みんなが笑ってる、争いなんかないところなんでしょうね。そうしたらきっと、ボスは一人で困ってるだろうから、私が助けてあげるの。そうしたらまたきっと、きっと?・・きっと、どうなる?でもいいの、楽しくて平和なあそこに戻れるなら、それでいいと、そう言えるから。
言いたいのに言えなくて、代わりに涙だけが出た。もう出せるのは潰れた蛙みたいな声だけで。(ああ、いや、聞かないで、どこかに行ってしまって)(醜い私の屍が見えないところまで)

さくらの居場所は、此処だろ!
「じゃ、そ、ゆ、こ・・と、で」
行くなよ、天国なんて、行くな・・・!!

聞こえない、聞こえないよランボ。もう視覚も聴覚もほとんどなくなってきていた。あんなにうるさかった銃声も耳鳴りも、だんだん弱く聞こえなくなってきた。なんだか私の命みたいで嫌だけど、それも仕方ないような気がしてきた私は、相当終わってしまっていると思う。(だって私の手を握る手が暖かいからなんて言ったら、彼方は銃口を頭に当てて自分を冷たくしてしまうんでしょうね)(なんたってバカでまっすぐで、優しいから)

「天国、の、下見、に、い、て・・く、」

ああバカね、また泣いてるの?

―――
(バイバイバラード。)

ちょっと前のランボばっかのネタの一つ。
「下見に行って参ります(天国の、)」

・・もう何も言うまい(殴☆